「頭金なしのフルローンで家を買うのって、実際どうなの?」
かつては「頭金なしは無謀」と言われた時代もありました。
しかし今は、頭金を入れずに購入する方が珍しくありません。
結論から言うと、フルローンは「危険な借り方」ではなく「条件つきで合理的な戦略」です。
- フルローンの本質は「借金を増やす」ではなく「手元資金を守る」こと
- 頭金1割(350万円)を入れても、利息の差は約65万円にとどまります
- ただし金利が0.1%上乗せされるなら、頭金を入れたほうが総額134万円有利になります
- 3,500万円の物件でも、フルローンで405万〜630万円の現金は必要です
この記事では、メリットとデメリットを数字で比較し、「わが家はフルローンで買っていいのか」を判定できる基準まで解説します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 頭金なしで住宅購入を検討している
- フルローンのメリット・デメリットを整理して知りたい
- 「フルローンはやめとけ」と言われて不安になっている
- 手元資金を残すか頭金に入れるかで迷っている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
フルローンでも現金は必要です

まず、言葉の整理からです。
| 用語 | 借りる範囲 | 必要な現金 |
|---|---|---|
| フルローン | 物件価格の100% | 諸費用(物件価格の5〜10%)は現金で必要 |
| オーバーローン | 物件価格+諸費用の一部まで | 引っ越し・家具代などは別途必要 |
フルローンでも「現金ゼロで買える」わけではありません。
3,500万円の物件なら、405万〜630万円の現金を用意しておく必要があります。
具体的に、どんな現金が必要になるかを見ていきましょう。
ここが判断の分かれ目です
この現金を用意できるなら、フルローンは選択肢になります。
用意できないなら、まだ購入のタイミングではありません。
頭金の有無より、「残せる現金があるか」のほうが重要です。
頭金を入れると、実際いくら違うのか

「頭金を入れたほうが得」と言われますが、実際の差はどれくらいでしょうか。
3,500万円の物件を金利年1.0%・35年で購入した場合の比較です。
| 頭金 | 借入額 | 毎月の返済額 | 利息の総額 | フルローンとの利息差 |
|---|---|---|---|---|
| 0円(フルローン) | 3,500万円 | 9.88万円 | 約650万円 | — |
| 200万円 | 3,300万円 | 9.32万円 | 約612万円 | 38万円少ない |
| 350万円(1割) | 3,150万円 | 8.89万円 | 約585万円 | 65万円少ない |
| 500万円 | 3,000万円 | 8.47万円 | 約557万円 | 93万円少ない |
| 700万円(2割) | 2,800万円 | 7.90万円 | 約520万円 | 130万円少ない |
※ 物件価格3,500万円・金利年1.0%・35年・元利均等返済で計算した試算です。
頭金1割(350万円)を入れても、利息の差は約65万円です。
350万円を35年間手元に置いておく価値と、65万円の利息。
この比較なら、手元に残す判断も十分に合理的です。
ただし金利が上乗せされる場合は話が変わります
金融機関によっては、頭金の割合に応じて金利が優遇されます。
フルローンだと金利が0.1〜0.2%高くなることがあるのです。
金利0.1%の差がある場合で計算してみます。
| 条件 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 頭金を含めた総支払い |
|---|---|---|---|
| 頭金0円・金利1.1% | 10.04万円 | 約4,218万円 | 約4,218万円 |
| 頭金350万円・金利1.0% | 8.89万円 | 約3,735万円 | 約4,085万円 |
※ 物件価格3,500万円・35年・元利均等返済で計算した試算です。金利の優遇条件は金融機関により異なります。
金利差があると逆転します
頭金を入れたほうが、総支払いで約134万円有利になります。
金利だけの差なら65万円でしたが、0.1%の上乗せで倍以上に開きます。
フルローンを検討するなら、金利優遇の条件を必ず確認してください。
FP伊藤ご相談でお伝えしているのは、「頭金を入れるかどうかは、金利条件を見てから決めましょう」ということです。
金利が変わらないなら、手元に現金を残すほうが安全です。
けれども0.1%でも上乗せされるなら、話は変わります。
同じ金融機関でも頭金1割で優遇が付くことがありますので、事前審査の段階で確認しておきましょう。
フルローンのメリットとデメリット


フルローンのメリット
- 頭金が貯まるのを待たずに買える — 300万円貯めるのに3年かかるなら、その間の家賃が出ていく
- 手元に現金を残せる — 病気・失業・教育費への備えを厚くできる(最大の価値)
- 住宅ローン控除を活かしやすい — 借入残高に応じて控除されるため(限度額の範囲内)
- 良い物件を買い逃さない — 立地の良い物件はスピード勝負になりがち
フルローンのデメリット
- 毎月の返済・利息が最大になる — 頭金1割と比べて月約1万円、利息65万円多い
- 審査が厳しくなり、金利が上がることがある — 頭金の割合による優遇を受けられない
- 担保割れの期間が長くなる — 売却が必要になったとき、売っても完済できないおそれ
- 金利上昇の影響を最大限受ける — 3,500万円で1%上昇なら月約1.7万円の負担増
フルローンの本質は「手元資金を守ること」です
「頭金を入れて貯金ゼロ」と「フルローンで貯金300万円」。
家計の耐久力という点では、後者のほうが明らかに安全です。
借金の額ではなく、いざというときに動かせるお金があるかで考えてください。
担保割れはいつ解消するのか


