「老後資金は2,000万円必要と聞いて不安になる」
「住宅購入も考えているのに、老後のお金まで準備できるのだろうか」
30代〜40代の子育て世帯から、こうしたご相談をいただくことが増えています。
最新のデータで計算すると、実際に足りない金額は1,273万円でした。
ただし、これは持ち家でローンを完済している場合の数字です。
賃貸のままだと、必要な額は3,741万円に増えます。
- 老後に足りないのは月42,435円。25年で1,273万円です
- ただし持ち家か賃貸かで2,468万円変わります
- 35歳から年3%で積み立てるなら、月28,542円で届きます
- 退職金が1,000万円あれば、月6,121円で足ります
こんな方に読んでほしい記事です
- 老後資金がいくら必要か、具体的な数字を知りたい
- 住宅購入を考えているが、老後資金まで手が回るか不安
- 今の積立額で足りるのかを確認したい
- NISAやiDeCoをどこまで使えばいいか迷っている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【実データ】老後は毎月いくら足りないのか

まず、実際に老後を迎えているご家庭の家計を見てみましょう。
総務省「家計調査報告」2025年平均のデータです。
消費支出の29.9%を占めます
旅行や趣味の費用です
持ち家の方が多いため低くなっています
うち交際費が23,257円です
これに対して、入ってくるお金はこうなります。
| 収支 | 65歳以上の夫婦のみの無職世帯 | 65歳以上の単身無職世帯 |
|---|---|---|
| 実収入 | 254,395円 | 131,456円 |
| うち社会保障給付(年金など) | 228,614円 | 120,212円 |
| 税・社会保険料を引いた可処分所得 | 221,544円 | 118,465円 |
| 消費支出 | 263,979円 | 148,445円 |
| 毎月の不足額 | 42,435円 | 29,980円 |
※ 出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年平均」。65歳以上の無職世帯の持家率は95.5%です。
毎月42,435円が足りない計算になります。
これを老後の期間でかけ算すると、必要な準備額が見えてきます。
| 老後の期間 | 不足の総額 |
|---|---|
| 65歳から85歳まで(20年) | 1,018万円 |
| 65歳から90歳まで(25年) | 1,273万円 |
| 65歳から95歳まで(30年) | 1,528万円 |
よく言われる「2,000万円」より少ない金額でした。
これは平均値なので、ご家庭によって上下します。
それでも「2,000万円」という数字だけを見て不安になる必要はありません。
老後は、年をとるほど支出が減ります
意外に思われるかもしれませんが、赤字が最も大きいのは退職直後です。
※ 二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の毎月の赤字額。出典:同上
退職して収入が年金だけになる一方、この時期はまだ元気で、旅行や趣味の支出も続きます。
老後資金は「均等に25年分」ではなく、前半に厚く必要だと考えておくと現実的です。
FP伊藤この数字を見て「思ったより少ない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
ただし、ここには大きな前提があります。
調査対象の95.5%が持ち家で、住居費が月17,739円しかないのです。
賃貸のまま老後を迎えると、この前提は成り立ちません。
次の章で、その差を計算します。
老後の不足額の考え方は、こちらでも解説しています。




【最大の変数】持ち家か賃貸かで2,468万円変わる


家計調査の住居費は月17,739円でした。
これは対象世帯の95.5%が持ち家だからです。
ローンを完済していれば、住居費は固定資産税や修繕費だけになります。
では、賃貸のまま老後を迎えるとどうなるでしょうか。
家賃10万円の場合で計算しました。
25年で
1,273 万円
25年で
3,741 万円
その差は 2,468万円
※ 家計調査の住居費17,739円を家賃10万円に置き換えて計算した試算です。
老後資金の最大の変数は、住まいでした。
投資の利回りを何%上げるかより、住居費をどうするかのほうが、はるかに大きく効いています。
家賃別に見ると、こうなります。
| 老後の住まい | 毎月の不足額 | 25年間の不足総額 |
|---|---|---|
| 持ち家(ローン完済) | 42,435円 | 1,273万円 |
| 賃貸(家賃8万円) | 104,696円 | 3,141万円 |
| 賃貸(家賃10万円) | 124,696円 | 3,741万円 |
| 賃貸(家賃12万円) | 144,696円 | 4,341万円 |
住宅購入は、老後資金対策でもあります。
「住宅ローンを組むと老後資金が貯まらない」と考える方がいますが、定年までに完済できれば、老後の住居費が大きく下がります。逆に賃貸のままだと、老後も家賃を払い続けることになります。大切なのは「買うかどうか」ではなく「定年までに完済できる計画か」です。
ただし、持ち家にも維持費はかかります。
マンションなら管理費・修繕積立金・固定資産税で月3.6万円程度、戸建てなら修繕費の積立を含めて月2.9万円程度です。
家計調査の住居費17,739円は、この維持費のうち家計簿上「住居」に計上される分だけである点にご注意ください。
それでも、家賃10万円との差は大きく残ります。
住まいの選択が老後に与える影響は、こちらで詳しく比べています。




