「共働きだと住宅ローンの組み方がいろいろあるらしいけど、どれを選べばいいの?」
夫婦で住宅ローンを組む方法は、大きく4つあります。
どれを選ぶかで、借りられる額・住宅ローン控除の効果・万が一のときの保障・離婚や収入減のときの整理まで、すべてが変わります。
- 選択肢は単独・連帯保証型・連帯債務型・ペアローンの4つ
- 控除を2人分使えるのは連帯債務型とペアローン。連帯保証型は使えない
- 育休で妻の収入が5割に下がっても、返済額は1円も減らない
- 組み方の損得より先に、収入が減る期間に耐えられる借入額かを確認する
この記事では、4つの違いと選び方の判断基準を、共働き夫婦向けの戦略として解説します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 共働きで住宅購入を検討している
- ペアローンと収入合算の違いを整理したい
- 住宅ローン控除を最大限活かす組み方を知りたい
- 産休・育休を見据えた安全な借り方を知りたい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【一覧】夫婦で組む住宅ローン4つの選択肢

まず全体像を押さえましょう。
「収入合算」と呼ばれるものには、連帯保証型と連帯債務型の2種類があります。
この2つは名前が似ていますが、中身はまったく違います。
| 比較項目 | 単独ローン | 収入合算 (連帯保証型) | 収入合算 (連帯債務型) | ペアローン |
|---|---|---|---|---|
| 契約の本数 | 1本 | 1本 | 1本 | 2本 |
| 配偶者の立場 | 無関係 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | それぞれが債務者 |
| 借入額 | 1人の収入分 | 合算で増やせる | 合算で増やせる | 合算で増やせる |
| 住宅ローン控除 | 1人分のみ | 本人のみ | 2人とも使える | 2人とも使える |
| 団信 | 本人のみ | 合算者は加入不可 | 商品による(デュエット等) | 各自の借入分に各自加入 |
| 物件の名義 | 本人の単独名義 | 本人の単独名義 | 夫婦の共有名義 | 夫婦の共有名義 |
| 諸費用 | 1本分 | 1本分 | 1本分 | 2本分かかる |
| 主な取扱い | 全金融機関 | 民間銀行が中心 | フラット35など | 民間銀行が中心 |
※ 取扱いの有無・条件は金融機関により異なります。検討時に必ずご確認ください。
まず押さえたい2つのポイント
1つめは、連帯保証型だけは控除も団信も配偶者に付かないということ。
「収入合算」とひとくくりにすると、ここを見落とします。
2つめは、物件の名義が変わること。
連帯債務型とペアローンは共有名義になるため、離婚時や売却時の手続きが複雑になります。
タイプ別|特徴と向いている夫婦

- 単独ローン =「安全第一」型
-
一方の収入だけで借りるシンプルな形です。配偶者の収入が減っても返済に影響せず、リスク耐性は最も高くなります。希望の物件に単独の与信で届くなら、まずここから検討するのが出発点です。「単独で買える範囲の物件を選ぶ」こと自体が、最良のリスク管理でもあります。
- 連帯保証型 =「あと少し届かない」を埋める型
-
配偶者の収入を合算して借入額を増やす形です。契約は1本で諸費用も1本分と手軽ですが、合算者には団信の保障がなく、住宅ローン控除も使えません。合算者に万が一があってもローンは満額残ります。「主債務者中心で、少しだけ上乗せしたい」夫婦向きです。
- 連帯債務型 =「2人で1本を背負う」型
-
夫婦2人が1本のローンの債務者になる形です。フラット35などで扱われています。契約が1本なので諸費用を抑えつつ、持分に応じて2人とも控除を使えるのが利点です。ただし団信は商品によって扱いが異なり、夫婦2人が加入できるタイプ(デュエットなど)を選ぶ必要があります。
- ペアローン =「2人でフル活用」型
-
夫婦がそれぞれローンを組む形です。2人とも控除を使え、節税効果は最大になります。一方、諸費用が2本分かかり、互いに連帯保証し合うため、離婚や収入減のときの整理が最も複雑になります。「2人とも安定収入があり、控除メリットを取りにいく」夫婦向きです。
FP伊藤ご相談の場では、「ペアローンが得らしい」と聞いて来られる方が多い印象です。
たしかに控除の面では有利になりますが、諸費用が2本分かかる点は見落とされがちです。
登記費用や事務手数料で、数十万円の差が出ることもあります。
節税額と諸費用の増加分を並べてみて、それでも残るメリットがあるかどうか。
そこまで確認してから決めていただくようにお伝えしています。
ペアローンの控除メリットはどのくらい?


