「住宅ローンの返済期間って、35年にすべき?それとも短くした方がいい?」
返済期間は、毎月の負担と利息の総額を同時に左右する重要な選択です。
そして一度決めると、あとから変えにくい部分でもあります。
- 基本は「長めに組んで、繰り上げ返済で短くする」
- 理由は期間は縮められるが、延ばすのは難しいという非対称性があるため
- 35年で組んで毎年60万円繰り上げれば、実質22年で完済できます(試算)
- 判断の軸は期間そのものではなく「65歳完済」からの逆算です
この記事では、期間別の試算と年齢別の考え方を、数字で整理します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 住宅ローンを何年で組むか迷っている
- 期間別の毎月返済額・利息の違いを比較したい
- 「長く借りるのは損」なのか本当のところを知りたい
- 40年・50年ローンが気になっている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
期間別の返済額と利息はどう変わるか

まず、実際にどれくらい違うのかを見てみましょう。
3,500万円を金利年1.0%で借りた場合の比較です。
| 返済期間 | 毎月の返済額 | 利息の総額 | 35年との差 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 16.10万円 | 約363万円 | 利息が287万円少ない |
| 25年 | 13.19万円 | 約457万円 | 利息が193万円少ない |
| 30年 | 11.26万円 | 約553万円 | 利息が97万円少ない |
| 35年 | 9.88万円 | 約650万円 | — |
| 40年 | 8.85万円 | 約748万円 | 利息が98万円多い |
| 50年(金利上乗せ想定) | 7.67万円 | 約1,104万円 | 利息が454万円多い |
※ 借入3,500万円・元利均等返済で計算した試算です。50年のみ金利を年1.15%(0.15%上乗せ)と仮定しています。実際の金利・商品条件は金融機関により異なります。
構図はシンプルです。
期間を短くすると利息は減るが、毎月が重くなる。
長くすると毎月は楽になるが、利息が増える。
では、どちらに寄せるべきなのでしょうか。
参考|実際にはどれくらいの期間が選ばれているか
- 設定される返済期間の平均は約28年(注文住宅32.7年・分譲29.7年・中古26.2年)
- 最も多いのは「30年超〜35年」で約46%
- 近年は「35年超」の超長期も増加傾向
※ 住宅金融支援機構などの公表調査をもとにした一般的な傾向です。調査年度により数値は変動します。
「長く借りて短く返す」が基本になる理由

利息だけを見れば、短期が有利です。
それでもFPとして基本の型を1つ挙げるなら、「長めに組んで、繰り上げ返済で短縮する」です。
理由は、返済期間の変更に決定的な非対称性があるからです。
長く組んだ期間を短くする
- 繰り上げ返済(期間短縮型)で、いつでも何度でもできる
- 手数料が無料の金融機関も多い
- 自分のタイミングで判断できる
短く組んだ期間を延ばす
- 原則として金融機関の承諾が必要になる
- 条件変更の審査があり、応じてもらえないこともある
- 家計が苦しくなってから申し出ても、間に合わないことがある
長めの期間は「家計の柔軟性」を買う選択です
短期で組んで家計が苦しくなっても、あとから35年に延ばすことは基本的にできません。
一方、35年で組んでおけば、余裕があるときに繰り上げ返済で25年完済にできます。
教育費の増加、収入減、金利上昇。35年の間には想定外が起こります。
その保険として考えれば、利息を少し多く払う価値はあります。
ただし「浮いた差額の使い道」が条件です
35年と25年では、毎月3.31万円の差があります。
この差額をどう使うかで、選択の結果が変わります。
| 差額3.31万円の使い道 | 25年後の姿 |
|---|---|
| 貯蓄・積立に回す(利回り0%) | 約993万円が手元に残る |
| 積立投資に回す(年3%で運用できた場合) | 約1,477万円になる計算 |
| 生活費に消える | 利息を193万円多く払っただけになる |
※ 毎月3.31万円を25年間積み立てた場合の試算です。運用の想定利回りはあくまで仮定であり、成果を保証するものではありません。
差額を使い切ってしまうなら、長期を選ぶ意味は薄れます。
「毎月が楽になった分を貯める」という前提があってこそ、この戦略は成立します。
繰り上げ返済でどこまで短縮できるか

では実際に、35年で組んで繰り上げ返済をすると、どれくらい早く終わるのでしょうか。
3,500万円・金利年1.0%・35年で組み、毎年一定額を繰り上げた場合の試算です。
| 毎年の繰り上げ額 | 完済までの年数 | 短縮できる期間 |
|---|---|---|
| 30万円(月2.5万円相当) | 約27年 | 8年短縮 |
| 60万円(月5万円相当) | 約22年 | 13年短縮 |
| 100万円(月8.3万円相当) | 約18年 | 17年短縮 |
※ 期間短縮型の繰り上げ返済を毎年1回行った場合の試算です。実際の効果は金利・返済状況により異なります。
35 年
22 年
契約は35年でも、実質は13年短く終えられます
毎月の義務は9.88万円のまま、余裕がある年だけ多く返す。
これが「長く借りて短く返す」の実際の姿です。
FP伊藤繰り上げ返済で大切なのは、順番です。
まず生活防衛資金、次に教育費の確保、そのあとで繰り上げ返済。
住宅ローン控除を受けている間は、残高が多いほうが控除額も大きくなります。
控除期間が終わってから本格的に始めるほうが、合理的なケースが多いです。
焦って手元資金を減らすより、タイミングを見極めましょう。
年齢別・何年で組むべきか


