「共働きなのに、なぜかお金が貯まらない」
ご夫婦での相談で、最もよく聞く言葉です。
実は共働き世帯は、同じ世帯年収の片働きより手取りが多くなります。
有利な条件で始まっているのに貯まらないのには、はっきりした理由があります。
- 同じ世帯年収850万円でも、共働きのほうが手取りは年33.7万円多いです
- 貯まらない最大の原因は「相手が貯めているはず」という思い込みです
- 育休に入ると世帯の手取りは年92万円減ります。住民税は払い続けます
- ペアローンなら、住宅ローン控除を13年で113万円多く使えます
この記事では、5つの家計管理パターンの比較に加えて、育休中の収入とペアローンの損得を数字で整理します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 共働きで、家計の分担方法に迷いがある
- 世帯収入はあるはずなのに、貯蓄が増えていない
- 別財布のままでいいのか不安を感じている
- 出産・住宅購入を機に、家計の形を見直したい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
共働きは、同じ世帯年収でも手取りが多い
まず、共働きの構造上の強みを確認しておきます。
世帯年収850万円を、2つの形で比べてみます。
669.0 万円
世帯の手取り年収
635.3 万円
世帯の手取り年収
共働きのほうが年33.7万円多く残ります
※ 2026年の税制・協会けんぽ(東京都)の料率・40歳未満で計算した試算です。片働きの場合は配偶者控除を適用しています。各種控除の適用状況によって金額は異なります。
理由は2つあります。
ひとつは所得税の累進課税です。
収入が高いほど税率が上がるため、1人で850万円稼ぐより、2人で425万円ずつ稼ぐほうが税率が低く抑えられます。
もうひとつは基礎控除や給与所得控除が2人分使えることです。
つまり共働き世帯は、スタート地点で有利です。
それなのに貯まらないとしたら、原因は収入ではなく管理の仕組みにあります。
FP伊藤ご夫婦での相談で最初に伺うのが、世帯の貯蓄総額です。
共働きの方ほど、この質問に即答できないことが多いのです。
自分の残高は分かっても、相手の分を知らないためです。
まずここを合算してみるところから、話を始めています。
家計管理の5パターン——貯まる形と貯まらない形


共働きの家計管理は、大きく5つに分けられます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
大切なのは「どれが正解か」ではありません。
ご夫婦ともに納得できて、貯蓄の目標を達成できる形を選ぶことです。
貯まらない共働き家計に共通する3つのこと
パターンにかかわらず、貯まらない家計には共通点があります。
- お互いの収入・貯蓄額を知らない — 「相手が貯めているはず」という思い込みで、実は誰も貯めていない
- 世帯としての貯蓄目標がない — 目標がないので、収入が増えた分だけ支出も増えていく
- 2人分あるという油断 — 外食・レジャー・サブスクが、それぞれ少しずつ膨らんでいく
最も多いのは、1つ目です。
産休・育休に入るとき、あるいは住宅購入を考えるときになって「貯蓄がほとんどない」と分かり、慌てて相談に来られるご夫婦は少なくありません。収入が多い共働きだからこそ、仕組みで貯める設計が必要です。
逆に言えば、仕組みさえ整えれば結果は大きく変わります。
世帯手取り669万円のご家庭で、貯蓄率が6%か20%かの違いを考えてみてください。
| 貯蓄率 | 年間の貯蓄額 | 10年後 | 20年後 |
|---|---|---|---|
| 6%(仕組みなし) | 40万円 | 401万円 | 803万円 |
| 12% | 80万円 | 803万円 | 1,606万円 |
| 20%(先取りの仕組みあり) | 134万円 | 1,338万円 | 2,676万円 |
※ 世帯手取り年669万円(夫450万円+妻400万円)を前提とした試算です。運用は考慮していません。
10年で937万円の差です。
収入が同じでも、仕組みの有無でこれだけ変わります。
育休で世帯の手取りは年92万円減る
共働き家計で最も大きな変化が起きるのが、出産と育休の時期です。
ここを数字で押さえておくと、住宅購入の判断も変わってきます。
妻(年収400万円)が育休を取る場合で見ていきます。
