住宅ローンは、多くの方にとって人生でいちばん大きな借入です。
にもかかわらず、「銀行の審査に通ったから大丈夫」という基準で借入額を決めてしまう方が少なくありません。
ここで断言しておきます。
審査に通る金額と、あなたが無理なく返せる金額は、まったく別のものです。
銀行はあなたの教育費の予定や老後の暮らしまでは考慮していません。それを考えるのは、あなた自身とFPの役割です。
この記事では、住宅ローンを組む前に必ず確認したい7つの家計チェックを、独立系FPの視点で解説します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 🏠 これから住宅ローンを申し込む予定がある
- 💴 「いくらまで借りて大丈夫か」の判断基準を知りたい
- 📚 教育費・老後資金と両立できるか不安
- 📄 借入額を決める前に家計を整理したい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
なぜ「審査に通る額」で決めてはいけないのか

金融機関の審査基準は、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)で30〜40%まで認められることが一般的です。
一方、FPが「無理のない水準」としてお勧めするのは20〜25%以内。
この差はどこから来るのでしょうか。
| 観点 | 銀行の審査 | FPの家計チェック |
|---|---|---|
| 目的 | 貸したお金を回収できるか | 家族の暮らしを守れるか |
| 教育費 | 考慮しない | 進路希望まで織り込む |
| 老後資金 | 考慮しない | 完済後の生活まで見る |
| 維持費 | 返済額のみで判断 | 固定資産税・修繕費も加える |
銀行が悪いわけではありません。役割が違うだけです。
では、家計側の視点で何を確認すべきか——7つのチェックを順に見ていきましょう。
チェック① 毎月の手取り収入と「本当に使えるお金」を把握する

出発点は、額面年収ではなく手取り収入です。
額面600万円なら手取りは約465万円(月約29万円+ボーナス)が目安。ここから住居費を考えます。
- 💴 世帯の手取り月収(夫婦それぞれ・ボーナスは別枠で管理)
- 💴 ボーナスの使いみち(生活費の補填に使っているなら実質の月収は低い)
- 💴 毎月の貯蓄額(=返済に回せる余力の目安)
- 📄 児童手当・各種手当(家計に混ぜず別管理が理想)
特に注意したいのが「ボーナス頼みの家計」です。
ボーナスで赤字を埋めている状態でローンを組むと、業績悪化のたびに家計が揺らぎます。
チェック② 住居費の総額を「維持費込み」で計算する

最も多い誤解が、「ローン返済額=住居費」だと思ってしまうことです。
- 🏠 住宅ローンの返済額
- 📄 固定資産税・都市計画税(年10〜15万円程度=月1万円前後)
- 🔧 修繕費の積立(戸建なら月1〜2万円が目安)
- 🏢 管理費・修繕積立金(マンションなら月2〜3万円程度・値上がり傾向)
- 🚗 駐車場代(マンションの場合)
- 🛡 火災保険・地震保険料
これらを合わせると、ローン返済額に月3万円前後が上乗せされるのが一般的です。
目安は、この総額が手取り収入の25%以内に収まること。
たとえば手取り月30万円の世帯なら、住居費の上限は7.5万円。返済額としては4.5〜5万円程度が安全圏という計算になります。
FP伊藤ご相談でよくあるのが、「家賃と同じ返済額だから大丈夫だと思っていた」というケースです。
賃貸の家賃には固定資産税も修繕費も含まれていないので、同額の返済にすると住居費は確実に増えます。
私がお伝えしているのは、「今の家賃から2〜3万円引いた金額を、返済額の上限の目安にしてください」という考え方です。
この一手間で、購入後の家計の余裕がまったく変わります。
チェック③ 教育費のピーク時に返済を続けられるか


