「住宅購入・教育費・老後資金、全部考えると何から手をつければいいかわからない」
30代〜40代の子育て世帯から、よくいただくご相談です。
そんなときに役立つのがライフプランです。
家族のこれからの暮らしとお金の流れを、年表のように整理したものを指します。
この記事では作り方を手順で示したうえで、実際に作った30年分の表をそのままお見せします。
完成品を見ると、何が見えるようになるのかが分かります。
- 教育費のピークは、貯蓄があれば乗り切れます
- 本当に危ないのは、住宅ローンが残ったまま迎える老後でした
- 借入額を300万円減らすだけで、結果が変わります
- 共働きの前提が崩れると、夫45歳で貯蓄が尽きるケースもあります
こんな方に読んでほしい記事です
- 住宅購入前に家計全体を整理したい
- 教育費と住宅ローンを両立できるか不安
- ライフプランを作りたいが、何から始めればいいか分からない
- 夫婦でお金の話をしたいが、話し方が分からない
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
ライフプランとは何か

ライフプランとは、家族の将来の予定とお金の流れを一覧にしたものです。
子どもの入学、住宅購入、車の買い替え、退職、年金生活。
こうしたイベントを年ごとに並べ、そこに収入・支出・貯蓄残高を重ねていきます。
| ライフプランで見る項目 | 具体例 | 分かること |
|---|---|---|
| 家族の年齢 | 夫・妻・子どもの年齢 | 教育費や退職の時期が重なる年 |
| ライフイベント | 住宅購入、入学、車、退職 | まとまった支出が必要なタイミング |
| 収入 | 給与、ボーナス、育休給付、年金 | 収入が減る年・増える年 |
| 支出 | 生活費、住宅費、教育費、保険料 | 毎年いくら必要か |
| 貯蓄残高 | 預金、投資、退職金の見込み | いつ資金が足りなくなるか |
いちばん大切なのは、最後の「貯蓄残高」です。
毎年の収支がプラスかマイナスかより、その積み重ねで残高がどう動くかを見ます。
残高がゼロを割る年が見つかれば、そこが手を打つべき場所です。
ライフプランは、将来をぴったり当てるためのものではありません。
将来は変わる前提で作ります。
いまの家計でどこまでなら無理がないかを確認し、必要に応じて見直せる状態にしておくことが目的です。
家計簿やマネープランとの違いを整理した記事もあります。

5つのステップで作る

いきなり細かい表を作ろうとすると挫折します。
次の順番で、ざっくり整理することから始めてください。
ここまでが手順です。
では、実際に作るとどう見えるのでしょうか。
手取りの把握でつまずく方が多くいます。給与明細の見方はこちらです。