住宅ローン控除(毎年のローン残高に応じて税金が戻る制度)は、借入限度額が決まっています。
1人で高額を借りると、限度額を超えた分は控除の対象になりません。
ここがペアローンの効きどころです。
| 組み方 | 控除の対象 | 考え方 |
|---|---|---|
| 単独・連帯保証型 | 契約者1人分のみ | 借入限度額を超えた分は対象外になる |
| 連帯債務型・ペアローン | 夫婦それぞれ | 2人分の枠を使えるため、高額借入でも対象にしやすい |
控除額には2つの上限があります
1つめは、住宅の性能ごとに決められた借入限度額です。
2つめは、その人が実際に納めている所得税・住民税の額です。
収入が低いほうは納税額が少ないため、枠を使い切れないことがあります。
「2人で組めば必ず2倍得する」わけではない、という点に注意してください。
なお、住宅ローン控除の借入限度額や控除期間は、ほぼ毎年見直されています。
本記事では具体的な金額の断定を避けています。
ご購入予定の時点の条件は、国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。
持分割合は「出したお金の割合」で決める
ペアローンと連帯債務型では、物件が夫婦の共有名義になります。
このとき、登記する持分割合は、実際に負担する金額の割合に合わせるのが原則です。
たとえば夫2,400万円・妻1,600万円を負担するなら、持分は6対4にします。
負担割合と持分がずれると、贈与とみなされる可能性があります。
※ 持分割合と贈与税の具体的な判断は、税理士にご確認ください。
【要注意】産休・育休で収入が減ったらどうなる?


共働きローンで最も見落とされやすいのが、ここです。
育児休業給付金は、休業前の賃金の全額が出るわけではありません。
| 期間 | 給付率(額面) | 月給28万円の場合 | 手取りの感覚 |
|---|---|---|---|
| 出生後8週間以内の一定期間 (最大28日) | 80% (67%+13%) | 約22.4万円 | 手取り10割相当 |
| 育休開始から180日 | 67% | 約18.8万円 | 手取り8割程度 |
| 181日目以降 | 50% | 約14.0万円 | 手取り6割程度 |
※ 2025年4月に創設された出生後休業支援給付金は、本人と配偶者がともに14日以上の育休を取得するなどの要件があります。給付金には上限額があり、月給が高い方は上記の割合どおりにならないことがあります。給付金は非課税で社会保険料も免除されるため、手取りベースでは額面の割合より目減りが小さくなります。
それでも返済額は1円も減りません
収入が半分になっても、住宅ローンの引き落とし額は変わりません。
ペアローンの場合、妻名義の返済も当然そのまま続きます。
「2人分の収入がある前提」で借りていると、この期間に家計が回らなくなります。
具体的にいくら足りなくなるのか
夫の月給35万円・妻の月給28万円のご家庭で試算します。
| 時期 | 世帯の月収(額面) | 通常時との差 |
|---|---|---|
| 通常時 | 63.0万円 | — |
| 育休開始〜180日(67%) | 53.8万円 | 月9.2万円の減少 |
| 181日目以降(50%) | 49.0万円 | 月14.0万円の減少 |
育休を1年取得すると、額面ベースでおよそ139万円の減収になります。
この間も返済は続きますから、次のどちらかの備えが必要です。
- 減収分をまかなえる貯蓄を、購入前に確保しておく
- そもそも主たる収入だけで返済を続けられる借入額に抑えておく



育休の期間は、多くのご家庭で「支出も増える」タイミングです。
収入が減るのに、ベビー用品や医療費で出ていくお金は増えます。
ご相談では、育休1年分の減収額をあらかじめ計算して、その分を頭金から差し引いて手元に残す設計をご提案することが多いです。
頭金を100万円減らしてでも、手元に現金を残しておくほうが安全だからです。
借入額の安全ライン|二重チェック基準


共働きの借入額は、次の2つの基準を両方満たすかで判断します。
住宅ローンの返済額だけでなく、固定資産税・修繕費・管理費まで含めた住居費の総額で判断します。世帯の手取り月収の25%以内が目安です。
配偶者の収入が5割に下がった状態で、返済と生活費を続けられるかを確認します。足りない場合は、その差額に想定期間をかけた額を、購入前に貯蓄として用意しておきます。
たとえば夫年収500万円・妻年収400万円のご家庭の場合です。
世帯の手取りは合わせて月60万円ほどになります。
住居費の上限は月15万円、維持費2.5万円を引くとローン返済は月12.5万円が上限です。
これを金利年0.7%・35年で借りると、借入額の目安は約4,650万円という計算になります。
※ 手取りは年収の約8割として計算した概算です。金利年0.7%・35年・元利均等返済で試算しています。実際の適正額はご家族の状況により異なります。
審査に通る額との差に注意してください
世帯年収900万円で収入合算すれば、審査上は6,000万円以上通ることもあります。
しかし手取りから逆算した目安は約4,650万円です。
この差が、10年後の家計を苦しめる正体になります。
離婚したらどうなる?ペアローンが最も複雑


触れにくい話ですが、共働きローンを選ぶうえで避けて通れない論点です。
| 組み方 | 離婚時の整理 |
|---|---|
| 単独ローン | 名義人が返済を続けるか、売却するかの二択で比較的シンプル |
| 連帯保証型 | 物件は債務者の単独名義。連帯保証を外すには金融機関の同意が必要 |
| 連帯債務型 | 共有名義のため、持分の移転と債務者の変更を同時に整理する必要がある |
| ペアローン | 互いに連帯保証が残るため最も複雑。片方だけ抜けることは原則できない |
ペアローンで「離婚したから自分の分だけ返済をやめる」ということはできません。
相手が返済できなくなれば、連帯保証人として請求されます。
解決策は、売却して精算するか、どちらかが単独で借り換えるかのいずれかです。
ただし借り換えには単独での審査が必要になるため、収入によっては通らないこともあります。
【フローチャート】わが家はどの組み方?


