「教育資金は学資保険で貯めるべき?それとも新NISA?」
お子さまが生まれたご家庭から、最も多くいただく質問のひとつです。
多くの記事は「確実性の学資保険」対「増える力の新NISA」という対立で説明します。
けれども実際に計算してみると、この2つだけで比べるのは、もう時代に合っていません。
- 学資保険の返戻率105%は、年利に直すとわずか0.27%です
- 金利が上がった今、「確実に貯める」なら個人向け国債という選択肢もあります
- 新NISAの下落リスクは、入学5年前から現金化すれば97万円分を守れます(試算)
- 2026年分は子育て世帯の生命保険料控除が拡充されています
この記事では、6つの貯め方を同じ条件で試算し、それぞれの本当の実力を数字で比べます。
こんな方に読んでほしい記事です
- お子さまが生まれて、教育資金の準備を始めたい
- 学資保険と新NISA、どちらが増えるのか具体的な金額で知りたい
- 投資は不安だが、学資保険では増えない気もしている
- 中立な意見を聞きたい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【試算】月1.5万円を18年——6つの方法で比べる

0歳から18歳まで、毎月1.5万円を積み立てる場合で計算します。
積み立てる元本は、324万円です。
※ 月1.5万円を18年間積み立てた場合の試算です(元本324万円)。学資保険の返戻率は商品・加入年齢・払込期間によって大きく異なります。新NISAの利回りは想定であり、将来の成果を保証するものではありません。個人向け国債の利率は発行時期によって変わります。
並べてみると、はっきりすることがあります。
学資保険(返戻率105%)と定期預金の差は、18年でわずか4万円です。
一方、個人向け国債は学資保険を上回っています。
金利が上がったことで、比較の前提が変わりました
数年前まで、日本の金利はほぼゼロでした。
その頃は「元本が減らずに少しでも増える」という理由で、学資保険が有力な選択肢でした。
けれども2026年現在、個人向け国債の金利は年1.7%台まで上がっています(変動10年・2026年6月時点)。
金利が上がると、学資保険の返戻率も改善します。実際に110%を超える商品も出てきました。
大切なのは、今の金利水準で比べ直すことです。数年前の記事の数字を、そのまま信じないでください。
ただし、学資保険には国債にも預金にもない機能があります。
それが保険料払込免除です。
契約者(多くは親)に万が一のことがあった場合、それ以降の保険料を払わなくても、満期金は満額受け取れます。
この保障をどう評価するかが、選び方の分かれ目になります。
学資保険の「本当の利回り」を分解する

