「住宅ローンの借り換えで得する人がいるらしいけど、うちの場合はどうなんだろう?」
よく言われるのが「金利差1%以上・残高1,000万円以上・残期間10年以上」という目安です。
しかし実際に計算してみると、この目安は現在の実態と合っていません。
判断を決めるのは、金利差そのものより諸費用のタイプです。
- 諸費用が定率型か定額型かで、必要な金利差が3倍変わります
- 残高3,000万円・残20年なら、定率型で0.27%、定額型なら0.08%の金利差で元が取れる計算
- 「金利差1%以上」という古い目安に縛られる必要はありません
- まず今の銀行に金利引き下げを相談すれば、諸費用ゼロで下がることもあります
この記事では、借り換えで得する条件を、損益分岐点の計算から解説します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 今のローン金利が高い気がして、借り換えが気になっている
- 借り換えでいくら得するのか、具体的な数字を知りたい
- 諸費用と手間がどれくらいか知っておきたい
- 変動金利の上昇が不安で、固定への切り替えを考えている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
借り換えでいくら減るのか

まず、金利差による削減効果を見てみましょう。
金利1.5%から1.0%へ、0.5%下げた場合の総返済額の削減です。
| ローン残高 | 残り10年 | 残り15年 | 残り20年 | 残り25年 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 26万円 | 40万円 | 54万円 | 69万円 |
| 2,000万円 | 52万円 | 80万円 | 109万円 | 138万円 |
| 3,000万円 | 79万円 | 120万円 | 163万円 | 208万円 |
| 4,000万円 | 105万円 | 160万円 | 217万円 | 277万円 |
※ 元利均等返済で計算した削減額の試算です。諸費用は含んでいません。
残高が多く、残り期間が長いほど効果が大きくなります。
ただし、ここから諸費用を引いた金額が実際のメリットです。
具体的なケースで見てみる
| 条件 | 毎月の返済額の変化 | 総返済額の削減 | 諸費用を引いた実質メリット |
|---|---|---|---|
| 残高2,000万円・残20年 金利1.8%→1.0% | 99,293円→91,979円 (月7,314円減) | 約176万円 | 約116万円の得 (諸費用60万円の場合) |
| 残高2,000万円・残20年 金利1.3%→1.0% | 94,680円→91,979円 (月2,702円減) | 約65万円 | 約5万円の得 (諸費用60万円の場合) |
| 残高1,000万円・残10年 金利1.8%→1.0% | 月3,516円減 | 約42万円 | 約2万円の得 (諸費用40万円の場合) |
※ 元利均等返済で計算した試算です。実際の金利・諸費用は金融機関により異なります。
同じ「金利を下げる」でも、条件によって結果はまったく違います。
そして下2つのケースでは、諸費用でほとんど利益が消えています。
【核心】諸費用のタイプで結論が変わる

ここがこの記事で最もお伝えしたい部分です。
借り換えの諸費用には、大きく2つのタイプがあります。
残高3,000万円なら
約86 万円
残高がいくらでも
約25 万円
残高3,000万円なら、61万円の差になります
※ 定率型は事務手数料2.2%+登記費用など20万円、定額型は事務手数料5万円+登記費用など20万円として計算した目安です。実際の費用は金融機関により異なります。
残高が大きいほど、この差は開きます。
| ローン残高 | 定率型の諸費用 | 定額型の諸費用 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約42万円 | 約25万円 | 17万円 |
| 2,000万円 | 約64万円 | 約25万円 | 39万円 |
| 3,000万円 | 約86万円 | 約25万円 | 61万円 |
| 4,000万円 | 約108万円 | 約25万円 | 83万円 |
※ 同上の条件による目安です。保証料の有無など、金融機関により内訳は変わります。
金利が同じでも、総額では逆転します
「A銀行は金利0.05%低いが定率型」「B銀行は金利がやや高いが定額型」。
残高が大きい場合、B銀行のほうが総額で有利になることがあります。
金利の低さだけで選ばず、諸費用込みの総額で比べてください。
FP伊藤借り換えのご相談で、いちばん多く指摘するのがこの点です。
金利の比較表は誰でも作れますが、手数料のタイプまで並べている方は少ないんですね。
残高3,000万円なら、手数料だけで61万円の違いが出ます。
金利0.1%分に相当する金額です。
見積もりを取るときは、必ず手数料の内訳まで出してもらいましょう。
損益分岐点の早見表