※ 出生後休業支援給付金は、両親がともに14日以上の育児休業を取得することなどが条件です。また賃金日額に上限があるため、収入が高い方は給付額が頭打ちになります。詳しい要件はハローワークでご確認ください。
育休1年間で妻が受け取る額は、合計で約241万円。
育休前の手取り年収316万円に対して、76%の水準です。
「7割以上もらえるなら大丈夫」と思われるかもしれません。
けれども、ここに落とし穴があります。
育休中も、住民税は払い続けます
育児休業給付金は非課税です。
社会保険料も免除されます。
けれども住民税だけは、払い続けなければなりません。
住民税は前年の所得に対してかかる仕組みだからです。
働いていた年の所得に基づく住民税を、収入が減った育休中に納めることになります。
年収400万円なら、年17.7万円。月あたり1.47万円です。
しかも、給与天引きではなくなるため、自分で納付する必要があります。
育休に入ると給与の支払いが止まるため、住民税は原則として自分で納める形になります(勤務先によっては、復職後にまとめて天引きする対応もあります)。納付書が届いて初めて気づく方が多い費用です。育休に入る前に、勤務先に扱いを確認しておいてください。
住民税を差し引くと、妻が実際に手にするのは約223万円。
世帯全体では、こうなります。
年92万円のマイナス(月あたり7.71万円)
※ 夫450万円・妻400万円の世帯で、妻が1年間育休を取得した場合の試算です。給付額は概算であり、実際の支給額は標準報酬月額や取得日数によって異なります。
月あたり7.71万円の減少です。
これは住宅ローンの返済額に匹敵する金額です。
住宅ローンを組む前に、この期間を織り込んでください
共働きの世帯年収で審査を通し、その上限近くまで借りるご夫婦がいらっしゃいます。
けれども第一子・第二子の育休期間は、世帯収入が下がります。
お子さまを2人予定しているなら、合計で2年前後の収入減の期間があるということです。
その期間も返済を続けられるかを、借入額を決める前に確認しておきましょう。
なお、育休の期間中は貯蓄のペースを落として構いません。
大切なのは、その期間があることを事前に知っておくことです。
知っていれば、育休前に予備の資金を用意しておけます。
目安として、収入減の総額(年92万円×取得年数)を産休に入る前に準備できていれば安心です。
ペアローンか、単独ローンか——控除で113万円の差
共働きで住宅を購入するとき、必ず出てくるのがこの選択です。
判断の材料になる数字を整理します。
| 条件 | ペアローン | 収入合算(連帯保証型) | 単独ローン |
|---|---|---|---|
| 契約の本数 | 2本(夫婦それぞれ) | 1本 | 1本 |
| 住宅ローン控除 | 2人とも使える | 主債務者のみ | 本人のみ |
| 団体信用生命保険 | 2人とも加入 ただし亡くなった側の分だけ消える | 主債務者のみ | 本人のみ |
| 借入可能額 | 大きくできる | 大きくできる | 1人分 |
| 諸費用 | 2件分かかる | 1件分 | 1件分 |
住宅ローン控除は、納めた税金の範囲でしか戻りません
ここが見落とされやすいポイントです。
住宅ローン控除は「年末のローン残高×0.7%」で計算されます。
けれども納めた税金を超えて戻ることはありません。
年収別に、使える控除の枠を計算しました。
| 年収 | 所得税 | 住民税から控除できる上限 | 使える控除枠 | 使い切れる借入額 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 7.9万円 | 9.75万円 | 年17.7万円 | 約2,525万円 |
| 450万円 | 9.6万円 | 9.75万円 | 年19.3万円 | 約2,763万円 |
| 500万円 | 12.6万円 | 9.75万円 | 年22.3万円 | 約3,188万円 |
※ 扶養家族がいない場合の試算です。住民税からの控除は所得税から控除しきれなかった分について、課税総所得金額等の5%(上限9.75万円)まで適用されます。
では、夫(年収450万円)が4,000万円を1人で借りたらどうなるでしょうか。
この差は年8.7万円。控除が続く13年間で約113万円になります
※ 控除率0.7%、借入額に対する控除上限は住宅の種類によって異なります。本試算は借入額全額が控除の対象になる場合の計算です。実際の控除額はご家庭の所得状況・住宅の性能によって変わるため、国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。