「返戻率105%」と聞くと、5%増えるように感じます。
けれどもこれは、18年かけて5%という意味です。
年利に直すと、年0.27%にしかなりません。
| 返戻率 | 18年後の受取額 | 増える金額 | 年利に直すと |
|---|---|---|---|
| 100% | 324万円 | 0円 | 0.00% |
| 105% | 340万円 | 16万円 | 年0.27% |
| 110% | 356万円 | 32万円 | 年0.53% |
| 115% | 373万円 | 49万円 | 年0.78% |
※ 元本324万円(月1.5万円×18年)に対する試算です。実際の返戻率は商品・加入年齢・払込期間・受取方法によって大きく異なります。
返戻率という表示は、実力より大きく見えやすい数字です。
比べるときは、必ず年利に直してから判断してください。
生命保険料控除を入れると、実質の利回りは上がります
学資保険には、もうひとつ見落とされがちなメリットがあります。
生命保険料控除です。
払った保険料の一部が所得から差し引かれ、その分だけ税金が軽くなります。
そして2026年分は、子育て世帯の控除枠が広がりました。
23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の所得税の上限が4万円から6万円に引き上げられています。
※ 2026年分の拡充措置を適用した場合の試算です(所得税の控除上限6万円・住民税2.8万円)。この措置は年分を限った措置であり、その後の扱いは今後の税制改正によります。実際の控除額・軽減額はご家庭の所得状況によって異なります。詳しくは国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。
所得税率20%の世帯なら、18年で約19万円。
これは元本324万円の6%にあたります。
つまり、返戻率105%の学資保険が、実質111%相当になる計算です。
この効果は、意外と語られていません。
ただし、すでに他の生命保険で控除枠を使い切っている場合、上乗せの効果はありません。
生命保険料控除の「一般」の枠は、死亡保険・終身保険・学資保険で共有します。すでに年8万円以上の保険料を払っているなら、学資保険を足しても控除は増えません。
FP伊藤控除の枠がすでに埋まっているかどうかは、年末調整の書類で確認できます。
「生命保険料控除証明書」に書かれた金額を合計してみてください。
一般の区分で年8万円を超えていれば、その枠はもう上限に達しています。
この確認をせずに「控除があるから学資保険が有利」と判断すると、あてが外れます。
途中でやめると、確実性は消えます
学資保険の「確実性」は、満期まで払い切ることが前提です。
途中で解約すると、戻ってくるお金は払った額を下回ります。
| 解約する時期 | それまでに払った額 | 戻ってくる目安 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 3年で解約 | 54万円 | 約38万円 | −16万円 |
| 5年で解約 | 90万円 | 約72万円 | −18万円 |
| 10年で解約 | 180万円 | 約162万円 | −18万円 |
| 15年で解約 | 270万円 | 約262万円 | −8万円 |
※ 一般的な傾向をもとにした目安です。実際の解約返戻金は商品・契約内容によって異なります。正確な金額は、契約している保険会社にご確認ください。
18年という期間の間に、家計が苦しくなることもあります。
転職、収入減、住宅ローンの負担、家族の病気。
「18年間、必ず払い続けられるか」を、契約前に一度考えてみてください。
月1.5万円が家計の限界なら、1万円に抑えて残りを別の方法で積むほうが安全です。
教育費は年2.2%で上がっている——確実性の代償
学資保険を選ぶ理由は、「元本が減らないから」です。
けれども、ここで考えておきたいことがあります。
「元本が減らない」ことと、「価値が減らない」ことは違います。
文部科学省の調査によると、公立の小中高の教育費は、この12年で434万円から561万円に上がりました。
年率に直すと2.16%の上昇です。
※ 文部科学省「子供の学習費調査」の平成24年度と令和5年度を比較した上昇率を、今後18年間も同じペースで続くと仮定した場合の試算です。実際の教育費の推移は、制度改正や物価の動向によって変わります。
今の感覚で「500万円あれば大丈夫」と考えても、18年後には735万円必要になっているかもしれない、ということです。
この上昇に追いつくには、返戻率147%の学資保険が必要になります。
現実には、そうした商品は存在しません。
これは「学資保険がダメ」という話ではありません
元本が減らないという安心は、確かな価値です。
相場の値動きに一喜一憂せずに済むことは、子育て中の家計にとって大きな意味があります。
お伝えしたいのは、「確実性には、増えないという代償がある」という事実です。
どちらを選ぶかではなく、どちらの性質も理解したうえで組み合わせるのが現実的です。
新NISAの元本割れリスクは、数字で小さくできる


新NISAの最大の不安は、「使いたいときに下がっていたらどうしよう」です。
この不安は、実際に計算してみると輪郭がはっきりします。
下落が重なったら、いくらまで減るか
年3%で18年運用し、429万円になったとします。
その直後に相場が下がった場合の金額です。
| 大学入学の直前に | 年3%運用の場合 | 年5%運用の場合 |
|---|---|---|
| 下落なし | 429万円 | 524万円 |
| 10%下落 | 386万円 | 471万円 |
| 20%下落 | 343万円 | 419万円 |
| 30%下落 | 300万円 元本324万円を下回ります | 367万円 |
| 40%下落 | 257万円 | 314万円 |
※ 想定利回りで18年間積み立てた資産が、直後に下落した場合の試算です。実際の値動きを予測するものではありません。
30%の下落は、決して極端な想定ではありません。
過去にも同程度の下落は起きています。
そして下落のタイミングは選べません。
だから「入学の5年前から現金化する」——その根拠
よく「入学5年前から徐々に現金化しましょう」と言われます。
けれども、なぜ5年前なのか。
その効果はどれくらいなのか。
実際に計算してみました。
300 万円
元本324万円を下回ります
397 万円
元本を大きく上回ります
同じ下落が起きても、97万円の差が生まれます
※ 年3%で18年積み立て、最後の5年間で毎年5分の1ずつ現金化した場合の試算です。現金化した部分は年0.4%で運用したものとしています。
では、この方法にコストはないのでしょうか。
あります。下落しなかった場合、運用を続けたほうが増えるからです。
| 現金化しない | 5年かけて現金化 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 下落しなかった場合 | 429万円 | 402万円 | −27万円 |
| 直前に30%下落した場合 | 300万円 | 397万円 | +97万円 |
整理すると、こうなります。
27万円の機会損失と引き換えに、97万円の下落リスクを避けられる。
しかも、必ず必要になるお金です。
入学の年に「相場が戻るまで待つ」という選択肢はありません。
この非対称さが、段階的な現金化をおすすめする理由です。