上から順に当てはめてみてください。
- 単独の与信で希望物件に届く → 単独ローン(最も安全)
- 少しだけ足りない、かつ配偶者の就業継続が不確実 → 連帯保証型で控えめに上乗せ
- フラット35を使う、または諸費用を抑えたい → 連帯債務型(2人とも控除を使える)
- 2人とも安定収入があり、控除を最大化したい → ペアローン
ペアローンや連帯債務型を選ぶ場合、配分は収入比に合わせるのが基本です。
年収600万円と400万円なら、6対4が目安になります。
金利タイプを分けるという手もあります
ペアローンでは、夫婦で別々の金利タイプを選べる金融機関が多くあります。
「夫は変動金利、妻は固定金利」といった分け方です。
金利が上がったときの影響を、半分に抑えられます。
まとめ|共働きの住宅ローンをどう選ぶか


| この記事のポイント | 内容 |
|---|---|
| 選択肢は4つ | 単独・連帯保証型・連帯債務型・ペアローン |
| 控除を2人分使える | 連帯債務型とペアローン(連帯保証型は使えない) |
| 団信の落とし穴 | 連帯保証型の合算者は加入できない。民間の保険で補う |
| 物件の名義 | 連帯債務型とペアローンは共有名義になる |
| 育休中の収入 | 額面で67%→50%に下がるが、返済額は変わらない |
| 安全ライン | 世帯の手取り25%以内+収入減の期間も回るか |
| 離婚時 | ペアローンは互いの連帯保証が残り、整理が最も複雑 |
| 持分割合 | 実際に負担する金額の割合に合わせる(税理士に確認) |
この記事の要点
共働きの住宅ローンは、組み方次第で「最強の武器」にも「最大のリスク」にもなります。
控除の損得だけで選ぶと、収入が減る期間に足をすくわれます。
「2人分の収入が続く前提」を一度外して考えること。
これが、長い安心につながる設計の出発点です。
3パターンを並べて、わが家の最適解を出しませんか


組み方の最適解は、収入バランス・出産予定・キャリアプランによって夫婦ごとに変わります。
伊藤FPオフィスでは、複数パターンを数字で比較できます。
- 世帯の家計・収支の整理
- 単独・収入合算・ペアローンの3パターン比較シミュレーション
- 産休・育休期間を織り込んだ返済計画の設計
- 教育費・老後資金との両立確認(キャッシュフロー表の作成)
- 団信と夫婦の保険をまとめた保障の最適化
ご夫婦そろってのご参加を推奨しています。
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問


気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. ペアローンと収入合算、結局どちらが人気ですか?
物件価格の上昇を背景に、都市部ではペアローンを選ぶ共働き夫婦が増えています。ただし人気と最適は別問題です。控除のメリットと、諸費用2本分およびリスクの複雑さを天秤にかけ、わが家の条件で試算して選びましょう。
Q. 妻が数年後に育休予定です。ペアローンは危険ですか?
育休中も妻名義の返済は続くため、その期間の返済原資を事前に設計しておけば選択肢になります。貯蓄で備えるか、夫の収入から補填できるかを確認してください。妻側の借入額を控えめにする配分調整も有効です。
Q. ペアローンで、夫婦のローンを別の銀行にできますか?
原則できません。ペアローンは同一の金融機関で、同一物件に対して2本組むのが基本形です。ただし金利タイプ(変動・固定)は夫婦で別々に選べる場合が多く、リスク分散に使えます。
Q. 連帯保証型の合算者に保障がないのが不安です
合算者(連帯保証人)は団信に入れないため、その分は民間の生命保険でカバーするのが定石です。収入保障保険など掛け捨て型なら、比較的小さな保険料で備えられます。ローンの組み方と保険はセットで設計しましょう。
Q. 連帯債務型とペアローンは何が違うのですか?
契約の本数が違います。連帯債務型は1本のローンを夫婦2人で背負う形なので、諸費用は1本分で済みます。ペアローンは2本の契約になるため、登記費用や事務手数料が2本分かかります。どちらも2人とも控除を使え、物件は共有名義になります。連帯債務型はフラット35など取扱いが限られる点に注意してください。
Q. 途中で組み方を変えることはできますか?
借り換えという形であれば可能な場合があります。たとえばペアローンから単独ローンへの一本化などです。ただし、まとめる側が単独で審査に通る必要があり、諸費用も改めてかかります。最初の設計をていねいに行うほうが、結果的に負担は小さくなります。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。共働きご夫婦の住宅ローン設計では、産休・育休期間を織り込んだ返済計画づくりを重視しています。
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