住宅ローンと教育費は、ほぼ確実に衝突します。
30代で購入すれば、返済の中盤(40代後半〜50代前半)に子どもの高校・大学費用が重なるからです。
教育費の目安(子ども1人あたり)
- 📚 オール公立+国公立大学:約830万円
- 📚 高校まで公立+私立文系大学:約980万円
- 📚 中学から私立+私立理系大学:約1,560万円
- 🎓 大学入学前後の1年間だけで150〜250万円の集中支出
※ 文部科学省調査等をもとにした試算です。ご家庭・進路により異なります。
確認すべきは、「教育費が最も重い年に、返済と積立を続けられるか」です。
子ども2人の進学が重なる年は、教育費だけで年200万円を超えることもあります。
この年を特定して、そこから逆算するのが正しい借入額の決め方です。
チェック④ 収入が減る期間を織り込んでいるか
35年の返済期間中、収入が今のまま続く保証はありません。
- 👶 産休・育休——世帯年収が1〜2年、100万円以上下がることも
- 💼 時短勤務——復職後も数年間、収入が2〜4万円下がるケースが多い
- 🔄 転職・独立——一時的な収入減の可能性
- 🩺 病気・けが——傷病手当金は給与の約2/3(会社員の場合)
- 📉 役職定年——55歳前後で収入が下がる企業も
特に共働きで組む場合の安全基準は、「主たる収入だけで返済負担率35%以内」に収まっているかです。
この基準を満たしていれば、片方の収入が一時的に止まっても家計は破綻しません。
チェック⑤ 金利上昇に耐えられるか(変動金利の場合)


変動金利を選ぶなら、これは必須のチェックです。
| 借入額(変動1.0%・35年) | 金利+1%のとき | 金利+2%のとき |
|---|---|---|
| 3,000万円 | 毎月+約1.5万円 | 毎月+約3.1万円 |
| 3,500万円 | 毎月+約1.7万円 | 毎月+約3.6万円 |
| 4,000万円 | 毎月+約2.0万円 | 毎月+約4.2万円 |
※ 2026年時点の水準による試算です。
確認すべきは「+2%でも払い続けられるか」。
耐えられないなら、借入額を下げるか、固定金利を選んで返済額を確定させる判断が必要です。
チェック⑥ 手元に残すお金を確保できているか


頭金を増やせば返済は軽くなりますが、貯金をゼロにしてまで入れるのは危険です。
- 🛡 生活防衛資金——生活費の6ヶ月分(自営業なら12ヶ月分)
- 📄 入居関連費——引っ越し・家具家電・カーテン等で50〜100万円
- 🔧 当面の修繕予備費——中古住宅なら特に重要
- 📚 数年内に使う予定のお金——教育費・車の買い替えなど
順番はいつも同じです。
「残すお金を先に確保し、余った分だけを頭金に回す」——これが家計を守る鉄則です。
ローンは繰り上げ返済でいつでも減らせますが、払った頭金は戻ってきません。
チェック⑦ 完済年齢と老後資金の見通しがあるか


最後は、返済の「終わり方」の確認です。
完済年齢のチェックポイント
📅 完済は何歳になるか——「65歳完済」を基本の目標に 📅 定年後にローンが残る場合、繰り上げ返済の計画があるか 💴 退職金を返済の前提にしていないか——退職金は老後資金の柱 👴 返済しながら老後資金の積立を続けられるか(月1〜2万円でも継続を)
- 📅 完済は何歳になるか——「65歳完済」を基本の目標に
- 📅 定年後にローンが残る場合、繰り上げ返済の計画があるか
- 💴 退職金を返済の前提にしていないか——退職金は老後資金の柱
- 👴 返済しながら老後資金の積立を続けられるか(月1〜2万円でも継続を)
よくある危険な計画が「退職金で一括返済すればいい」という発想です。
退職金を返済に使い切ると、老後の生活資金が細ります。
退職金に頼らず完済できる計画を基本にし、退職金は老後のために残す——これが安心な設計です。



