「住宅、教育費、老後資金。全部大事なのは分かるけれど、何から手をつければいいのか」
30代のご相談で、最も多い悩みです。
結論からお伝えすると、優先順位は「時期を動かせるかどうか」で決まります。
そして30代には、他の年代にはない武器があります。
- 老後資金は持ち家なら約1,018万円、賃貸なら約2,458万円です(65歳から20年)
- 優先すべきは時期を動かせない教育資金。住宅は借りられ、老後は時間が味方します
- 月1万円の積立でも、30歳と40歳では60歳時点で254万円の差が出ます
- 2027年1月からiDeCoの上限が月2.3万円→6.2万円に拡充されます
この記事では、3大資金の必要額を最新のデータで確認し、配分の決め方と、30代がやりがちな失敗を整理します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 30代になり、お金の準備を何から始めるべきか迷っている
- 住宅・教育・老後、どれを優先すべきか知りたい
- 子育てをしながら、効率よく貯める配分を知りたい
- 新NISA・iDeCoをどう位置づければいいか整理したい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
3大資金の必要額を、最新データで確認する

まず、それぞれいくら必要なのかを確認します。
よく言われる「教育費1,000万円・老後2,000万円」という数字を、最新の統計で計算し直しました。
住まいをどうするかで、老後資金は1,440万円変わります
※ 教育費は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」および「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査」、老後資金は総務省「家計調査」2025年平均をもとにした試算です。住宅は維持費を含めた住居費が手取りの25〜28%に収まる借入額の目安になります。
「老後2,000万円」は、今のデータでは1,018万円
老後資金については、あらためて計算し直す価値があります。
総務省の家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の収支はこうなっています。
- 可処分所得 — 月221,544円(年金などから税・社会保険料を引いた手取り)
- 消費支出 — 月263,979円
- 月あたりの不足 — 42,435円
この不足を20年間続けると、1,018万円。
25年なら1,273万円、30年なら1,528万円です。
かつて話題になった「2,000万円」より、少ない数字になります。
ただし、ここには大きな前提があります。
この統計に含まれる世帯の持ち家率は95.5%です。
つまり、住居費がほとんどかからない前提の数字だということです。
固定資産税と修繕費のみ
1,018 万円
65歳から20年間の不足分
月8万円続くと想定
2,458 万円
65歳から20年間の不足分
住まいの選択が、必要な老後資金を1,440万円変えます
住宅の決断は、老後資金の決断でもある。
30代で住まいを考えるとき、この視点を持っておいてください。
退職直後の5年が、最も厳しくなります。
年齢別に見ると、65〜69歳の不足が月51,287円と最大です(70〜74歳は37,245円、75歳以上は27,225円)。退職して間もない時期は、まだ現役の頃の生活水準が残っているためです。「年金が出れば楽になる」と考えていると、最初の数年でつまずきます。
優先順位は「時期を動かせるか」で決まる

3つとも大事なのは間違いありません。
では、何を基準に順番をつければよいのか。
答えは「時期を動かせるか」と「借りられるか」です。
| 時期を動かせるか | 借りられるか | だからどうするか | |
|---|---|---|---|
| 教育資金 | 動かせない 18歳で必ず来る | 借りられるが 子の負担になる | 先取りで貯める 最優先で仕組み化する |
| 住宅資金 | 動かせる 買う時期は選べる | 低金利で借りられる | 借入額を設計する 頭金より予算の決め方が本質 |
| 老後資金 | 多少は動かせる 働く期間を延ばせる | 借りられない | 少額でも早く始める 時間が最大の武器になる |
整理すると、こうなります。
- 貯める優先度は教育資金 — 時期が決まっていて、借りると子どもの借金になります
- 設計の優先度は住宅 — 借入額を間違えると、他のすべてが崩れます
- 始める優先度は老後資金 — 金額は少なくてよいので、早く始めることが効きます
そしてすべての土台になるのが、生活防衛資金です。
生活費の6ヶ月分(月25万円の家庭なら150万円)を、普通預金にそのまま置いておきます。
これがないまま投資を始めると、急な出費のたびに相場に関係なく売ることになります。
FP伊藤順番の話をすると「全部は無理です」とおっしゃる方が多いのです。
けれども優先順位は、金額の配分の話であって、何かをゼロにするという意味ではありません。
老後資金が月5,000円でも構いません。
大事なのは、4つすべてに「仕組み」を作っておくことです。金額は後から増やせます。
30代の武器は時間——1年の遅れがいくらの差になるか