では、どれくらいの金利差があれば元が取れるのでしょうか。
諸費用を回収できる最低の金利差を計算しました。
定率型(事務手数料が借入額の2.2%)の場合
| ローン残高 | 残り10年 | 残り15年 | 残り20年 | 残り25年 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 0.81% | 0.53% | 0.39% | 0.31% |
| 2,000万円 | 0.62% | 0.40% | 0.30% | 0.23% |
| 3,000万円 | 0.55% | 0.36% | 0.27% | 0.21% |
| 4,000万円 | 0.52% | 0.34% | 0.25% | 0.20% |
定額型(事務手数料が3〜5万円)の場合
| ローン残高 | 残り10年 | 残り15年 | 残り20年 | 残り25年 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 0.48% | 0.32% | 0.23% | 0.18% |
| 2,000万円 | 0.24% | 0.16% | 0.12% | 0.09% |
| 3,000万円 | 0.16% | 0.11% | 0.08% | 0.06% |
| 4,000万円 | 0.12% | 0.08% | 0.06% | 0.05% |
※ 借り換え前の金利を1.5%とし、諸費用(定率型:借入額の2.2%+20万円/定額型:25万円)を総返済額の削減で回収できる最低の金利差を計算した目安です。実際の判断は個別の見積もりで確認してください。
表を見比べると、構造がはっきりします。
- 残り期間が長いほど、必要な金利差は小さくなる
- 定額型を選べるなら、必要な金利差は大きく下がる
- 定額型かつ残高2,000万円以上なら、金利差0.1〜0.2%台でも元が取れる
- 逆に、定率型・残高1,000万円・残10年では0.81%もの差が必要になる
「金利差1%以上」という目安は、現在の実態と合っていません。
定額型の手数料を選べる今、0.2〜0.3%の差でも十分に検討する価値があります。
借り換えの諸費用の内訳
| 費用の種類 | 金額の目安 |
|---|---|
| 事務手数料(新しい金融機関) | 定額3〜5万円程度、または借入額の2.2%程度 |
| 保証料 | 金融機関による(不要のことも多い) |
| 登記費用(抵当権の抹消・設定) | 10万〜20万円程度(登録免許税+司法書士報酬) |
| 印紙税 | 2万円程度(電子契約なら不要のことも) |
| 完済手数料(今の金融機関) | 1万〜3万円程度 |
なお、諸費用を新しいローンに上乗せして借りられる金融機関もあります。
その場合、手元の現金は不要になりますが、借入額と利息は増えます。
金利以外の3つの活用法


借り換えの目的は、総返済額の削減だけではありません。
活用法① 変動から固定へ切り替える
変動金利で借りていて、金利上昇が不安な方向けの使い方です。
借り換えで固定金利にすれば、返済額を確定させられます。
目先の返済額は増えても、「この先ずっとこの金額」という安心を買えます。
金利が動き始めている局面では、この目的での借り換えも増えています。
活用法② 団信の保障を手厚くする
借り換えでは、団体信用生命保険(返済中に万一のことがあった場合に残債がゼロになる保険)に新しく加入し直します。
最近の団信は、がん保障や三大疾病保障など、保障の範囲が広がっています。
借り換えを機に保障を手厚くできる場合があります。
その分だけ既存の生命保険を減らせれば、家計全体の保険料を下げられることもあります。
活用法③ 返済期間を調整する
借り換えのタイミングで、返済期間を変えることもできます(金融機関の条件によります)。
期間を延ばして毎月の負担を軽くする。
あるいは短くして完済を早める。
教育費が増える時期に合わせて毎月の返済を軽くするなど、ライフプランに合わせた設計ができます。
借り換えの注意点と進め方