あらかじめ、退職金の金額を把握しておくことも大切です。ご相談の中で、「退職金の有無」は分かっていても、「いくらもらえるか」についてはなかなか把握されている方はいません。就業規則の「退職金規定」を確認する等で、退職金の目安も把握しておきましょう。
7つのチェックを終えたら「借入額」が見えてくる


ここまでの7項目を確認すると、自然と結論が出ます。
- 手取り月収を確定する
- 住居費の上限=手取りの25%を算出する
- その上限から維持費(月3万円前後)を差し引く → 返済額の上限が出る
- 教育費ピーク・収入減・金利上昇のシナリオで、その返済額に耐えられるか検証する
- 問題なければ、その返済額から逆算した借入額が「わが家の適正額」
この順番で決めた金額なら、審査に通る額より低くなることがほとんどです。
しかしその差額こそが、教育費と老後資金を守る余力になります。
住宅購入前診断(マイホーム購入診断)
7つのチェックを、ご家庭の実際の数字で行うのがマイホーム購入診断です。
- 💴 現状の家計・収支の整理(手取りベースでの把握)
- 🏠 維持費込みの住居費上限と、無理なく返せる借入額の試算
- 📚 教育費ピーク時の家計を見えるようにするキャッシュフロー表の作成
- 📄 金利上昇・収入減シナリオでの耐久力チェック
- 🛡 頭金と手元資金のバランス設計・完済年齢の計画
金融機関と提携しない独立系FPとして、中立な立場で試算をお見せします。
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 銀行の審査に通った金額を借りてはいけないのですか?
借りてはいけないわけではありませんが、審査基準(負担率30〜40%)は「回収できるか」の基準です。
その上限で借りると、教育費・老後資金の積立余力がほぼ残りません。
「借りられる額」を上限として認識し、実際に借りる額は家計から逆算するのが安全です。
Q. 家計簿をつけていないのですが、チェックできますか?
できます。
完璧な家計簿は不要で、「手取り月収」「毎月の貯蓄額」「現在の家賃」の3つがわかれば、おおよその上限は計算できます。
まず1ヶ月だけ支出を記録すると精度が上がりますが、なくても相談は始められます。
Q. 共働きですが、世帯収入で計算していいですか?
世帯収入で計算するのは問題ありませんが、「主たる収入だけの場合」も必ず検証してください。
産休・育休・時短で収入が下がる期間があるためです。
「世帯で25%以内・主収入だけで35%以内」の二重チェックが安全基準です。
Q. すでにローンを組んでいますが、今からできることは?
あります。
借り換え・金利引き下げ交渉で返済額を減らす、固定費(保険・通信・車)を見直して余力を作る、繰り上げ返済の計画を立て直す——打ち手は複数あります。
「返済が重い」と感じたら、滞納する前に早めにご相談ください。
住宅ローンの全体像を先に押さえたい方は、こちらをご覧ください


人生全体のお金の流れを整理する方法は、こちらでまとめています。


まとめ


| 7つのチェック | 確認する内容 |
|---|---|
| ① 手取り収入 | 額面ではなく手取りで。ボーナス頼みになっていないか |
| ② 住居費の総額 | 維持費(月3万円前後)込みで手取りの25%以内 |
| ③ 教育費との両立 | ピーク年(子2人なら年200万円超も)に耐えられるか |
| ④ 収入減の想定 | 産休・育休・時短・役職定年を織り込む |
| ⑤ 金利上昇耐性 | +2%でも返済を続けられるか |
| ⑥ 手元資金 | 生活防衛資金6ヶ月分+入居費を残す |
| ⑦ 完済年齢 | 65歳完済を目標に。退職金に頼らない計画 |
住宅ローンで後悔する方の多くは、物件選びを間違えたのではなく借入額の決め方を間違えています。
そして借入額は、物件を探し始める前に決めておくべきものです。
7つのチェックを済ませてから物件を見に行けば、予算オーバーの誘惑にも冷静に対応できます。
「わが家の適正な借入額を、数字で出してほしい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。
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