必要な積立額を逆算する


必要な金額がわかれば、あとは逆算するだけです。
35歳から60歳までの25年間で積み立てる場合を計算しました。
| 準備する金額 | 運用しない場合 | 年3%で運用した場合 | 年5%で運用した場合 |
|---|---|---|---|
| 1,273万円(持ち家) | 月42,433円 | 月28,542円 | 月21,377円 |
| 3,741万円(賃貸のまま) | 月124,700円 | 月83,877円 | 月62,820円 |
※ 毎月同額を積み立てた場合の試算です。運用に関する数字は想定利回りによるもので、将来の成果を保証するものではありません。
持ち家なら、月28,542円で届く計算です。
賃貸のままだと月83,877円が必要になります。
この差が、住まいの選択が老後に与える影響です。
退職金があれば、大きく減ります
退職金や企業年金がある場合、自分で準備する額は減ります。
| 退職金の見込み額 | 自分で準備する額 | 35歳から年3%で積み立てる場合 |
|---|---|---|
| 0円 | 1,273万円 | 月28,542円 |
| 500万円 | 773万円 | 月17,332円 |
| 1,000万円 | 273万円 | 月6,121円 |
| 1,500万円 | 0円 | 退職金でまかなえる計算です |
※ 持ち家(不足1,273万円)の場合の試算です。
退職金の額を知っているかどうかで、必要な積立額はまったく変わります。
「あると思っていたら思ったより少なかった」というケースもあります。
勤務先の退職金規程を、早めに確認しておいてください。
始めるのが遅れると、負担は跳ね上がります
同じ1,273万円を作るのに、始める年齢でこれだけ変わります。
※ 年3%で運用した場合の試算です。
10年遅れると、毎月の負担は約2倍になります。
しかも45歳〜50歳は、教育費のピークと重なる時期です。
いちばん厳しいときに、いちばん大きな金額を積む計画になってしまいます。
だからこそ、少額でも早く始めることに意味があります。
月2万円でも、年3%で25年積み立てれば892万円、30年なら1,165万円です。
NISAとiDeCoの使い分けは、こちらでまとめています。




30代・40代の準備のしかた


必要な金額がわかったら、次は仕組みづくりです。
大切なのは、一度に大きく頑張ることではなく、続けられる形にすることです。
NISAとiDeCoの使い分け
老後資金の準備では、税制上の優遇がある制度を使えます。
ただし、性格がかなり違います。
| 新NISA | iDeCo(個人型確定拠出年金) | |
|---|---|---|
| 税制上のメリット | 運用益が非課税 | 掛金が全額所得控除+運用益が非課税 |
| 引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで引き出せない |
| 年間の上限 | 360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円) | 職業・加入している年金制度による(会社員で企業年金がない場合は年27.6万円) |
| 生涯の上限 | 1,800万円 | — |
| 向いている使い方 | 教育費にも老後にも使える柔軟な準備 | 老後専用と割り切れる資金 |
※ iDeCoの拠出限度額は、職業や勤務先の年金制度によって異なります。詳しくは国民年金基金連合会のサイトや勤務先でご確認ください。
iDeCoの最大の強みは、掛金が全額所得控除になることです。
所得税率10%・住民税10%の方が月2万円拠出すると、年間4.8万円の税金が軽くなる計算になります。
一方、60歳まで引き出せないという制約があります。
住宅購入や教育費が控えている30代〜40代では、この制約が重くのしかかることがあります。
「途中で使う可能性があるお金」と「老後まで触らないお金」を分けて、後者だけをiDeCoに回すのが安全です。
投資には値動きがあります。
元本が保証されているわけではなく、必要なときに元本割れしている可能性もあります。この記事の試算で使っている年3%・年5%という数字はあくまで想定であり、将来の成果を保証するものではありません。使う時期が近いお金は、預貯金で持ってください。
年代別の進め方は、こちらで詳しく解説しています。






やってはいけない3つの失敗


「2,000万円必要」という数字に焦って、最初から大きな金額を設定してしまうケースです。
家計が苦しくなるとやめてしまい、結局続きません。
実際に必要なのは、持ち家なら1,273万円。
退職金が1,000万円あれば、月6,121円で足ります。
まず計算してから、続けられる金額で始めてください。
数年以内に使う頭金や教育費を、値動きのある商品で持つケースです。
必要なときに元本割れしていると、取り崩せません。
結果として、住宅購入を先送りしたり、教育費を借入でまかなったりすることになります。
「いつ使うか」で商品を分けてください。
持ち家になると、ローン返済のほかに固定資産税・修繕費・(マンションなら)管理費と修繕積立金がかかります。
マンションで月3.6万円程度、戸建てで月2.9万円程度です。
これを見落とすと、老後資金の積立が真っ先に削られます。
住宅購入で老後の住居費は下がりますが、それは定年までに完済できた場合の話です。
返済が重すぎて購入後に積立が止まってしまえば、本末転倒になります。
住宅購入と老後資金の両立
この2つは、対立するものではありません。
両立の条件は、次の3つです。
- 定年までに完済できる計画になっている — 35歳で35年ローンを組むと完済は70歳です。繰り上げ返済の計画とセットで考えてください
- 維持費まで含めた住居費が、手取りの30%以内に収まっている — 返済額だけで判断すると、購入後に積立が止まります
- 教育費のピークでも、積立をゼロにしない設計になっている — 減額してもよいので、止めないことが大切です
「住宅購入か老後資金か」の二択ではありません。
住宅購入は、老後の住居費を下げる手段でもあります。
問題は、その返済計画が老後の準備を潰さないかどうかです。
積立が続かない、という方はこちらもご覧ください。