フルローンで最も注意すべきなのが、この担保割れです。
ローンの残高が、物件の市場価値を上回っている状態を指します。
この間に売却が必要になると、売っても完済できず、不足分を現金で用意することになります。
新築物件は、購入した直後に価値が下がります。
いわゆる新築プレミアムの分です。
価値の下がり方ごとに、残高が下回るまでの年数を試算しました。
※ 借入3,500万円・金利年1.0%・35年で計算した目安です。物件の価値の下がり方はエリア・物件により大きく異なります。
つまりフルローンは、最初の10年間が勝負ということです。
この期間に転勤・離婚・収入減で売却する可能性があるなら、頭金を入れておくほうが安全です。
逆に「10年以上住む」という前提が固いなら、大きなリスクにはなりません。
【判定】フルローンで買っていい人・やめた方がいい人


次の5項目で判定してみてください。
| 確認項目 | 買っていい | やめた方がいい |
|---|---|---|
| 返済負担率 | 額面年収の25%以内 | 30%を超える |
| 手元の現金 | 生活防衛資金+諸費用を確保できる | 貯蓄がほぼゼロ |
| 毎月の家計 | 黒字で貯蓄を続けられる | 収支がぎりぎり・赤字気味 |
| 居住の見通し | 10年以上住む前提 | 数年内に転勤・住み替えの可能性 |
| 金利上昇への備え | 上がっても対応できる余力がある | 上がったら家計が回らない |
ポイントは、フルローンの是非が「頭金の有無」ではなく「家計の健全性」で決まることです。
同じフルローンでも、貯蓄300万円を残して買う人と、貯蓄ゼロで買う人ではリスクがまったく違います。
フルローンを選ぶなら守りたい3つの条件
フルローンは借入額が最大になる分、負担率の管理がより重要になります。「借りられる額」ではなく、教育費・老後資金と両立できる額にしてください。
生活防衛資金、諸費用、手付金、引っ越し代。これらを確保したうえでのフルローンが大前提です。用意できないなら、まず貯蓄体質を作ってからの購入が安全です。
手元に残した資金をなんとなく使ってしまっては、フルローンの意味がありません。生活防衛資金・教育費積立・余裕分の運用と、目的別に口座を分けて役割を与えましょう。



フルローンで後悔される方に共通しているのは、「貯蓄ゼロ」「負担率オーバー」「早期の売却」の組み合わせです。
逆に、手元資金を残したうえで無理のない借入額に抑えている方は、うまくいっています。
頭金を入れるかどうかは、その次に考える話です。
まず家計の健全性を確認してから判断しましょう。
住宅購入の流れとお金の全体像は、こちらでまとめています。


住宅ローンの手続きや条件については、こちらもご覧ください。


まとめ|判断すべきは頭金ではなく家計の健全性


フルローンは、正しく使えば家計の安全性を高める借り方にもなります。
大切なのは頭金の有無ではなく、返済負担率と手元資金という2つの健全性です。
わが家はフルローンでも大丈夫か、数字で判定しませんか
フルローンが「合理的な戦略」になるか「危険な賭け」になるかは、ご家庭の家計次第です。
伊藤FPオフィスでは、両方のパターンを並べて比較しています。
- 現状の家計・収支の整理と貯蓄配分の設計
- フルローン・頭金ありの両パターン比較シミュレーション
- 金利上昇・収入減シナリオでの家計の耐久力チェック
- 教育費・老後資金との両立確認(キャッシュフロー表の作成)
- 住宅ローン控除を活かした返済戦略の設計
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. フルローンは審査に通りにくいですか?
借入額が大きい分、返済負担率の基準は厳しくなりますが、年収に対して無理のない物件価格なら十分に通ります。物件価格を年収の6〜7倍以内に抑えると、フルローンでも現実的な審査ラインに収まりやすくなります。
Q. フルローンで買って、後から後悔しませんか?
後悔につながるのは、フルローンそのものより「貯蓄ゼロ」「返済負担率のオーバー」「短期での売却」の組み合わせです。判定表の条件を満たしているなら、手元資金を守る合理的な選択になり得ます。不安な方は、購入前に最悪のシナリオまで確認しておきましょう。
Q. 手元に残した資金は投資に回していいですか?
優先順位があります。まず生活防衛資金(生活費6ヶ月分)は現金のまま。次に5年以内に使う予定のお金(教育費など)も元本を確保できる形で。それを超える余裕資金だけが長期投資の候補になります。この順番を守ってこそ、フルローン戦略は成立します。
Q. 諸費用も借りるオーバーローンはやめた方がいいですか?
フルローンより一段リスクが上がります。借入額と利息が増え、審査も厳しくなり、担保割れの幅も大きくなるためです。諸費用まで借りないと買えない状況なら、「今は買いどきではない」というサインと捉えて、まず諸費用分の貯蓄から始めるのが安全です。
Q. 頭金を入れると金利が下がる金融機関はありますか?
あります。頭金1割以上で金利優遇を設けている金融機関があり、0.1〜0.2%程度変わることがあります。0.1%の差でも、3,500万円・35年なら総支払いで134万円の違いになります。事前審査の段階で、頭金の割合による条件の違いを必ず確認してください。
Q. 中古物件でもフルローンは組めますか?
組めますが、新築より担保評価が低くなることがあり、物件価格の全額を借りられないケースがあります。また購入後すぐに修繕が必要になることも多いため、その分の現金を別途用意しておく必要があります。中古の場合は特に、手元資金を厚めに確保しておきましょう。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。頭金のご相談では、頭金あり・なしの両方を試算し、手元資金の残し方まで含めてご提案しています。
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