金利が低い金融機関を選べば、住宅ローンは安く済む。
そう思われがちですが、計算すると逆転することがあります。
金利年0.40%の銀行と、年0.50%の銀行。
手数料まで含めると、0.50%のほうが8.7万円安くなるという結果になりました。
この記事では、その理由と比べ方をお伝えします。
- 金利差0.1%の35年効果は借入額の約1.8%。事務手数料2.2%とほぼ同じ規模です
- 定率型(2.2%)の手数料を取り返すには、金利差が0.12%以上必要という計算
- 比べるのは金利ではなく「総返済額+手数料+保証料」です
- 団信の上乗せ0.2%は35年で150万円。保険料として妥当か確認しましょう
こんな方に読んでほしい記事です
- どの金融機関で借りるか迷っている
- ネット銀行の金利の低さが気になっている
- 不動産会社に紹介された銀行でよいか判断したい
- 団信の上乗せ保障を付けるか迷っている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
家計全体の視点から、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【計算】金利差0.1%は、35年でいくらか

まず、金利差がどのくらいの金額になるかを確認します。
借入4,000万円・35年・元利均等返済での試算です。
| 金利の差 | 毎月の返済額の差 | 35年の総返済額の差 |
|---|---|---|
| 0.1% | 1,758円 | 74万円 |
| 0.2% | 3,535円 | 148万円 |
| 0.3% | 5,332円 | 224万円 |
| 0.5% | 8,984円 | 377万円 |
※ 借入4,000万円・35年・元利均等返済・ボーナス返済なしでの試算です。
0.1%の差で74万円。決して小さくありません。
金利を比べることには、確かに意味があります。
ただし、ここで覚えておきたい数字があります。
どの金額でも、借入額に対する比率は1.85%で変わりません。
そして、事務手数料の定率型は「借入額の2.2%」が一般的です。
つまり、金利差0.1%と事務手数料2.2%は、ほぼ同じ規模の金額なのです。
これが、金利だけで比べてはいけない理由です。
【核心】金利が低いほうが高くつくことがある

実際に、3つの金融機関を比べてみます。
借入4,000万円・35年での試算です。
※ 借入4,000万円・35年・元利均等返済での試算です。金利・手数料・保証料の条件は説明のための一例であり、実際の条件は金融機関ごとに異なります。特定の金融機関を指すものではありません。
最も金利が低いA行(0.40%)は、2位でした。
金利が0.1%高いB行(0.50%)のほうが、8.7万円安くなります。
理由は事務手数料です。
A行の定率型2.2%は88万円。
B行の定額型は5.5万円。
この82.5万円の差が、金利差0.1%(74万円)を上回りました。
定率型2.2%の手数料を取り返すには、金利差が0.12%以上必要です。
金利差0.1%の効果は借入額の約1.85%、定率手数料は2.2%。この差を埋めるには、もう少し金利が低くなければなりません。「金利が0.1%低い」だけでは、手数料の差を取り返せない計算です。この関係は、借入額が2,000万円でも6,000万円でもほぼ同じになります。
手数料には3つの型があります
| 型 | 金額の目安(借入4,000万円) | 特徴 |
|---|---|---|
| 事務手数料・定率型 | 88万円(2.2%) | ネット銀行に多い。金利は低めになりやすい |
| 事務手数料・定額型 | 3.3万〜5.5万円 | 保証料が別途かかることが多い |
| 保証料・外枠方式 | 約82万円 | 契約時に一括で支払う。繰り上げ返済で一部戻ることがある |
| 保証料・内枠方式 | 金利に0.2%上乗せ | 初期費用を抑えられるが、総額は増えやすい |
※ 金額はいずれも目安です。借入額・返済期間・審査結果によって変わります。
保証料の外枠方式には、一つ利点があります。
繰り上げ返済や借り換えで期間が短くなったとき、保証料の一部が戻ることがある点です。
定率型の事務手数料は、原則として戻りません。
早めに完済する見込みがあるなら、保証料型のほうが有利になることもあります。
FP伊藤ご相談で「ネット銀行が一番低かったので、そこにします」とおっしゃる方は多くいます。
その判断が正しいこともありますが、手数料まで並べてから決めた方は、あまりいません。
金利は大きく表示され、手数料は小さく書かれているためです。
比べるときは、「35年で総額いくら払うか」を1つの数字にして並べてみてください。
各社の資料に必ず書いてあります。
比べるべきは、この3つの合計です
- ① 35年の総返済額 — 適用金利(優遇後)で計算した金額
- ② 事務手数料・保証料 — 定率型か定額型か、外枠か内枠か
- ③ 団信の上乗せ分 — 上乗せ金利があれば、それも総返済額に含める
この3つを足した金額で比べれば、判断を誤りません。
銀行・ネット銀行・信用金庫の選び方