会社員が使える節税の制度は、こちらでまとめています。


まとめ|「2,000万円」より、わが家の不足額を知ることが先です


老後資金は、一般論の金額ではなく「わが家ではいくら不足しそうか」で考えてください。
生活費・年金・退職金・住まいを整理すれば、必要額は計算できます。
そして計算してみると、多くの場合思っているより現実的な金額になります。
住宅購入も含めて、家計全体で確認しませんか
この記事の試算は、平均値をもとにした一例です。
年金の見込み額・退職金・住まいの選択が変われば、答えも変わります。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、住宅購入後の返済だけでなく、教育費と老後資金まで含めた家計のバランスを整理します。
「この予算で買っても、老後の積立を続けられるか」
この問いに、ご家庭の数字で答えを出します。
金融商品を販売していないため、特定の投資商品や保険をおすすめすることはありません。
- 年金の見込み額と退職金を踏まえた老後の不足額の試算
- 必要な積立額の逆算(運用の有無で複数パターン)
- 教育費のピークを織り込んだ積立計画の設計
- 定年までに完済できる住宅ローンの返済計画
- 維持費まで含めた住居費が家計に占める割合の確認
- 65歳から95歳までのキャッシュフロー表の作成
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 結局、老後資金はいくら必要ですか?
総務省の家計調査(2025年平均)では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で毎月42,435円が不足しています。65歳から90歳までの25年間なら1,273万円です。ただしこれは持ち家(ローン完済)が前提で、賃貸のまま(家賃10万円)だと3,741万円になります。
Q. 「老後2,000万円問題」はどうなったのですか?
2019年に話題になった数字で、当時の家計調査をもとにした試算でした。最新の2025年平均で計算すると、25年間の不足は1,273万円です。ただし、この金額は年ごとの物価や年金水準で変わります。大切なのは一般論の数字ではなく、ご自身の年金見込み額と生活費で計算することです。
Q. 毎月いくら積み立てればいいですか?
35歳から60歳まで25年間で1,273万円を作る場合、運用しないなら月42,433円、年3%で運用できるなら月28,542円です。退職金が1,000万円見込めるなら、月6,121円まで下がります。まずは退職金の額を勤務先で確認してから逆算してください。
Q. 老後も賃貸のままだと、どのくらい厳しいですか?
家賃10万円の場合、毎月の不足は124,696円になります。25年間では3,741万円で、持ち家との差は2,468万円です。35歳から年3%で積み立てるなら月83,877円が必要になる計算です。住宅購入を検討している方は、この差も判断材料に入れてください。
Q. NISAとiDeCo、どちらを優先すべきですか?
「使う時期」で決めてください。iDeCoは掛金が全額所得控除になる強みがありますが、原則60歳まで引き出せません。住宅購入や教育費が控えている30代〜40代では、この制約が重くなることがあります。老後まで触らないと決められる金額をiDeCoに、途中で使う可能性があるお金をNISAに、という分け方が安全です。
Q. 住宅ローンを組むと、老後資金は貯まらなくなりませんか?
定年までに完済できる計画なら、むしろ老後の住居費が大きく下がります。問題になるのは、返済が重すぎて購入後に積立が止まってしまう場合です。維持費まで含めた住居費を手取りの30%以内に収め、教育費のピークでも積立をゼロにしない設計かどうかを、購入前に確認してください。
Q. 何歳から準備を始めればいいですか?
早いほど負担は軽くなります。1,273万円を年3%で作る場合、35歳から始めれば月28,542円ですが、45歳からだと月56,086円、50歳からだと月91,097円になります。しかも45歳以降は教育費のピークと重なる時期です。少額でもいいので、早く始めることに意味があります。
Q. 老後は年をとるほどお金がかかるのではないですか?
医療費や介護費は増えますが、全体の支出はむしろ減ります。家計調査では、毎月の赤字は65〜69歳で51,287円、70〜74歳で37,245円、75歳以上で27,225円と、年齢が上がるほど小さくなっています。行動範囲が狭まり、旅行や交際にかかる費用が減るためです。老後資金は「前半に厚く必要」と考えておくと現実的です。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。老後資金のご相談では、一般論の金額ではなく「わが家の年金見込み額と住まいで、いくら不足するか」を計算することから始めています。
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