返済期間のもうひとつの制約が、完済年齢です。
多くの金融機関で完済時80歳未満が上限ですが、実際の設計では「年金生活にローンを持ち込まない=65歳完済」を基準にするのが安全です。
| 購入年齢 | 65歳完済までの年数 | 35年で組んだ場合の完済年齢 | 現実的な組み方 |
|---|---|---|---|
| 30歳 | 35年 | 65歳 | 35年でそのまま65歳完済。余裕分は資産形成へ |
| 35歳 | 30年 | 70歳 | 35年で組み、繰り上げ返済で65歳完済を目指す |
| 40歳 | 25年 | 75歳 | 退職金をあてにしない繰り上げ計画を必ずセットに |
| 45歳 | 20年 | 80歳 | 借入額を抑えるか、20〜25年で組める予算設計が安全 |
35歳以降の購入では、組んだ期間のまま返すと定年を超えるのが普通です。
その場合は「何歳時点で残高をいくらにするか」という中間目標を決めましょう。
目標があれば、繰り上げ返済のペースも決まります。
何年で組むか、簡単な判定
40年・50年ローンはありなのか


物件価格の上昇を背景に、40年・50年の超長期ローンを扱う金融機関が増えています。
毎月の負担は確かに下がりますが、注意すべき点があります。
- 完済時80歳未満の制約 — 50年ローンを組めるのは実質20代のうち
- 利息が大きく増える — 3,500万円の50年なら、35年より約454万円多い(試算)
- 金利が上乗せされることが多い — 0.1〜0.15%程度
- 残高の減りが遅い — 担保割れの期間が長く、住み替えがしにくくなる
判断の分かれ目はここです
「毎月を抑えないと買えないから50年」は、危険信号です。
その物件は、そもそも予算を超えている可能性があります。
一方「あえて毎月を抑えて、差額を資産形成に回す」という設計意図があるなら、選択肢になり得ます。
若さという時間を活かせる20代だからこそ使える道具、と位置づけるのが適切です。
住宅購入の流れとお金の全体像は、こちらでまとめています。


住宅ローンの手続きや条件については、こちらもご覧ください。


まとめ|期間より「完済年齢」を設計する


返済期間に唯一の正解はありません。
ただ、柔軟性を残しつつ完済年齢から逆算するという設計の軸は共通です。
わが家は何年で組んで、何歳完済を目指すべきか
最適な返済期間は、年齢・教育費の予定・老後計画によってご家庭ごとに変わります。
伊藤FPオフィスでは、期間別の比較と繰り上げ返済の中間目標まで設計しています。
- 現状の家計・収支の整理
- 返済期間別のシミュレーション比較(毎月負担・利息・完済年齢)
- 教育費・老後資金と両立できる返済計画の設計
- 繰り上げ返済の中間目標(何歳でいくら)の設定
- 金利上昇シナリオでの耐久性チェック
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 結局、35年で組んでおけば間違いないですか?
30代前半までの購入なら、35年は65歳完済圏内でバランスの良い定番です。35歳を超える場合は、35年で組みつつ「繰り上げ返済で65歳完済」の計画をセットにすることをお勧めします。大切なのは期間そのものより、完済年齢の設計です。
Q. ボーナス払いを使えば期間を短くできますか?
できますが、お勧めしません。ボーナスは景気や業績で変動する収入だからです。毎月払いのみで無理のない期間を設定し、ボーナスは「余裕があれば繰り上げ返済に回す」ほうが安全です。
Q. 繰り上げ返済はいつ・どのくらいすればいいですか?
優先順位は「生活防衛資金の確保 → 教育費の確保 → 住宅ローン控除の期間終了後に繰り上げ」が基本形です。控除期間中は残高が多いほうが控除額も大きいため、急がないほうが合理的なケースが多くあります。3,500万円・35年なら、毎年60万円の繰り上げで13年短縮できる計算です。
Q. ペアローンの場合、期間は夫婦で揃えるべきですか?
揃える必要はありません。収入・年齢・働き方の予定に合わせて別々に設定できます。たとえば「夫は35年、妻は育休の影響を見込んで短めに少額」といったリスク分散の設計も可能です。
Q. 期間短縮型と返済額軽減型、どちらの繰り上げ返済がいいですか?
利息の軽減効果が大きいのは期間短縮型です。完済年齢を前倒ししたい方はこちらを選びましょう。一方、教育費のピークなどで毎月が苦しい時期には、返済額軽減型で負担を下げる選択もあります。目的によって使い分けてください。
Q. 途中で返済期間を延ばすことはできますか?
原則として金融機関の承諾が必要で、条件変更の審査があります。収入が減ってから申し出ても、応じてもらえるとは限りません。だからこそ、最初から余裕のある期間で組んでおくことが大切です。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。返済期間のご相談では、契約上の年数ではなく「何歳で完済するか」から逆算してご提案しています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応