教育資金と老後資金では、この判断が変わります。
老後資金なら、下がっている年は取り崩しを控えるという選択ができます。
けれども大学の入学金は、その年に必ず必要です。
「使う時期を動かせないお金」ほど、早めに安全な場所へ移しておいてください。
新NISAの非課税メリットは、いくらになるか
あわせて確認しておきたいのが、税金の話です。
通常、運用で得た利益には20.315%の税金がかかります。
新NISAなら、これがかかりません。
| 想定利回り | 18年後の利益 | 課税口座なら税金 | 新NISAなら |
|---|---|---|---|
| 年3% | 105万円 | 約21万円 | 0円 |
| 年5% | 200万円 | 約41万円 | 0円 |
利益が出るほど、非課税の効果は大きくなります。
教育資金のように18年という長い期間で積み立てる場合、この差は無視できません。
わが家はどう組み合わせるか——2階建ての設計


ここまでの内容をふまえると、答えは「どちらか一方」ではありません。
実務でおすすめしているのは、2階建ての考え方です。
新NISAで積み立て、入学の5年前から段階的に現金化していきます。
使わなければ、そのまま老後資金に回せます。
児童手当の全額貯蓄を土台に、学資保険・個人向け国債・定期預金などを組み合わせます。
相場に左右されない部分です。
この設計の利点は、はっきりしています。
相場が悪くても、「大学に行かせられない」という事態は起きません。
1階部分が守られているからです。
そして相場が良ければ、2階部分が選択肢を広げてくれます。
児童手当をすべて貯めると、高校卒業までに約234万円になります。
1階部分は、これだけでもかなりの水準まで届きます。
ご家庭のタイプ別に見た向き不向き
配分の比率は、ご家庭の状況によって変わります。
1元本割れは絶対に避けたい・投資が不安な方
1階を厚くしてください。
児童手当の全額貯蓄に加えて、学資保険や個人向け国債で確実に積み上げます。
ただし、教育費の上昇には追いつかない点は理解しておきましょう。
その分、毎月の積立額を多めに設定して補います。
2共働きで、収入の柱が2本ある方
2階を厚くできます。
片方に万が一のことがあっても、もう片方の収入で積立を続けられるためです。
学資保険の払込免除という保障の価値は、相対的に小さくなります。
その分を新NISAに回すほうが、期待値は高くなります。
3片働きで、契約者に万が一の備えをしたい方
学資保険の払込免除が活きる場面です。
ただし、収入保障保険など他の保険でも同じ備えはできます。
「保障」と「貯蓄」を分けたほうが、それぞれ効率よく設計できるケースも多くあります。
すでに死亡保障に入っているなら、学資保険で重ねる必要があるか確認してみてください。
4貯蓄が苦手で、強制力がほしい方
学資保険の「解約しにくさ」は、この場合むしろ長所になります。
ただし新NISAでも、給与振込口座からの自動積立を設定すれば、同じ効果はある程度作れます。
大事なのは、手を動かさなくても積み上がる仕組みを作ることです。
どの方法を選んでも、「始めること」が最も効果があります。
月1万円を18年積み立てれば216万円ですが、8年遅れて10年で積むと120万円にしかなりません。商品選びで迷っている間にも、時間だけは減っていきます。
学資保険という商品そのものについては、こちらで解説しています


