住宅購入の失敗談は、たくさん語られています。
けれども「どの失敗が、いくらの代償になるのか」はあまり語られません。
そこで、よくある10の失敗を金額に換算して並べ替えました。
1位は、多くの方が見落としている項目でした。
- 代償が最も大きいのは「車の費用を家計に入れない」(35年で4,022万円)
- 次いで「他のエリアと比較しない」(2,987万円)
- 3位は「共働きが続く前提で借りる」(2,088万円)
- 失敗の多くは、物件選びではなく家計の見落としから起こります
こんな方に読んでほしい記事です
- 住宅購入でよくある失敗を知っておきたい
- 何から気をつければいいか優先順位を知りたい
- すでに候補物件があるが、判断に迷っている
- 不動産会社にすすめられるまま進んでいる気がする
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
家計全体の視点から、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【金額順】失敗の代償を並べました

よくある10の失敗を、代償の大きい順に並べました。
金額は、35年の住宅ローンを前提とした試算です。
※ 借入3,500万円・金利年1.0%・35年を基準とした試算です。詳しい前提は記事末の「試算条件」をご覧ください。金額の性質はそれぞれ異なるため、単純に比較できるものではありません。
上位3つは、いずれも物件選びの失敗ではありません。
車の費用、エリアの比較、働き方の前提。
どれも家計の見落としです。
失敗は、3つの種類に分けられます
| 種類 | 内容 | 該当する失敗 |
|---|---|---|
| 判断を誤らせるもの | 予算の見込みが実際とずれる | 3位・4位・5位・7位・9位 |
| お金が直接出ていくもの | 実際に支払いが発生する | 1位・6位・8位 |
| 機会損失 | もっと良い選択肢があった | 2位 |
最も多いのは「判断を誤らせるもの」です。
そしてこれらは、購入前に計算すれば防げます。
FP伊藤失敗談というと、間取りや収納、日当たりの話が中心になりがちです。
けれども相談の現場で聞くのは、「思ったより家計が苦しい」という声のほうが圧倒的に多くあります。
間取りは住み方で工夫できますが、毎月の返済額は35年間変えられません。
だからこそ、家計の見落としを先に潰しておく価値があるのです。
判断を誤らせる5つの失敗


予算の見込みが実際とずれるパターンです。
いずれも、購入前に計算すれば防げます。
最も大きな見込み違いです。
借入3,500万円で、妻の収入だけを変えて計算しました。
見るのは、教育費のピーク期(夫50〜58歳)の最低貯蓄残高です。
| 妻の働き方 | 教育費ピーク期の最低貯蓄 | 貯蓄が尽きる年齢 |
|---|---|---|
| 共働きを継続(手取り234万円) | 968万円 | 夫85歳 |
| 時短勤務(手取り180万円) | 20万円 | 夫68歳 |
| パート(手取り120万円) | ▲1,120万円 | 夫45歳 |
時短勤務になるだけで、教育費ピーク期の貯蓄は20万円まで減ります。
パート勤務なら、教育費のピークを迎える前に貯蓄が尽きます。
産休・育休・時短勤務・転職・親の介護・本人の健康。
働き方が変わる理由は、いくらでもあります。
「片方の収入が減っても回るか」を必ず計算してください。
事前審査で「4,234万円まで借りられます」と言われたとします(年収600万円の場合)。
その金額は、家計から見た適正額ではありません。
| 銀行の事前審査 | 家計から見た適正額 | |
|---|---|---|
| 借入可能額 | 4,234万円 | 2,862万円 |
| 住居費(維持費込み) | 月155,728円 | 月117,000円 |
| 手取りに占める割合 | 40% | 30% |
※ 年収600万円・審査は審査金利3.5%・返済負担率35%、適正額は住居費が手取りの30%以内という基準での試算です。
差は1,372万円。
審査は「貸しても回収できるか」の基準で、教育費や老後資金は考慮されていません。
「今の家賃と同じ返済額なら大丈夫」という考え方です。
持ち家には、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険がかかります。
| 借入額 | |
|---|---|
| 家賃12万円と同額を返済に充てる想定 | 4,251万円 |
