「教育費が足りない。奨学金を借りるべきだろうか」
大学費用の準備で、多くのご家庭が直面する悩みです。
これまで奨学金は「金利が低いから、そこまで怖くない」と説明されてきました。
けれども2026年、その前提が大きく変わりました。
第二種奨学金の利率が、上限の年3.000%に達したのです。
- 第二種奨学金の利率は2年で2.6倍になり、2026年7月に上限の3.000%に達しました
- 240万円を借りると、利息は19万円から58万円に増えます
- 無理なく返せる借入上限は275万円程度(15年返済の場合)に下がりました
- 奨学金の返済は、将来の住宅ローンを約450万円分減らします
この記事では、最新の利率で返済を試算し直し、借りるべきかどうかの判断基準を整理します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 大学費用が足りず、奨学金の利用を検討している
- 借りたら毎月いくら・何年返すのかを正確に知りたい
- 給付型・無利子・有利子の違いを整理したい
- お子さまに無理な返済を背負わせたくない
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【2026年の変化】利率は2年で2.6倍になった

まず、事実から確認します。
日本学生支援機構が公表している、第二種奨学金の貸与利率の推移です。
ここでは「利率固定方式」の基本月額の数字を見ていきます。
※ 日本学生支援機構が公表する第二種奨学金の貸与利率(基本月額・利率固定方式)です。利率は貸与終了時の月の数字が適用されます。最新の利率は同機構のサイトでご確認ください。
わずか2年で、1.140%から3.000%へ。
約2.6倍です。
そして年3%は、法令で定められた上限にあたります。
この変化が、返済額にどう表れるかを見てみましょう。
| 借入総額 | 利率年1.0% (2024年以前の水準) | 利率年3.0% (2026年の水準) | 利息の増加 |
|---|---|---|---|
| 144万円(月3万円×4年) | 総額154万円 利息10万円 | 総額174万円 利息30万円 | +20万円 |
| 240万円(月5万円×4年) | 総額259万円 利息19万円 | 総額298万円 利息58万円 | +39万円 |
| 384万円(月8万円×4年) | 総額424万円 利息40万円 | 総額511万円 利息127万円 | +87万円 |
| 480万円(月10万円×4年) | 総額530万円 利息50万円 | 総額639万円 利息159万円 | +109万円 |
※ 144万円は13年、240万円は15年、384万円と480万円は20年で返還する場合の試算です。実際の返還年数は貸与総額に応じて定められています。
「奨学金は低金利だから大丈夫」という説明は、もう当てはまりません。
384万円を借りると、利息だけで127万円。これは軽自動車が1台買える金額です。数年前の記事の数字を、そのまま信じないでください。
FP伊藤ご相談でも、この変化に気づいていない方がほとんどです。
「奨学金の金利なんて、たかが知れているでしょう」とおっしゃいます。
けれども今は住宅ローンの変動金利より高い水準になりました。
借りる前に、必ずその時点の利率を確認してください。
無利子の第一種を、まず狙う価値が上がりました
利率が上がったことで、無利子である第一種奨学金の価値が高まっています。
240万円を借りる場合、第一種なら利息はゼロ。
第二種(年3.0%)なら58万円です。
同じ金額を借りても、58万円の差が生まれます。
第一種には学力・家計の基準がありますが、「どうせ無理だろう」と諦める前に、必ず条件を確認してください。
借入額別の返済シミュレーション


次に、卒業後の返済がどれくらいの負担になるかを見ます。
大卒の初任給の手取りを19万円と仮定した場合です。
※ 利率年3.0%・定額返還で計算した、返還額が手取り月収19万円に占める割合です。実際の返還額・期間は日本学生支援機構の規定によります。
無理なく返せる目安は、手取りの10%以内です。
手取り19万円なら、月1.9万円まで。
この基準を利率3.0%で計算し直すと、借入上限はこうなります。
| 返還期間 | 月1.9万円以内に収まる借入額 | 総返還額 |
|---|---|---|
| 15年で返す場合 | 約275万円まで | 約342万円 |
| 20年で返す場合 | 約343万円まで | 約456万円 |