ペアローンにすると、諸費用が2件分かかります。
印紙税が2万円×2、抵当権設定登記の司法書士報酬も2件分。
合わせて10万〜15万円ほどの上乗せです。
控除のメリット113万円と比べれば、十分に見合う金額と言えます。
ただし、ペアローンには重要なリスクがあります
それは団体信用生命保険の効き方です。
ペアローンでは、夫婦それぞれが団信に加入します。
けれども万が一のとき、消えるのは亡くなった側のローンだけです。
妻の1,800万円は残る
月5.10 万円
返済が続きます
すべて消える
0 円
返済はなくなります
ペアローンを選ぶなら、この点への備えが必要です。
遺された側のローン残高に相当する死亡保障を、別途、生命保険で用意しておく方法が一般的です。
- 控除を使い切れるか — 1人の税額で足りるなら、単独ローンでも損はしません
- 離婚したときの扱い — 契約が2本あるため、単独より整理が複雑になります
- どちらかが働けなくなったら — 収入が減っても、2本の返済は続きます
- 遺された側の返済に備えているか — 生命保険で不足分を補う設計が必要です



ペアローンは、控除のメリットだけで判断されがちです。
けれども実務で重いのは、団信と離婚時の扱いのほうです。
特に「妻が仕事を辞めたくなったとき、返済が縛りになる」という点は、契約前によく話し合っておいてください。
選択肢を残しておくことも、家計の安全性のひとつです。
貯まる共働き家計にする3つのルール


最後に、どのパターンを選ぶ場合でも共通する3つのルールをお伝えします。
この3つが機能していれば、管理方法は何でも構いません。
公平感が、いちばん大事です
共働き家計のもめごとは、金額そのものより不公平感から生まれます。
次の4点を意識しておくと、無用な衝突を避けられます。
- 拠出は「同額」ではなく「収入比」で — 収入差があるのに同額拠出だと、低い側に不満が溜まります
- こづかいの使い道には口を出さない — 自由なお金があることが、家計への協力の潤滑油になります
- 大きな買い物のルールを決めておく — 「◯万円以上は事前に相談」と基準を明文化します
- お互いの口座・保険の情報を共有しておく — 万が一のとき、家族が困らないためです
ライフイベントごとに、形を見直す
共働きの家計管理は、一度決めたら終わりではありません。
収入バランスが変わるたびに、分担も見直す必要があります。
| タイミング | 見直すポイント |
|---|---|
| 妊娠が分かったとき | 育休中の収入減(年92万円前後)を試算し、予備資金を準備する |
| 育休・時短勤務 | 拠出額を収入比に合わせて調整する。育休側の拠出を下げる |
| 復職・昇給 | 増えた手取りの半分を、共通の積立に上乗せする |
| 住宅購入 | ペアローンか単独かを、控除・団信・働き方の見通しで判断する |
| 子どもの進学 | 教育費の増加期に向けて、貯蓄の配分を組み替える |
人生全体のお金の流れを整理する方法は、こちらでまとめています。


まとめ|共働きは、仕組みさえ作れば最強の家計です


共働きは、正しく仕組みを作れば最も強い家計の形です。
方法の優劣ではなく、見える化・先取り・目標共有の3つが機能しているかどうか。
そして、収入バランスが変わるたびに形を見直すこと。
この2点さえ押さえていれば、どのパターンを選んでも大丈夫です。
わが家に合う形を、ご夫婦で確認しませんか
伊藤FPオフィスでは、ご夫婦の収入バランスとライフプランをもとに、家計管理の形と住宅予算を一緒に設計しています。
育休中の収入減を織り込んだ試算、ペアローンと単独ローンの比較まで、数字でお見せします。
ご夫婦そろってのご参加をおすすめしています。
第三者を交えると、感情的にならずに数字で話せるためです。
- 共働き世帯の収支整理と、ご夫婦に合う管理パターンの提案
- 産休・育休の収入減を織り込んだ住宅予算の試算
- ペアローン・収入合算・単独ローンの比較(控除・団信・リスク)
- 教育費・老後資金との両立確認(キャッシュフロー表の作成)
- ご夫婦の保険の重複チェック
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 結局、どのパターンがおすすめですか?