| 維持費3.62万円を引いた実際(月8.38万円) | 2,969万円 |
| 差 | 1,282万円 |
維持費はマンションで月36,200円程度、一戸建てで月29,200円程度です。
「住居費=返済額+維持費」で計算してください。
これは、すべての失敗の入口になります。
素敵な物件を見てしまうと、「この物件を買うにはどうすればよいか」という発想になるからです。
借入が500万円増えると、35年の総返済額は593万円増えます。
1つ上の価格帯を見てしまうと、元の予算には戻れません。
順番を守ってください。
家計から予算を決める → 不動産会社に金額を伝える → 物件を見る。
上の子が大学2年生、下の子が大学に入学する年。
この年の教育費は219万円になります(公立中心・大学は私立文系を想定)。
その年の家計は93万円の赤字です。
ただし、赤字になること自体は問題ではありません。
貯蓄残高で吸収できるかどうかを見てください。
この試算では、53歳の時点で貯蓄が968万円あるため乗り切れます。
問題は、そこまでに貯められているかどうかです。
お金が直接出ていく3つの失敗


代償が最も大きい失敗です。
駅から離れた物件は価格が安くなりますが、車が前提になります。
| 車1台の年間費用 | 金額 |
|---|---|
| 車両の減価(250万円の車を12.5年) | 200,000円 |
| 駐車場代(月10,000円) | 120,000円 |
| ガソリン代(年8,000km) | 100,000円 |
| 任意保険 | 60,000円 |
| 車検・点検・整備 | 60,000円 |
| 自動車税 | 34,500円 |
| 合計 | 574,500円 |
※ 一般的な水準をもとに積み上げた目安です。車種・走行距離・保険の条件・駐車場の相場によって大きく変わります。
年57.5万円を35年続けると、2,011万円。
2台なら4,022万円です。
物件価格が1,000万円安くても、車2台なら総額では逆転します。
船橋の駅近4,800万円(車なし)と柏の郊外3,800万円(車2台)を比べると、35年の総額は5,691万円と8,527万円。郊外のほうが2,836万円多くかかる計算です。エリアを決める前に、車を何台持つかを決めてください。
これは「車を持つべきでない」という話ではありません。
年57.5万円の価値を感じるなら、合理的な選択です。
問題は、この金額を家計に入れずに物件価格だけで判断することです。
「今決めないと売れてしまいます」
人気物件では、判断を急がされることがあります。
売買契約を結ぶと、簡単には後戻りできません。
| 起こりうること | 損失 |
|---|---|
| 住宅ローンの本審査が通らず、特約も使えない | 手付金200万円が戻らない可能性 |
| 手付解除の期限を過ぎてから解約 | 違約金400万〜800万円 |
※ 4,000万円の物件で、手付金5%・違約金が売買代金の10〜20%の場合の試算です。実際の金額は契約書によって異なります。
住宅ローン特約とは、審査が通らなかった場合に契約を白紙解除できる取り決めです。
ただし、期限・対象となる金融機関・借入金額が契約書で指定されています。
必ず自分の目で確認してください。
そして、契約後の行動にも注意が必要です。
車のローンを組む、転職する、支払いを延滞する。
これらは本審査に影響します。
月2.5万円の車のローンを組むだけで、借入可能額は605万円減る計算です。
内見は、たいてい昼間の休日に行われます。
しかし、暮らすのは平日の朝と夜です。
- 平日の朝 — 通勤ルートの混雑、駅までの実際の所要時間
- 平日の夜 — 帰り道の明るさ、人通り、周辺の音
- 雨の日 — 坂道、水はけ、バスの混雑
- 休日 — 近隣の生活音、交通量
合わなかった場合、住み替えるには費用がかかります。
売却の仲介手数料、購入の諸費用、引っ越し費用。
4,000万円を売って3,000万円の中古を買う場合、約475万円です(価格差は別)。
しかも、購入後7〜10年は売ってもローンを返しきれない可能性があります。
頭金ゼロで買った場合、3年後に85%で売却しても375万円の不足が出る計算です。
比較せず、急いで決める失敗


2番目に代償が大きい失敗です。
最初に見た物件、最初に相談した不動産会社、最初にすすめられた住宅ローン。
比較しないまま決めると、選択肢の幅を知らずに終わります。
| 比較しなかった場合の差 | 金額(35年) |
|---|---|
| 千葉と東京(新築マンション・所要資金5,365万円 vs 7,884万円) | 2,987万円 |