30代が老後資金を「少額でも今」始めるべき理由を、数字で示します。
月1万円を年3%で運用しながら60歳まで積み立てた場合です。
※ 想定利回り年3%で積み立てた場合の試算です。運用成果を保証するものではありません。
30歳と40歳では、10年の差で254万円の違いが出ます。
同じ金額を作ろうとすると、必要な毎月の積立額はこうなります。
| 始める年齢 | 583万円を作るのに必要な毎月の積立額 | 30歳と比べて |
|---|---|---|
| 30歳 | 月1.00万円 | — |
| 35歳 | 月1.31万円 | 1.3倍 |
| 40歳 | 月1.78万円 | 1.8倍 |
| 45歳 | 月2.57万円 | 2.6倍 |
| 50歳 | 月4.17万円 | 4.2倍 |
金額より、開始時期。
これが30代の資産形成の本質です。
2027年1月から、iDeCoの上限が大きく広がります
もうひとつ、30代にとって見逃せない変化があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額が引き上げられます。
2026年12月1日の施行で、2027年1月の掛金の引き落としから適用されます。
約2.7倍に拡大します
| 区分 | 現在 | 2027年1月から |
|---|---|---|
| 企業年金のない会社員 | 月2.3万円 | 月6.2万円 |
| 企業年金のある会社員 | 月2.0万円 | 月6.2万円 企業年金の掛金と合算した上限 |
| 自営業・フリーランス | 月6.8万円 | 月7.5万円 |
| 加入できる年齢 | 65歳未満 | 70歳未満 |
※ 2026年12月1日施行、2027年1月の掛金引落分から適用される予定です。制度の詳細は今後変わる可能性があるため、最新の情報は厚生労働省または金融機関のサイトでご確認ください。
iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象になります。
つまり、その分だけ所得税と住民税が軽くなります。
| 年収 | 月2.3万円(現在の上限) | 月6.2万円(2027年〜) |
|---|---|---|
| 400万円 | 年4.14万円の節税 | 年11.16万円の節税 |
| 500万円 | 年5.52万円の節税 | 年14.88万円の節税 |
| 700万円 | 年8.28万円の節税 | 年22.32万円の節税 |
※ 所得税と住民税を合わせた軽減額の概算です。実際の節税額は各種控除の適用状況によって異なります。
年収500万円の方が月6.2万円を30年続けると、節税だけで446万円になります。
さらに運用益も非課税です。
ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。
教育費や住宅資金と重なる30代では、この制約が重くなることがあります。上限が広がったからといって、いきなり満額を入れるのは危険です。自由に使える新NISAを軸にして、余裕がある分だけiDeCoに回す。この順番のほうが、30代には扱いやすい組み合わせです。
3つが重なる「51歳」を、先に見ておく
優先順位を決めるうえで、もうひとつ大事な作業があります。
3つの資金が最も重なる年を特定しておくことです。
30歳で第1子、33歳で第2子、35歳で住宅を購入したご家庭を例に見てみます。
この年表を見ると、判断の基準がはっきりします。
51歳の家計が回るかどうかで、住宅の借入額を決める。
これが、30代で住宅を購入するときの最も確実な考え方です。
35年ローンを組むと、完済は70歳です
35歳で購入すれば70歳、38歳なら73歳。
定年後も返済が続くことになります。
退職金で一括返済する前提で計画を立てる方が多いのですが、退職金の額は今後変わる可能性があります。
「60代前半で完済できる借入額か」も、あわせて確認しておいてください。
年間100万円の配分と、やりがちな3つの失敗


最後に、具体的な配分の例をお見せします。
年間100万円(月5万円+ボーナスから40万円)を貯められるご家庭の場合です。
置き場所は定期預金と新NISA。大学入学の5年前から段階的に現金化していきます。
金額は小さくても、30年続ければ583万円(年3%で運用できた場合)になります。
使う時期が近いので、普通預金と定期預金で確保しておきます。
この枠があると、他の目的の貯蓄に手をつけずに済みます。
大事なのは、目的ごとに置き場所を分けることです。
ひとつの口座にまとめて貯めると、住宅の頭金で教育費まで使ってしまう、といったことが起こります。
分けておけば、残高を見るだけで進み具合が分かります。
30代がやりがちな3つの失敗
老後にいくら必要かは、こちらで数字をもとにまとめています。