※ 利率年3.0%で計算した目安です。返還期間は貸与総額によって定められており、自由に選べるわけではありません。
金利が1%だった頃は、300万円借りても月1.9万円に収まりました。
今は275万円が上限の目安になります。
借りられる額そのものは変わりませんが、無理なく返せる額は確実に下がったということです。
返済は「独身のうち」だけでは終わりません
240万円を借りると、返還期間は15年です。
22歳で卒業して返し始めると、完済は37歳。
結婚、出産、住宅購入。人生の大きな支出が重なる時期と、そのまま重なります。
「就職すれば返せる」ではなく、「30代でも払い続けている」という前提で考えてください。
見落とされがちな影響——将来の住宅ローンが減る
ここは、奨学金の記事ではあまり触れられない部分です。
けれども住宅購入の相談を受けていると、毎年のように直面する現実があります。
奨学金の返済は、住宅ローンの審査で「他の借入」として扱われます。
金融機関は、住宅ローンだけでなく、すべての借入の返済額を合計して「返済負担率」を計算します。
奨学金の返済があると、その分だけ住宅ローンに使える枠が減ります。
借入可能額が457万円減ります
※ 返済負担率35%・金利年1.5%・35年返済で計算した試算です。実際の審査では、金融機関ごとに審査金利や基準が異なります。
この減少額は、年収にかかわらずほぼ同じです。
| 奨学金の返済額 | 住宅ローンの借入可能額への影響 |
|---|---|
| 月1.0万円 | 約327万円のマイナス |
| 月1.4万円 | 約457万円のマイナス |
| 月2.0万円 | 約653万円のマイナス |
つまり、奨学金を月1.4万円返している方は、そうでない方より457万円少ない金額しか借りられないということです。
これは物件の選択肢に直結します。
希望のエリアで買えるかどうかが、変わってくる金額です。



住宅購入のご相談で、奨学金の返済を申告し忘れる方が時々いらっしゃいます。
けれども個人信用情報を照会すれば、金融機関には必ず分かります。
申告漏れは、それ自体が審査でマイナスに働きます。
最初から正直に伝えて、その前提で借入額を組み立てるほうが確実です。
延滞すると、住宅ローンが組めなくなることがあります
もうひとつ、必ず知っておいていただきたいことがあります。
奨学金の返還を3ヶ月以上延滞すると、個人信用情報機関に登録されます。
いわゆる「信用情報に傷がつく」状態です。
延滞の記録は、返還が終わってから5年間残ります。
この期間中は、住宅ローン・自動車ローン・クレジットカードの審査に大きく影響します。22歳から返し始めて途中で延滞すると、30代の住宅購入に響くことがあります。
大切なのは、滞納する前に相談することです。
返還が難しくなったら、延滞になる前に日本学生支援機構へ連絡してください。
猶予や減額の手続きが承認されていれば、信用情報には登録されません。
借りる前に決めておく3つのこと
ここまでの内容をふまえて、借りる前に決めておくべきことを整理します。
① 検討の順番——給付型から確認する
奨学金には、性質の違う3種類があります。
必ずこの順番で検討してください。
(返済不要)
(無利子)
(有利子)
| 種類 | 内容 | 4年間で受け取れる額の例 |
|---|---|---|
| 給付型 | 国の修学支援新制度・大学独自・民間財団など。返済は不要です | 月75,800円×4年=約364万円 私立・自宅外・第I区分の場合 |
| 第一種(無利子) | 日本学生支援機構。学力と家計の基準があります | 月64,000円×4年=約307万円 私立・自宅外の最高月額 |
| 第二種(有利子) | 日本学生支援機構。基準が比較的緩く、利用者が最も多い | 月2万〜12万円から選択 月5万円なら4年で240万円 |
※ 給付型・第一種の金額と対象要件は、進学先の種別・通学形態・世帯の状況によって異なります。最新の条件は日本学生支援機構および進学先の窓口でご確認ください。
2025年度からは、扶養する子どもが3人以上の世帯への支援が拡充されました。
所得制限なしで授業料等が減免される制度です。
「うちは対象外だろう」と決めつけず、まず条件を確認してください。
② 利率固定方式か、利率見直し方式か
第二種を借りる場合、2つの方式から選びます。
2026年時点では、1ポイント以上の差があります。
同じ利率が続きます
3.000 %
2026年7月時点・上限
利率が見直されます
2.000 %
2026年7月時点