年収別の支出バランスの目安も、記入の参考になります。


【実例】作るとこう見えます

千葉県にお住まいのご家庭を例に、52年分を作ってみました。
モデル家族(フィクションの例です)
夫38歳(手取り468万円)/妻36歳(手取り234万円)/子ども6歳と3歳
貯蓄500万円。2026年に3,500万円を借りてマンションを購入(金利1.0%・35年)
生活費360万円/保険24万円/特別費30万円/退職金1,000万円の見込み
できあがった表から、節目の年を抜き出しました。
| 年 | 夫の年齢 | 収入 | 教育費 | 住居費 | 支出計 | 収支 | 貯蓄残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 38歳 | 726万 | 65万 | 162万 | 641万 | +85万 | 372万 |
| 2032年 | 44歳 | 726万 | 89万 | 162万 | 665万 | +61万 | 843万 |
| 2038年 | 50歳 | 714万 | 167万 | 162万 | 743万 | ▲29万 | 1,081万 |
| 2041年 | 53歳 | 702万 | 219万 | 162万 | 795万 | ▲93万 | 968万 |
| 2046年 | 58歳 | 702万 | 0万 | 162万 | 576万 | +126万 | 1,298万 |
| 2048年 | 60歳 | 1,514万 | 0万 | 162万 | 576万 | +938万 | 2,362万 |
| 2053年 | 65歳 | 383万 | 0万 | 162万 | 436万 | ▲53万 | 1,711万 |
| 2058年 | 70歳 | 266万 | 0万 | 162万 | 436万 | ▲170万 | 980万 |
| 2061年 | 73歳 | 266万 | 0万 | 43万 | 317万 | ▲51万 | 590万 |
| 2073年 | 85歳 | 266万 | 0万 | 43万 | 317万 | ▲51万 | ▲22万 |
※ 60歳で定年、65歳まで再雇用(手取り280万円)、65歳から年金(夫婦で年266万円)という前提です。2048年の収入には退職金1,000万円が含まれています。住居費は返済118.6万円+維持費43.4万円で、2061年に完済して維持費のみになります。
貯蓄残高の動きを、グラフにするとこうなります。
※ 85歳・90歳は貯蓄がマイナス(不足)の状態です。グラフでは便宜上、ごく短い棒で表示しています。
この形から、3つのことが読み取れます。
① 教育費のピークは、乗り切れます
夫53歳の年、教育費は219万円まで膨らみます。
上の子が大学2年生、下の子が大学に入学する年です。
この年の収支は93万円の赤字になります。
しかし、貯蓄残高は968万円あります。
それまでに貯めた分で、十分に吸収できる水準です。
赤字の年があること自体は、問題ではありません。
② 本当に危ないのは、老後でした
退職金が入る60歳で、貯蓄は2,362万円まで増えます。
ここが人生で最も残高が多い時点です。
ここから先は、ひたすら減っていきます。
65歳で1,711万円、70歳で980万円、73歳で590万円。
そして85歳でゼロを割ります。
原因は、住宅ローンが73歳まで続くことです。
38歳で35年ローンを組むと、完済は73歳になります。年金生活に入ってからの8年間、住居費162万円を払い続けることになります。この期間の赤字が、老後の資金を大きく削っています。完済した73歳以降は住居費が43万円に下がりますが、そのときにはもう残高が590万円しか残っていません。
③ 手を打つなら、購入前です
85歳で貯蓄が尽きると分かったとき、打てる手は限られます。
しかし購入前なら、借入額を調整できます。
FP伊藤ご相談で多いのは「住宅ローンを組んでから教育費が心配になった」というケースです。
この表を見ていただくと、多くの方が驚かれます。
心配していた教育費は、実は乗り切れる。危ないのは、想像もしていなかった老後だった。
そして老後の問題は、購入前なら借入額の調整で解決できます。
だからこそ、物件を決める前に作る意味があるのです。
教育費のピークと住宅ローンが重なる時期については、こちらで詳しく扱っています。


老後の資金計画は、別に整理した記事があります。


数字を変えると、結果はこう変わる


ライフプランの本当の価値は、条件を変えて何度も試せることにあります。
借入額を変えてみる
| 借入額 | 毎月の返済額 | 90歳時点の貯蓄残高 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 3,500万円 | 98,800円 | ▲277万円 | 85歳で尽きます |
| 3,200万円 | 90,331円 | +78万円 | 90歳まで持ちます |
| 3,000万円 | 84,686円 | +315万円 | 90歳まで持ちます |
| 2,700万円 | 76,217円 | +652万円 | 余裕があります |
| 2,500万円 | 70,571円 | +889万円 | 余裕があります |
借入額を300万円減らすだけで、結果が変わりました。
毎月の返済額の差は、わずか8,469円です。
この差が35年積み重なり、さらに老後の取り崩しを抑えることで、最終的な残高を355万円変えています。
物件を1つグレードダウンする。あるいは頭金を300万円増やす。
それだけで、老後の景色が変わります。
収入が下がった場合を見てみる
共働きを前提に借りた場合、その前提が崩れるとどうなるでしょうか。
借入3,500万円のまま、妻の収入だけを変えて計算しました。
妻がパート勤務になると、夫45歳で貯蓄が尽きます。
上の子が中学生になる頃で、教育費のピークを迎える前です。
これは「妻は必ずフルタイムで働き続けなければならない」という意味ではありません。
そうなる可能性があるなら、借入額を抑えておくということです。
親の介護、子どもの状況、本人の健康。働き方が変わる理由はいくらでもあります。
退職金の見込みで変わる
退職金は、老後の資金計画を大きく左右します。
| 退職金の見込み額 | 貯蓄が尽きる年齢 |
|---|---|
| 0円 | 夫70歳 |
| 500万円 | 夫75歳 |
| 1,000万円 | 夫85歳 |
| 1,500万円 | 90歳まで持ちます |
※ 借入3,500万円・35年での試算です。
退職金の額を知らないままでは、計画が立てられません。
「あると思っていたら思ったより少なかった」というケースは珍しくありません。
勤務先の退職金規程を、早めに確認してください。
住宅購入前に確認したい5つのこと
- 借りられる額ではなく、返し続けられる額か — 審査は「貸しても回収できるか」の基準で、教育費や老後は考慮されていません
- 教育費のピークと返済が重なる年の残高 — 赤字の年があること自体は問題ではありません。残高で吸収できるかを見ます
- 産休・育休・時短勤務による収入減 — 共働き前提が崩れた場合も試算してください
- 維持費まで含めた住居費 — 固定資産税・管理費・修繕積立金でマンションは月3.6万円程度かかります
- 完済年齢と、そのときの残高 — 38歳で35年ローンなら完済は73歳。年金生活に入ってからの返済が続きます
借入額をいくらにするかは、年収から逆算できます。