金額の比べ方が分かったところで、それぞれの特徴を整理します。
金額以外の違いも、判断には必要です。
金利タイプは「どちらが得か」では選ばない
金利タイプは、大きく3つに分かれます。
| 金利タイプ | 特徴 | 向いている考え方 |
|---|---|---|
| 変動金利型 | 金利情勢に応じて適用金利が見直される | 金利が上がっても返済できる余力がある |
| 全期間固定金利型 | 借入時に返済終了までの金利が確定する | 返済額を固定して家計の計画を立てたい |
| 固定金利期間選択型 | 最初の数年・十数年だけ金利を固定する | 一定期間の安定と金利水準のバランスを取りたい |
国土交通省は、令和7年時点で住宅ローン利用者の約8割が変動金利型を利用している状況を示しています。
変動を選ぶこと自体が問題なのではありません。
問題は、上がったときにどうなるかを見ないまま選ぶことです。
なお変動金利では、元利均等返済の場合に返済額の見直しが5年ごとになる商品があります。
ただし金利が上がると、返済額のうち利息の割合が増え、元金が減りにくくなることがあります。
契約内容は金融機関ごとに確認してください。
団信の上乗せ金利を、保険料として見る


団体信用生命保険(団信)とは、返済中に亡くなった場合などに、残りのローンがゼロになる保険です。
一般団信は金利に含まれていることがほとんどですが、がんや3大疾病の保障を付けると金利が上乗せされます。
この上乗せが、いくらのコストになるかを計算しました。
| 団信の種類 | 毎月の返済額 | 35年の総返済額 | 上乗せ分 |
|---|---|---|---|
| 一般団信(上乗せなし) | 103,834円 | 4,361万円 | — |
| がん保障(+0.1%) | 105,612円 | 4,436万円 | 75万円 |
| がん保障(+0.2%) | 107,408円 | 4,511万円 | 150万円 |
| 3大疾病など(+0.3%) | 109,224円 | 4,587万円 | 226万円 |
※ 借入4,000万円・基準金利0.5%・35年での試算です。上乗せ幅と保障内容は商品によって大きく異なります。
+0.2%なら、35年で150万円。
月に直すと3,574円です。
これを高いと見るか安いと見るかは、すでに加入している保険との関係で決まります。
- すでにがん保険・医療保険に入っていないか(保障が重複していないか)
- 上乗せ団信の支払い条件は何か(診断だけで出るのか、就業不能が要件か)
- 保障される期間はいつまでか(完済すると保障も終わります)
- 同じ保障を、別の保険で用意したらいくらか
上乗せ団信は、住宅ローンを完済すると保障も終わります。
一方、医療保険やがん保険は完済後も続けられます。
どちらがよいかは、ご家庭の状況によって変わります。
団信を付けるなら、加入中の保険を見直すセットで考えてください。
上乗せ団信を付けたのに、同じ保障の医療保険も継続している。この状態だと、二重に保険料を払っていることになります。住宅ローンを組むときは、保険の見直しに最も適したタイミングです。
比較の進め方と、金利が上がったときの確認


実際の進め方を、順番に整理します。
変動金利が上がったら、返済はどうなるか
借入4,000万円・当初0.5%で借りた場合の試算です。
変わらない
1.0%
10年後1.5%
10年後2.5%
| 金利の推移 | 最終的な月返済額 | 35年の総返済額 | 当初との差 |
|---|---|---|---|
| 変わらない(0.5%のまま) | 103,834円 | 4,361万円 | — |
| 5年後に1.0% | 111,625円 | 4,642万円 | +280万円 |
| 5年後1.0%・10年後1.5% | 118,457円 | 4,846万円 | +485万円 |
| 5年後1.5%・10年後2.5% | 134,353円 | 5,372万円 | +1,011万円 |
※ 借入4,000万円・当初金利0.5%・35年での簡易試算です。実際の変動金利の商品では、返済額の見直しが5年ごとになるものや上昇幅に上限があるものなど、条件が異なります。将来の金利を予測したものではありません。
月の返済が3万円増えても続けられるか。
これが、変動金利を選ぶかどうかの基準になります。
特に注意したいのは、金利上昇と教育費のピークが重なる時期です。
30代で購入すると、10〜15年後はお子さんの高校・大学の費用がかかる時期にあたります。
借り換えは、金利差0.3%から検討できます
借りたあとでも、金利差が広がれば借り換えという方法があります。
ただし、諸費用がかかります。
| 借り換えの諸費用(残高3,000万円の場合) | 金額の目安 |
|---|---|
| 事務手数料(2.2%) | 66万円 |
| 抵当権の抹消・設定の登記費用 | 20万円 |
| 印紙税 | 2万円 |
| その他(保証料・司法書士報酬など) | 12万円 |
| 合計 | 約100万円 |
この100万円を上回る削減が出るかどうかが判断の基準になります。
- 金利差0.2% — 削減84万円。諸費用を下回るため、メリットは出にくい
- 金利差0.3% — 削減125万円。差引25万円のプラス
- 金利差0.5% — 削減208万円。差引108万円のプラス
- 金利差1.0% — 削減407万円。差引307万円のプラス
※ 残高3,000万円・残り25年・借り換え前の金利1.5%での試算です。実際は残高・残存期間・諸費用によって変わります。
今の選択が一生を決めるわけではありません。
そう考えると、少し気が楽になるはずです。
審査に不安がある方は、通らない場合の手段もこちらでご確認ください。