| 船橋と柏(土地120㎡の価格差683万円) | 810万円 |
| 新築と中古(同じ4,000万円でも諸費用が143万円 vs 282万円) | 139万円 |
| 変動金利と全期間固定(借入3,500万円) | 1,748万円 |
※ いずれも金利1.0%・35年を基準とした試算です。変動と固定の比較は、変動が1.0%のまま推移した場合の差です。実際には金利が変動するため、この差がそのまま出るとは限りません。
比較すべきは、物件だけではありません。
- エリア — 通勤時間と価格のバランス。車の必要性も含めて
- 新築と中古 — 諸費用と修繕費まで含めた総額で
- 戸建てとマンション — 維持費の形が違います
- 金融機関 — 事前審査は2〜3行で。金利0.2%の差で総返済は130万円変わります
- 金利タイプ — どちらが得かではなく、上がったときに耐えられるかで
ただし、比較のために時間をかけすぎるのも危険です。
検討が長引くと、金利や物件価格が動きます。また「もっと良い物件があるはず」と探し続けて、結局決められないケースもあります。先に予算の上限を決めておけば、候補が絞られて比較も早く終わります。
頭金を増やせば借入額は減ります。
しかし、手元の現金がなくなると、購入後の急な支出に対応できません。
貯蓄800万円の場合、実際に頭金に使えるのはこれだけです。
| 貯蓄800万円の使い道 | 金額 |
|---|---|
| 生活防衛資金(生活費30万円×6ヶ月) | 180万円 |
| 引っ越し・家具家電・カーテン | 100万円 |
| 諸費用(登記・事務手数料・火災保険など) | 127万円 |
| 頭金に回せる額 | 393万円 |
生活防衛資金180万円は、必ず残してください。
病気・失業・家電の故障・急な修繕。
住宅ローンは繰り上げ返済であとから減らせますが、一度払った頭金は戻せません。
重要事項説明や契約書を理解しないまま進める
10選には入れていませんが、これも共通するパターンです。
重要事項説明は契約当日に行われることも多く、内容が多いためその場ですべて理解するのは困難です。
- 住宅ローン特約の期限と条件
- 手付解除の期限、違約金が発生する条件
- 水害ハザードマップ上の所在地
- マンションの管理費・修繕積立金と、値上げの予定
- 再建築の可否、私道負担の有無
可能であれば、事前に書面をもらってください。
分からない言葉をメモして、当日に質問できる状態にしておくと安心です。
購入前チェックリスト


10の失敗を防ぐための確認事項です。
代償の大きい順に並べています。
物件を決める前に確認したいこと
- 車を何台持つかを決めた(1台なら年57.5万円、2台なら年115万円)
- 複数のエリア・価格帯を、同じ条件で比較した
- 配偶者の収入が減った場合も試算した
- 銀行の借入可能額ではなく、家計から予算を決めた
- 維持費(マンション月36,200円・一戸建て月29,200円)を住居費に入れた
- 住宅ローン特約の期限と条件を確認した
- 物件を見る前に、予算の上限を決めた
- 平日の朝・夜・雨の日に現地を確認した
- 教育費のピーク時の貯蓄残高を試算した
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)を残す計画にした
すべてにチェックが入れば、大きな失敗はかなり防げます。
夫婦で意見が合わない場合は
住宅購入では、ご夫婦で優先順位が違うことがよくあります。
駅近を優先したい、広さを優先したい、価格を抑えたい。
意見が違うこと自体は、悪いことではありません。
むしろ購入前に違いが見えることが大切です。
数字の表があると、「どちらが正しいか」ではなく「家計としてどの選択なら続けられるか」という相談に変わります。
同じ資料を見ながら話してみてください。
まとめ|失敗の多くは、購入前の計算で防げます


住宅購入の失敗は、間取りや設備の話だと思われがちです。
しかし代償が大きいのは、家計の見落としのほうでした。
そして、それらは購入前に計算すれば防げます。
間取りは住み方で工夫できますが、毎月の返済額は35年間変えられません。
失敗を防ぐ計算を、一緒にしませんか
この記事で挙げた失敗の多くは、購入前に数字で確認すれば避けられます。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、車の費用・維持費・教育費のピーク・収入減のシナリオまで含めて、90歳までの貯蓄残高の推移を作成します。