借りる前の家計チェックは、こちらにまとめました。


よくある失敗と、夫婦で作るコツ


ライフプランは便利ですが、作り方を間違えると現実とずれます。
- 今の収入がずっと続く前提で作る(定年後の収入減を入れ忘れる)
- ボーナスを毎年満額使える前提にする
- 住宅の維持費を入れ忘れる(マンションで月3.6万円程度)
- 教育費を低めに見積もりすぎる
- 車・旅行・帰省・家電などの特別費を入れない(年30万円程度は必要)
- 投資の運用益を楽観的に見込みすぎる
- 夫婦のどちらか一方だけで作り、共有しない
特に注意したいのは、運用益を前提にしすぎることです。
新NISAやiDeCoは資産形成に役立ちますが、運用には元本割れのリスクがあります。「年5%で増える前提」で組んだ計画は、下落局面で崩れます。ライフプランでは運用なしでも成り立つかを先に確認し、運用の成果は「うまくいったらありがたい」程度に扱ってください。
また、楽観的なケースだけでなく、収入が下がるケース・支出が増えるケースも作っておくと判断しやすくなります。
夫婦で作るコツ
ライフプランは、できれば夫婦で一緒に作ることをおすすめします。
住宅購入や教育費の判断は、家計だけでなく価値観にも関わるからです。
- どのエリアに住みたいか(通勤時間と住環境のどちらを優先するか)
- 教育費をどこまで準備したいか(公立中心か、私立も視野に入れるか)
- 車を持つか、持たないか
- 親への支援や介護の可能性
- 老後にどんな暮らしをしたいか
- 毎月どのくらい余裕を残したいか
夫婦で意見が違うこと自体は、悪いことではありません。
むしろ購入前に違いが見えることが大切です。



ご夫婦で相談に来られる方の中には、「話し合うとケンカになりそうで避けていた」とおっしゃる方もいます。
数字の表があると、相手を責める話ではなく「この年の支出をどうするか」という具体的な相談に変わります。
ライフプランは、夫婦のお金の会話をしやすくする道具でもあるのです。
必要な資料
完璧な資料をそろえる必要はありません。
次のものがあると、全体像をつかみやすくなります。
あるとよい資料(全部そろわなくても大丈夫です)
- 源泉徴収票または給与明細
- 家計簿アプリや通帳の支出履歴
- 現在の預金・投資残高がわかるもの
- 保険証券または契約内容のお知らせ
- 住宅購入候補の物件資料(管理費・修繕積立金の記載があると助かります)
- 勤務先の退職金規程
- ねんきん定期便
わからない数字は仮置きで進めて構いません。
あとから実際の金額に直せば大丈夫です。
資料がそろわないことを理由に、作り始めるのを先延ばしにしないでください。
共働きのご家庭は、お金の分担の決め方もあわせてご覧ください。