迷ったら「定額拠出型+共通口座への自動積立」が始めやすい形です。収入比で拠出することで公平感を保ち、残りは各自の自由にすることでストレスも溜まりません。そのうえで先取り貯蓄を組み込めば、貯蓄も確保できます。この形から始めて、ご家庭に合わせて微調整していくのが現実的です。
Q. 夫婦別財布のままではダメですか?
2つの条件が満たされていれば問題ありません。「世帯の貯蓄総額をお互いが把握していること」と「共通口座への自動積立が機能していること」です。この2つがないまま別財布を続けると、数年後に貯蓄がほとんどないと分かるリスクが高くなります。自由度を保ちたいなら、この2点だけは組み込んでください。
Q. 育休中は、住民税も免除されますか?
免除されません。ここが見落とされやすい点です。育児休業給付金は非課税で、社会保険料も免除されます。けれども住民税は前年の所得に対してかかる仕組みのため、育休中も納める必要があります。年収400万円なら年17.7万円、月あたり1.47万円です。しかも給与天引きができなくなるため、自分で納付書で払う形になることが多くあります。育休に入る前に、勤務先に扱いを確認しておいてください。
Q. ペアローンと単独ローン、どちらがよいですか?
住宅ローン控除を使い切れるかで判断してください。年収450万円の方が使える控除枠は年19.3万円で、借入2,763万円分までです。これを超える借入をする場合、単独ローンでは控除を使い切れません。4,000万円を単独で借りると、13年間で約113万円分の控除を捨てることになります。一方、ペアローンは亡くなった側のローンしか団信で消えません。控除のメリットと、遺された側の返済リスクを比べて判断してください。
Q. 相手が家計の話し合いに乗ってくれません
「節約しよう」という切り口は身構えられがちです。「住宅を買うなら」「子どもの進学に向けて」「来年の旅行のために」といった前向きな目標の話から入ると、協力を得やすくなります。それでも難しい場合は、第三者を交えるのも方法のひとつです。FPが数字を示す形にすると、感情的にならずに話が進むことが多くあります。
Q. 共通口座は、どうやって作ればいいですか?
日本では夫婦の共同名義口座は作れないため、どちらか一方の名義で家計用の口座を作り、そこにお互いが振り込む形が一般的です。振込手数料が無料になる回数が多いネット銀行を選ぶと、毎月の手数料を抑えられます。共有できる家計簿アプリと組み合わせると、残高の確認も楽になります。
Q. 妻が退職して片働きになると、どのくらい変わりますか?
夫450万円・妻400万円の世帯を例にすると、世帯手取りは年669万円から353万円へ。約47%まで下がります。住宅ローンを共働き前提で組んでいる場合、この変化は非常に大きなものになります。退職を考える可能性があるなら、片働きになっても返済を続けられる金額に借入を抑えておくと安心です。目安は、片働き時の手取りに対して住居費が30%以内に収まることです。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。共働きのご夫婦の相談では、育休期間の収入減とペアローンの扱いを必ず数字で確認したうえで、借入額をご提案しています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・厚生労働省「育児休業給付」「出生後休業支援給付金」(2025年4月施行)
・国税庁「住宅借入金等特別控除」
・全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料額表
・国税庁「所得税の税率」「令和8年分以降の基礎控除」
【注意事項】
本記事の手取り額は、協会けんぽ(東京都)の料率・40歳未満・一般の事業を前提に計算した試算です。各種控除の適用状況によって実際の金額は異なります。育児休業給付金・出生後休業支援給付金の支給額は標準報酬月額や取得日数によって決まり、賃金日額には上限があるため、収入が高い方は給付額が頭打ちになります。出生後休業支援給付金には、両親がともに14日以上の育児休業を取得することなどの要件があります。住宅ローン控除の控除率・上限額は住宅の性能や入居年によって異なり、税制改正で変わることがあります。本記事の控除に関する試算は借入額全額が控除の対象になる場合の計算です。適用の可否と金額は、国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの購入や契約を勧めるものではありません。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