複数のエリア・価格帯を同じ条件で並べられるため、「比較しなかった」という失敗も防げます。
不動産会社からの紹介料も、保険や金融商品の販売手数料も受け取っていません。
そのため、「買うべき」とも「やめるべき」とも申し上げません。
- 車の費用・維持費まで含めた住居費の試算
- 複数エリア・複数価格帯の比較
- 収入が減った場合・金利が上がった場合の確認
- 教育費のピーク時・完済時の貯蓄残高
- 90歳までの貯蓄残高の推移を1枚の表に
- ご夫婦で見返せる資料をお渡しします
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
宅地建物取引士として、契約書や重要事項説明書の見方もお伝えできます。
👨👩👧 ご相談事例・お客様の声
同じ悩みを持つ方が、どう解決したかをご覧いただけます
「妊娠を機に、これからの家計が気になる」
「教育費をどのような方法で準備したらいい?」
実際に伊藤FPオフィスへご相談いただいた方の、相談前のお悩みから相談後の変化までをご紹介しています。
掲載中のご相談事例
・30代ご夫婦(市川市・妊娠中)/これからの家計の見直し
・30代ご夫婦(市川市・お子様3歳)/教育資金の準備方法
・貯金がうまくできないというお悩み ほか
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 住宅購入で一番避けたい失敗は何ですか?
金額で見ると「車の費用を家計に入れない」です。車1台の維持費は年57.5万円で、35年では2,011万円。2台なら4,022万円になります。物件価格が1,000万円安い郊外を選んでも、車2台なら総額では逆転します。エリアを決める前に、車を何台持つかを決めてください。
Q. 住宅ローンの審査に通れば、失敗しませんか?
審査は「貸しても回収できるか」の基準で、教育費や老後資金は考慮されていません。年収600万円なら審査で4,234万円まで借りられる判定になりますが、家計から見た適正額は2,862万円です。その差は1,372万円。審査に通ることと35年払い続けられることは別の問題です。
Q. 不動産会社にすすめられた物件は信用してよいですか?
物件の情報については、専門家として信頼できます。ただし不動産会社は「物件のプロ」であって、お客様の教育費や老後資金までは見ていません。予算の上限は、自分で決めてから伝えてください。曖昧にしておくと、少し上の価格帯を提案されます。
Q. すでに候補物件がある場合でも相談できますか?
できます。むしろ契約前なら、まだ調整の余地があります。借入額を300万円減らすだけで結果が変わることもあります(返済額の差は月8,469円)。ただし手付金を払ったあとでは、引き返すのに大きな負担がかかります。
Q. 共働きの収入は、どこまで見込んでよいですか?
「片方の収入が減っても回るか」を必ず確認してください。妻が時短勤務になると、教育費ピーク期の貯蓄が968万円から20万円まで減り、パート勤務なら夫45歳で貯蓄が尽きる計算です。共働きを前提に借りるなら、住居費は手取りの25%寄りに抑えるほうが安全です。
Q. 夫婦で意見が合わない場合はどうすればよいですか?
むしろ購入前に違いが見えることが大切です。数字の表があると、「どちらが正しいか」ではなく「家計としてどの選択なら続けられるか」という相談に変わります。同じ資料を見ながら話してみてください。
Q. 失敗を避けるために、いつFPに相談するのがよいですか?
物件を見始める前が最も効果があります。予算の上限を決めてから探せるためです。次に効果があるのは、候補物件が決まった段階(契約前)。手付金を払う前なら、まだ条件を変えられます。
Q. 契約後にやってはいけないことはありますか?
家計の現状維持を徹底してください。車のローンを組む(月2.5万円で借入可能額が605万円減ります)、転職する、クレジットカードの支払いを延滞する。これらは本審査に影響し、契約が白紙になったり違約金の対象になったりします。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。家計全体の視点から、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。相談の現場では、間取りや設備よりも「思ったより家計が苦しい」という声を多く聞いてきました。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応