240万円を15年で返す場合、総額で20万円の差が出ます
※ 2026年7月時点の基本月額の利率です。利率見直し方式は約5年ごとに見直されるため、将来上がる可能性も下がる可能性もあります。どちらの方式も上限は年3%です。
固定方式は、いまの3.000%が完済まで続きます。
見直し方式は今は2.000%ですが、5年後に上がるかもしれません。
ただしどちらも上限は年3%なので、見直し方式が固定方式を上回ることはありません。
方式は、貸与が終わるときに変更できます
申込みのときに選んだ方式は、貸与が終了する時点で変更を申し出ることができます。
手続きは在学中の学校を通じて行い、期限があります。
大学4年生の秋ごろに、日本学生支援機構から案内が届きます。
見逃さないよう、お子さまにも伝えておいてください。この1回の判断で、総返還額が数十万円変わります。
③ 必要額から逆算して借りる
最も多い失敗が、「借りられる上限まで借りてしまう」ことです。
正しい順番は、不足額からの逆算です。
- 大学4年間の総費用を見積もる — 学費に加えて、下宿するなら生活費も含めます
- 家庭で出せる額を確定する — 貯蓄額と、在学中に家計から出せる年間の金額
- 給付型・授業料減免の対象か確認する — 該当する場合はその金額を差し引きます
- 残った不足額「だけ」を借りる — 貸与月額は1万円単位で選べます
日本学生支援機構の貸与月額は、途中で減額・増額の変更もできます。
「とりあえず多めに」ではなく「必要な分だけ」。
この判断が、卒業後の10年以上を軽くします。
そして最も大切なのは、お子さま本人が返済額を理解していることです。
債務者は保護者ではなく、お子さま本人です。「月いくらを何歳まで返すのか」を、この記事の試算表を見ながら一緒に確認してください。本人が納得して借りることが、延滞を防ぐ最大の対策になります。
返済が苦しくなったときの制度


借りる前に、返せなくなった場合の制度も知っておきましょう。
知っているだけで、いざというときの行動が変わります。
いずれも、申請しなければ適用されません。
返せないまま放置すると、延滞金が加算され、信用情報にも登録されます。
収入が減って苦しくなったら、まず日本学生支援機構に連絡してください。
就職先を選ぶとき、返還支援制度の有無も見てください
企業が社員の奨学金を代わりに返還する制度が広がっています。
日本学生支援機構のサイトに、導入企業の一覧が公開されています。
年間で十数万円を支援する企業もあり、実質的な収入の上乗せとして無視できません。
就職活動の段階で、確認する価値のある項目です。
親ができる最大の支援は、早く準備を始めること
ここまで奨学金の話をしてきましたが、FPとしてお伝えしたい本質はひとつです。
お子さまの借入額は、親の準備の早さで決まります。
児童手当をすべて貯めれば、高校卒業までに約234万円。
そこに月1万円の積立を0歳から加えれば、さらに216万円。
合わせて450万円になります。
この金額があれば、多くの進路で奨学金を借りずに済みます。
逆に準備がなければ、お子さまは384万円を借りて、20年かけて511万円を返すことになります。
準備した分だけ、お子さまの負担が減る。
この関係は、とてもはっきりしています。
学資保険という商品そのものについては、こちらで解説しています


まとめ|借りるなら、最新の利率で計算してください
奨学金は、進学を実現するための大切な制度です。
「借りるべきではない」という話ではありません。
けれども金利のある世界に戻った今、数年前と同じ感覚で借りるのは危険です。
借りる前に、その時点の利率で必ず計算してください。
そして、その数字をお子さまと共有してください。
奨学金に頼らず準備できるか、確認しませんか
伊藤FPオフィスでは、お子さまの進路希望をもとに、「いくら準備すれば奨学金を借りずに済むか」を試算しています。
借りる場合も、適正な金額と卒業後の返済額を具体的にお見せします。
そして住宅購入をお考えなら、お子さまの奨学金がご自身のローンにどう影響するかも整理できます。
- 現状の家計・収支の整理
- 大学費用の見積もりと、奨学金に頼らないための積立プラン
- 借りる場合の適正額と、最新の利率での返済シミュレーション
- 既存の借入を織り込んだ住宅ローンの借入可能額の試算
- キャッシュフロー表による大学入学年の家計確認
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 奨学金を借りるのは「かわいそう」なことですか?