まとめ|対立ではなく、役割の違う道具です


学資保険と新NISAは、対立するものではありません。
性質の違う道具です。
金づちとドライバーのどちらが優れているかを比べても、答えは出ません。
何を守りたいのかを決めてから、道具を選んでください。
わが家の配分を、数字で決めませんか
伊藤FPオフィスでは、ご家庭の収入・支出・進路希望をもとに、1階と2階にいくらずつ配分するかを具体的な金額で設計しています。
保険商品も投資信託も販売していません。
どれかを売るための試算ではないので、率直な数字をお見せできます。
- 現状の家計・収支の整理
- 進路希望別の教育費見積もりと、1階・2階の配分設計
- すでに加入している保険の控除枠の確認
- 教育費と住宅ローンが重なる年のキャッシュフロー確認
- 児童手当・支援制度を織り込んだ資金計画
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 結局、どちらから始めるべきですか?
まず児童手当を別口座に自動で移す設定をしてください。これが最も確実で、手間もかかりません。そのうえで、上乗せ分をどうするかを考えます。お子さまが小さく(積立期間15年以上)、共働きで家計に余裕があるなら新NISA中心が合理的です。確実性を最優先したい方、片働きで保障も重視したい方は、1階部分を厚くする形が安心です。どちらか一方に全額ではなく、2階建てで考えることをおすすめします。
Q. すでに学資保険に入っています。解約して新NISAに移すべきですか?
安易な乗り換えはおすすめしません。中途解約すると、多くの場合は払った額を下回ります。判断するには、契約している保険会社に「今の解約返戻金」「残りの払込総額」「満期の受取額」の3つを確認してください。この3つが分かれば、これから先の実質利回りが計算できます。続けながら新NISAを上乗せするほうが合理的なケースが多くあります。
Q. 個人向け国債は、教育資金に向いていますか?
選択肢のひとつとして検討する価値があります。国が発行する債券で、元本割れせず、金利水準に応じて利息が変わります(変動10年型の場合)。2026年6月時点で年1.7%台まで上がっており、返戻率105%の学資保険を上回る水準です。ただし発行から1年間は原則として換金できず、途中で換金すると直前2回分の利息が差し引かれます。また保険料払込免除のような保障はありません。目的に合うかどうかで判断してください。
Q. 新NISAで教育資金を貯める場合、何に投資すればいいですか?
特定の商品をおすすめする立場ではないため、考え方だけお伝えします。使う時期が決まっているお金では、広く分散されたインデックスファンドでの積立が基本形とされています。そして最も大切なのが、入学の5年前頃から段階的に現金化していくことです。本文の試算のとおり、これだけで下落時に約97万円の差が生まれます。商品選びより、現金化の計画のほうが結果への影響は大きいと考えています。
Q. 2026年の生命保険料控除の拡充は、誰でも受けられますか?
23歳未満の扶養親族がいる方が対象です。一般生命保険料控除の所得税の上限が4万円から6万円に引き上げられました(2026年分)。ただし2012年1月1日以降に契約した保険(新制度)が対象で、住民税の上限は変わりません。また、すでに他の生命保険で年8万円以上の保険料を払っている場合、学資保険を足しても控除額は増えない点にご注意ください。詳しい要件は国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。
Q. 児童手当だけでは足りませんか?
全額を貯めれば、高校卒業までに約234万円になります(2024年10月の制度改正後の金額で計算)。国公立大学の学費が約243万円なので、これだけでかなりの水準まで届きます。1階部分としては十分に優秀です。ただし私立や自宅外通学を想定するなら、月1万〜1.5万円程度の上乗せ積立を早めに始めておくと安心です。
Q. 教育費が上がるなら、目標額はいくらに設定すべきですか?
「今の必要額+2割」を目安にしてください。教育費はこの12年で年2.16%のペースで上がっており、同じペースが続けば18年後には今の1.47倍になります。とはいえ、そこまで上がる前提で目標を立てると毎月の負担が重くなりすぎます。現実的な着地点として2割増しで設定し、毎年見直して足りなければ途中で積立額を上げる、という運用が扱いやすいと考えています。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。保険商品・金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。教育資金のご相談では、商品の優劣ではなく「何を守りたいか」から配分を決める形でご提案しています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・文部科学省「子供の学習費調査」(平成24年度・令和5年度)
・国税庁「生命保険料控除」および令和7年度税制改正の内容
・財務省「個人向け国債」の発行条件
【注意事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品・金融商品の勧誘を行うものではありません。記載の返戻率・利回りは一般的な水準または想定であり、将来の成果を保証するものではありません。学資保険の返戻率は商品・加入年齢・払込期間・受取方法によって大きく異なり、解約返戻金の額も契約内容によって変わります。個人向け国債の利率は発行時期によって変動します。生命保険料控除の拡充は年分を限った措置であり、その後の扱いは今後の税制改正によります。控除の適用可否と金額はご家庭の状況によって異なるため、国税庁のサイトまたは税務署でご確認ください。運用に関する試算は想定利回りによるもので、実際には値動きにより増減します。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