まとめ|少額ずつの並行で、十分に間に合います
30代のお金の悩みは、「全部やらなければ」という焦りから生まれます。
けれども実際には、優先順位と配分さえ決まれば、少額ずつの並行で十分に間に合う年代です。
そして何より、30代には時間があります。
月1万円でも、今日から始めた分だけ確実に積み上がります。
わが家の優先順位と配分を、数字で設計しませんか
伊藤FPオフィスでは、ご家庭の収入・支出・ご希望をもとに、3大資金の配分を具体的な金額で設計しています。
特に住宅の予算については、教育費が重なる年の家計まで確認したうえでお伝えしています。
金融商品も保険も販売していません。
どれかを売るための試算ではないので、率直な数字をお見せできます。
- 現状の家計・収支の整理と、3大資金の配分設計
- 教育費が重なる年の家計確認(キャッシュフロー表の作成)
- その年を乗り切れる住宅予算の試算
- 保険の過不足チェック
- 新NISA・iDeCoの位置づけの整理
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 貯蓄がほとんどない30代です。もう手遅れですか?
手遅れではありません。30歳なら老後まで30年、35歳でも25年あります。月1万円の積立でも、30年続ければ583万円(年3%で運用できた場合)になります。まず固定費の見直しで月1万〜2万円を作り、生活防衛資金→教育資金と老後資金の並行積立、という順に進めてください。5年もあれば、家計の姿は大きく変わります。
Q. 住宅の頭金と教育資金、どちらを優先すべきですか?
教育資金を優先してください。住宅は頭金がなくても借りられますが、教育費は借りると子どもの負担(奨学金)になります。しかも第二種奨学金の利率は2026年に上限の年3.0%まで上がりました。順番としては、生活防衛資金→教育資金→残りを頭金へ、という形が安全です。ただし諸費用(物件価格の6%前後)だけは、現金で用意しておく必要があります。
Q. iDeCoと新NISA、30代はどちらを優先すべきですか?
新NISAを軸にすることをおすすめします。iDeCoは掛金が全額所得控除になる強力な制度ですが、原則60歳まで引き出せません。教育費や住宅資金と重なる30代では、この制約が重くなることがあります。まず新NISAで自由に使える資産を作り、余裕がある分をiDeCoに回す。この順番のほうが扱いやすいはずです。なお2027年1月からiDeCoの上限が広がりますが、上限が増えたからといって満額を入れる必要はありません。
Q. 老後2,000万円問題は、結局どうなったのですか?
計算の前提が変われば、金額も変わります。総務省の家計調査2025年平均で計算すると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の不足は月42,435円。20年で1,018万円です。ただしこの統計に含まれる世帯の持ち家率は95.5%で、住居費がほとんどかかりません。賃貸で老後を迎えるなら、家賃分として20年で1,440万円ほどが上乗せされ、合計は2,458万円になります。「2,000万円」という数字より、ご自身が持ち家か賃貸かのほうが影響は大きいということです。
Q. 3つ同時は無理です。1つに絞るなら何ですか?
「生活防衛資金→教育資金」の順です。ただし老後資金も、月5,000円だけでも仕組みを作っておくことをおすすめします。金額は後から増やせますが、始めていない期間は取り戻せないためです。30歳から月5,000円を続ければ、60歳時点で292万円(年3%で運用できた場合)になります。40歳から始めて同じ額にするには、月2万円近くが必要です。
Q. 共働きですが、優先順位の考え方は変わりますか?
基本の考え方は同じですが、2つ注意点があります。ひとつは、育休・時短で収入が下がる期間があることです。妻が年収400万円で1年間育休を取ると、世帯手取りは年92万円ほど減ります。もうひとつは、共働きの世帯年収で住宅ローンの上限まで借りると、片働きに戻ったときに返済が重くなることです。「片働きに戻っても住居費が手取りの30%以内に収まるか」を確認しておいてください。
Q. 30代のうちに、住宅は買ったほうがいいですか?
一概には言えません。判断の材料は3つあります。1つ目は、同じ場所に長く住む見通しがあるか(売却まで考えた損益分岐は約27年です)。2つ目は、51歳前後の教育費のピークでも返済を続けられる借入額に収まるか。3つ目は、老後の住居費です。持ち家か賃貸かで、必要な老後資金が1,440万円変わります。この3つをご家庭の数字で確認したうえで判断してください。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。30代のご相談では、平均値ではなくご家庭の数字で「何歳が一番苦しいか」を先に特定し、そこから逆算して配分をご提案しています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均」
・文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
・文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
・厚生労働省・国民年金基金連合会「iDeCo制度改正」(2026年12月1日施行予定)
【注意事項】
本記事の金額はいずれも試算・目安であり、ご家庭の状況によって大きく異なります。老後資金の試算は、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均値(持ち家率95.5%)をもとにしたものです。実際の年金額は加入歴によって異なり、賃貸の場合の上乗せ額も家賃水準によって変わります。運用に関する試算は想定利回りによるもので、将来の成果を保証するものではありません。iDeCoの制度改正は施行予定の内容であり、詳細は今後変わる可能性があります。拠出限度額・節税額はご家庭の所得状況や加入している年金制度によって異なるため、最新の情報は厚生労働省または金融機関のサイトでご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの購入や契約を勧めるものではありません。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