まとめ|比べるのは金利ではなく、総額です


住宅ローンの比較は、一番低い金利を探す作業ではありません。
35年で総額いくら払うかを、1つの数字にして並べる作業です。
そして、その数字が家計に収まるかどうか。
金利が上がっても、返し続けられるかどうか。
そこまで確認できれば、判断に迷わなくなります。
住宅ローンの条件を、家計とあわせて確認しませんか
金融機関の比較表は、ご自身でも作れます。
難しいのは、その返済額が家計に収まるかどうかの判断です。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、検討中の借入条件をもとに、90歳までの貯蓄残高の推移を作成します。
金利が上がった場合、収入が減った場合、教育費のピークが来る時期。
それぞれの場面で、家計がどうなるかを確認できます。
金融機関からの紹介料も、保険の販売手数料も受け取っていません。
そのため、特定の金融機関や団信をおすすめすることはありません。
- 手数料・保証料を含めた実質負担の整理
- 金利が上がった場合の返済額と家計の確認
- 団信の上乗せと、加入中の保険の重複チェック
- 教育費のピーク時・完済時の貯蓄残高
- 90歳までの貯蓄残高の推移を1枚の表に
- ご夫婦で見返せる資料をお渡しします
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
👨👩👧 ご相談事例・お客様の声
同じ悩みを持つ方が、どう解決したかをご覧いただけます
「妊娠を機に、これからの家計が気になる」
「教育費をどのような方法で準備したらいい?」
実際に伊藤FPオフィスへご相談いただいた方の、相談前のお悩みから相談後の変化までをご紹介しています。
掲載中のご相談事例
・30代ご夫婦(市川市・妊娠中)/これからの家計の見直し
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よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. ネット銀行は金利が低いので、一番おすすめですか?
金利だけを見ればそうですが、事務手数料まで含めると逆転することがあります。金利0.40%+定率手数料2.2%(88万円)の場合、実質の総負担は4,375.2万円。金利0.50%+定額手数料5.5万円なら4,366.5万円で、後者のほうが8.7万円安い計算です(借入4,000万円・35年)。定率型を選ぶなら、金利差が0.12%以上あるかを確認してください。
Q. 事務手数料と保証料は、どちらが有利ですか?
総額が同程度なら、繰り上げ返済の予定で判断できます。保証料の外枠方式は、期間が短くなったときに一部が戻ることがありますが、定率型の事務手数料は原則として戻りません。早めに完済する見込みがあるなら、保証料型が有利になることもあります。
Q. 事前審査は何行に出せばよいですか?
2〜3行が目安です。1行だけだと比べる相手がなく、条件がよいかどうか判断できません。審査結果は金融機関によって変わるため、複数に出す意味があります。同じ条件で申し込み、適用金利(優遇後)を比べてください。
Q. 不動産会社に紹介された銀行で決めてもよいですか?
手続きが進めやすいという利点はあります。ただし、その1行だけで決めるのはおすすめしていません。ほかに2行ほど事前審査を出して、「総返済額+手数料+保証料」で比べてから判断してください。紹介された銀行が一番よいこともありますが、確認してから決める価値はあります。
Q. 変動金利と固定金利は、どちらを選ぶべきですか?
「どちらが得か」ではなく「上がったときに耐えられるか」で判断してください。借入4,000万円・当初0.5%の場合、5年後1.5%・10年後2.5%まで上がると月134,353円になります(当初は103,834円)。月3万円増えても続けられるかを確認してから選んでください。
Q. がん団信は付けたほうがよいですか?
加入中の保険との関係で決まります。上乗せ0.2%は35年で150万円(月3,574円)。すでにがん保険に入っているなら保障が重複します。また上乗せ団信は完済すると保障も終わるのに対し、がん保険は完済後も続けられます。支払い条件(診断だけで出るのか、就業不能が要件か)も確認してください。
Q. 信用金庫でも住宅ローンは借りられますか?
借りられます。全国信用金庫協会では、営業エリア内に居住・勤務している方などが会員資格の対象になるとされています。地元にお勤めの方や地域の物件との相性がよい場合があるため、選択肢に入れて比べてみる価値があります。営業エリア・会員資格・商品条件を先に確認してください。
Q. あとから借り換えることはできますか?
できます。ただし諸費用が約100万円かかります(残高3,000万円の場合。事務手数料66万円+登記費用20万円+その他14万円)。金利差0.3%で削減125万円となり、差引25万円のプラス。0.2%では削減84万円で諸費用を下回ります。金利差0.3%程度から検討できる、というのが一つの目安です。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。家計全体の視点から、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。住宅ローンの比較では、金利ではなく「手数料まで含めた総額」で並べることをお伝えしています。
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