知っておきたい注意点
- あらためて審査がある — 転職直後・収入減があると通らないことがある
- 団信に入り直す必要がある — 健康状態によっては加入できず、借り換え自体ができないことも
- 手間と時間がかかる — 書類の準備や手続きで1〜2ヶ月程度
- 住宅ローン控除の条件を確認する — 借り換え後の返済期間が10年以上あることなどが要件
見落とされやすいのが健康状態です
借りた当時は健康でも、その後の病歴によっては新しい団信に加入できないことがあります。
団信に入れなければ、借り換えそのものができません。
借り換えを考えるなら、健康なうちに。これも大切な視点です。
借り換えの流れ
手続きには通常1〜2ヶ月程度かかります。
必要な書類は、収入を証明するもの、現在のローンの返済予定表、物件の登記関係書類などです。
その前に試したいこと
借り換えには諸費用がかかりますが、金利引き下げの交渉なら費用はほぼゼロです。
まず交渉、ダメなら借り換え。この順番なら失うものがありません。



借り換えのご相談では、必ず「まず今の銀行に相談しましたか」とお聞きします。
意外に多いのが、一度も交渉せずに借り換えを検討されているケースです。
銀行にとっても、お客様に出ていかれるより金利を下げて残ってもらうほうが得です。
他行の事前審査を通したうえで相談すれば、話が進みやすくなります。
手間も費用もかからないので、試さない手はありません。
購入にかかるお金の全体像は、こちらで整理しています。


まとめ|判断を決めるのは諸費用のタイプ


借り換えは、条件が合えば100万円以上の効果が出る家計改善の手段です。
一方で、条件が合わないと諸費用倒れになります。
金利の比較だけで判断せず、諸費用込みの総額で計算してください。
わが家の条件で、借り換えの効果を試算しませんか
伊藤FPオフィスでは、返済中の方の借り換え相談もお受けしています。
特定の金融機関と提携していないため、中立な立場で比較できます。
- ご自身のローン条件での借り換え効果の試算(諸費用込み)
- 複数の金融機関・金利タイプ・手数料体系の中立な比較
- 団信と既存の生命保険を含めた家計全体の見直し
- 教育費・老後資金を踏まえた返済計画の再設計
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問


気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 金利差が0.3%しかないのですが、借り換えの意味はありますか?
諸費用のタイプと残り期間によります。定額型の手数料を選べて残高2,000万円・残20年以上なら、0.3%の差でも十分に元が取れる計算です。一方、定率型(借入額の2.2%)で残高1,000万円・残10年なら、0.81%の差が必要になります。必ず諸費用込みで試算してください。
Q. 借り換えると住宅ローン控除はどうなりますか?
一定の条件(借り換え後の返済期間が10年以上あることなど)を満たせば、引き続き控除を受けられます。ただし控除の対象になる金額の計算には細かいルールがあります。適用の可否は税務署または税理士にご確認ください。
Q. 変動金利が上がりそうで不安です。固定に借り換えるべきですか?
「金利が上がったら家計が回らなくなる」状況なら、固定への切り替えで安心を買う価値があります。一方、上昇に耐えられる余裕があるなら、変動のまま様子を見る選択もあります。ご家庭の余裕度によって答えが変わるため、キャッシュフロー表での確認をお勧めします。
Q. 転職したばかりですが、借り換えできますか?
転職直後は審査が厳しくなる傾向があります(勤続1年以上を条件とする金融機関が多いためです)。転職前に借り換えを済ませるか、勤続年数が経ってから検討するのが現実的です。金融機関によって基準は異なるため、複数行に確認してみましょう。
Q. 諸費用を借入に含めることはできますか?
諸費用を新しいローンに上乗せできる金融機関もあります。手元の現金を用意せずに済む一方、借入額が増えるため利息も増えます。手元資金に余裕があるなら現金で払うほうが総額は抑えられます。
Q. 借り換えの手続きはどれくらいかかりますか?
審査から融資実行まで、通常1〜2ヶ月程度です。収入証明書、現在のローンの返済予定表、物件の登記関係書類などの準備が必要になります。手続きの一部はオンラインで完結できる金融機関も増えています。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。借り換えのご相談では、金利だけでなく諸費用の内訳まで並べて比較しています。
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