そもそも家計管理が続かない、という方はこちらから。


会社員が使える節税の制度は、こちらでまとめています。


まとめ|作ってみると、心配していた場所が違うことがあります


ライフプランを作ると、漠然とした不安が具体的な確認ポイントに変わります。
そして今回のように、心配していた場所と、実際に危ない場所が違うこともあります。
だからこそ、想像ではなく数字で確認する価値があります。
わが家のライフプランを作ってみませんか
この記事の表は、あくまでモデル家族の例です。
収入・家族構成・教育方針・退職金が変われば、貯蓄残高の形もまったく変わります。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、ご家庭の実際の数字で同じ表を作成します。
借入額を変えたパターン、収入が下がったパターンもその場で比べられるため、「どの価格帯なら家族の暮らしを守れるか」が分かります。
保険も金融商品も販売していないため、特定の商品をおすすめすることはありません。
- 90歳までの貯蓄残高の推移を1枚の表に
- 借入額を変えた複数パターンの比較
- 収入が下がった場合・支出が増えた場合の確認
- 教育費のピークと完済年齢の重なりの可視化
- 維持費まで含めた住居費が家計に占める割合の確認
- ご夫婦で同じ資料を見ながら話せる形でお渡しします
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. ライフプランは何年先まで作ればいいですか?
90歳まで作ることをおすすめします。この記事のモデル家族では、教育費のピーク(夫53歳)は問題なく乗り切れる一方、貯蓄が尽きるのは85歳でした。子どもの独立までで区切ると、この問題が見えません。住宅ローンの完済年齢が定年後になる場合は、特に老後まで含めて確認してください。
Q. 毎年赤字の年があるのは問題ですか?
それ自体は問題ではありません。モデル家族では夫53歳の年に93万円の赤字が出ますが、貯蓄残高が968万円あるため吸収できます。大切なのは単年の収支ではなく、残高がゼロを割らないかどうかです。
Q. ライフプランを作ると、住宅購入予算はいくらまで分かりますか?
貯蓄残高が90歳まで持つ借入額の上限が分かります。モデル家族の場合、3,500万円だと85歳で尽きますが、3,200万円なら90歳まで持ちました。ただし、これは金融機関の審査結果とは別です。ライフプランで見るのは「借りられる額」ではなく「返し続けられる額」です。
Q. 一度作れば終わりですか?
年1回は見直してください。収入、家族構成、教育方針、住宅ローン金利、物価、働き方は変わります。出産・転職・住宅購入など大きな変化があったときも、そのつど作り直します。実際、2024年10月に児童手当が拡充され、2026年4月には高校の就学支援金が拡充されました。
Q. 退職金の額が分からないのですが、どうすればいいですか?
勤務先の退職金規程を確認してください。モデル家族の試算では、退職金が0円なら夫70歳、1,000万円なら85歳、1,500万円なら90歳まで持つという結果になりました。この差は大きいため、仮置きではなく実額で確認する価値があります。
Q. 投資の運用益は入れてもいいですか?
入れても構いませんが、控えめに見積もってください。運用には元本割れのリスクがあり、必要なときに減っている可能性があります。まずは運用なしでも成り立つ計画を作り、運用の成果は「うまくいったらありがたい」という位置づけにするのが安全です。
Q. 夫婦で意見が合わない場合でも相談できますか?
可能です。むしろ購入前に意見の違いが見えることは大切です。同じ表を見ながら話すと、「どちらが正しいか」ではなく「家計としてどの選択なら続けられるか」という相談に変わります。
Q. 自分で作るのとFPに依頼するのは、どう違いますか?
手順どおりに作れば、ご自身でも十分に意味のある表ができます。違いは、条件を変えた複数パターンを比べられるかどうかです。借入額を300万円変えたら結果がどうなるか、収入が下がったらどうなるかを何度も試すのは、手作業だと負担が大きくなります。まずご自身で作ってみて、判断に迷う部分だけ相談する流れでも構いません。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。保険も金融商品も販売しない中立な立場で、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。ライフプランのご相談では、単年の収支ではなく「90歳までの貯蓄残高の推移」で判断することをお伝えしています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応