一概にそうとは言えません。大学進学によって生涯収入が増えることを考えれば、適正な額の奨学金は合理的な選択です。問題になるのは「必要以上に借りること」と「本人が返済額を知らずに借りること」の2つです。本文の試算表を親子で見ながら「月いくらを何歳まで返すのか」を共有すれば、前向きな判断にできます。
Q. 利率が3%まで上がったなら、借りないほうがいいですか?
それだけで判断する必要はありません。進学を諦めることによる機会損失のほうが、多くの場合は大きいためです。ただし、借入額の上限は見直すべきです。手取りの10%以内という基準で計算すると、15年返済なら約275万円が目安になります。この範囲に収まるよう、給付型・第一種の活用と家庭からの拠出を組み合わせてください。
Q. 利率固定方式と利率見直し方式、どちらを選ぶべきですか?
2026年7月時点では、固定方式が3.000%(上限)、見直し方式が2.000%です。どちらも上限は年3%と定められているため、見直し方式が固定方式を上回ることはありません。この点だけを見れば見直し方式が有利ですが、5年ごとに利率が変わるため返済額が読みにくくなります。なお、方式は貸与が終了する時点で変更を申し出ることができます。大学4年生の秋に案内が届きますので、見逃さないようにしてください。
Q. 奨学金を返済中でも、住宅ローンは組めますか?
組めます。ただし借入可能額は下がります。奨学金の返済額は住宅ローンの審査で「他の借入」として返済負担率に算入されるためです。月1.4万円の返済がある場合、借入可能額は約457万円下がる計算になります(返済負担率35%・金利1.5%・35年で試算)。申告しないという選択肢はありません。個人信用情報を照会すれば金融機関には分かりますし、申告漏れ自体が審査でマイナスに働きます。
Q. 奨学金と教育ローン、どちらを使うべきですか?
性質が違います。奨学金(貸与型)はお子さまが借りて卒業後に返す制度、教育ローンは保護者が借りてすぐ返済が始まる制度です。最大の違いは「誰が返すか」です。また奨学金は入学後に振り込まれるため、入学前に必要な入学金・前期授業料には間に合いません。入学前のまとまった資金は教育ローン、在学中の学費は奨学金、という併用も一般的です。なお、日本政策金融公庫の教育ローンの金利も上昇傾向にあるため、どちらを使う場合も最新の金利で比較してください。
Q. 親が代わりに返してもいいのですか?
実際に保護者が返済を支援するご家庭もあります。ただし、その予定があるなら最初から借入額を抑えるか、保護者名義の教育ローンと比較して有利なほうを選ぶほうが合理的な場合があります。また、贈与税の扱いにも注意が必要です(扶養義務者からの生活費・教育費の援助は原則非課税ですが、金額や方法によって扱いが変わることがあります)。気になる場合は税務署か税理士にご確認ください。
Q. 給付型奨学金は、どうやって調べればいいですか?
3つのルートがあります。まず国の高等教育の修学支援新制度は、日本学生支援機構のサイトでシミュレーションができます。次に大学独自の給付型奨学金は、志望校の募集要項や学生支援窓口で確認します。最後に民間財団の奨学金は、高校の進路指導室に情報が集まっていることが多いです。いずれも申込みの期限が早いものがあるため、高校2年生の段階から調べ始めると余裕を持てます。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。住宅ローンの相談を通じて、奨学金の返済が借入可能額に与える影響を数多く見てきました。借りる段階から、その先の暮らしまで見据えてお伝えしています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・日本学生支援機構「第二種奨学金の貸与利率」および貸与利率の推移
・日本学生支援機構「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」
・文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
【注意事項】
本記事の返還額はすべて試算であり、実際の利率・返還月額・返還年数は日本学生支援機構の規定および貸与終了時の条件によって決まります。貸与利率は毎月変動し、本記事に記載した数字は基本月額・利率固定方式のものです(増額分は0.2ポイント程度高くなります)。住宅ローンの借入可能額の試算は、返済負担率35%・金利年1.5%・35年返済を前提としたもので、実際の審査基準・審査金利は金融機関によって異なります。給付型奨学金・修学支援新制度の要件と金額は改正されることがあるため、最新の情報は日本学生支援機構・文部科学省・進学先の窓口でご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの購入や契約を勧めるものではありません。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

