「貯金はほとんどないけれど、家賃を払い続けるのはもったいない。頭金ゼロでも家は買えるのか」
結論からお伝えすると、頭金ゼロでの住宅購入は可能です。
それどころか、いまや珍しくもありません。
首都圏の新築一戸建てを買った人の32.8%が自己資金ゼロです。
ただし「頭金ゼロ」と「貯金ゼロ」は、まったく別の問題です。
頭金を入れなくても、423万円ほどの現金は必要になります。
- 頭金ゼロは新築一戸建てで32.8%、新築マンションで20.6%
- しかも世帯年収1,000万円以上のほうが頭金ゼロの割合は高い
- 頭金ゼロでも、諸費用・引っ越し・生活防衛資金で423万円は必要
- 最大のリスクは、7〜10年ほど「売っても返せない」状態が続くこと
こんな方に読んでほしい記事です
- 貯金が少ないが住宅購入を考えている
- 頭金ゼロで買った場合の毎月返済額を知りたい
- 「頭金なしは無謀」と言われて不安になっている
- 転勤や住み替えの可能性がある
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
家計全体の視点から、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【実データ】頭金ゼロは、もう珍しくない

まず、実際にどのくらいの人が頭金ゼロで買っているのかを確認します。
リクルート「首都圏新築マンション契約者動向調査(2025年)」(2026年3月発表)のデータです。
さらに「自己資金5%未満」まで含めると、こうなります。
※ 出典:リクルート「首都圏新築マンション契約者動向調査(2025年)」(調査数:マンション5,140/新築一戸建て612)
頭金を入れずに買うことは、もはや例外ではありません。
しかも「お金がない人」が選んでいるわけではありません
同じ調査の属性別データを見ると、意外な傾向が出ています。
| 属性 | 自己資金ゼロの割合 | 平均の自己資金比率 |
|---|---|---|
| 世帯総年収1,000万円以上 | 28.8% | 9.0% |
| 世帯総年収1,000万円未満 | 22.1% | 11.0% |
| 既婚・共働きしている | 25.2% | 12.1% |
| 既婚・共働きしていない | 13.3% | 39.6% |
| 全体(新築マンション) | 20.6% | 21.3% |
※ 出典:リクルート「首都圏新築マンション契約者動向調査(2025年)」
世帯年収1,000万円以上のほうが、頭金ゼロの割合が高いのです。
共働き世帯の平均自己資金比率は12.1%で、共働きでない世帯の39.6%を大きく下回っています。
これは「お金がないから頭金を入れられない」のではありません。
「入れられるけれど、あえて入れていない」のです。
金利が低いうちは、手元に現金を持っておくほうが家計の安全度が高いからです。
FP伊藤この判断は、実は理にかなっています。
頭金として払ったお金は、二度と引き出せません。
一方、手元に残しておけば、病気・失業・転職・教育費のどれにでも使えます。
住宅ローンは、あとから繰り上げ返済でいつでも減らせます。
「先に減らす」より「いつでも減らせる状態を保つ」ほうが、選択肢が多く残るのです。
この10年で3倍近くに増えました
※ いずれも新築マンション契約者。出典:同上
物件価格が上がったことで、頭金を貯めてから買うのが現実的でなくなったという面もあります。
平均購入価格7,324万円に対して、頭金を1割入れるなら732万円。
貯めている間に、物件価格がさらに上がってしまう可能性があります。
頭金ゼロでも「これだけの現金」は必要です


ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。
頭金ゼロで買えることと、貯金ゼロで買えることは違います。
3,500万円の新築マンションを頭金ゼロで買う場合に必要な現金です。
現金払いが基本です。中古なら仲介手数料が加わってさらに増えます
エアコンの増設なども意外とかかります
病気・失業に備えて手元に残しておくお金です
※ 諸費用は新築の目安です。中古物件では仲介手数料(3,500万円なら約123万円)が加わります。
頭金がゼロでも、423万円は必要です。
そして、これとは別に大きな壁があります。
最大のハードルは、契約時の手付金
手付金とは、売買契約のときに売主へ支払うお金です。
物件価格の5〜10%を、契約のタイミングで現金で支払うのが一般的です。
3,500万円の物件なら175万〜350万円になります。
手付金は、住宅ローンでは賄えません。
手付金は最終的に購入代金に充当されますが、住宅ローンの融資が実行されるのは物件の引き渡し時です。契約はその数ヶ月前に行うため、その間は自分で立て替える必要があります。これが「貯金ゼロでの購入は実質難しい」と言われる最大の理由です。
手付金の額は交渉で減らせる場合もあります。
ただし極端に少ない手付金は、売主に敬遠されることがあります。
人気物件の競争では不利になると考えておいてください。
諸費用まで借りることはできますが
諸費用まで含めて借りる「オーバーローン」に対応する金融機関もあります。
ただし、その分のコストがかかります。
| 借入額 | 毎月の返済額 | 35年の総返済額 | |
|---|---|---|---|
| 諸費用を現金で払う | 3,500万円 | 98,800円 | 4,150万円 |
| 諸費用250万円も借りる | 3,750万円 | 105,857円 | 4,446万円 |
| 差 | +250万円 | +7,057円 | +296万円 |
※ 変動金利1.0%・35年での試算です。
250万円を借りるために、35年で46万円の利息を払う計算です。
それ自体は大きな額ではありません。
問題は、借入額が増えることで次の章のリスクが大きくなることです。
毎月いくら返済になるか


借入額別の毎月返済額です(35年・元利均等・ボーナス払いなし)。
| 借入額 | 変動金利 年1.0% | 固定金利 年1.5% |
|---|---|---|
| 3,000万円(頭金500万円を入れた場合) | 84,686円 | 91,855円 |
| 3,500万円(頭金ゼロ) | 98,800円 | 107,165円 |
| 3,750万円(諸費用250万円も借りる) | 105,857円 | 114,819円 |
| 4,000万円 | 112,914円 | 122,474円 |
※ 2026年8月時点の一般的な金利水準による試算です。
頭金500万円を入れると、毎月14,114円軽くなります。
35年間の利息では93万円の差です。
頭金ゼロだと金利が上乗せされることがあります
金融機関によっては、頭金の割合に応じた金利優遇があります。
【フラット35】では、融資率(物件価格に対する借入の割合)で金利が明確に分かれます。
| 【フラット35】2026年8月・借入期間21年以上35年以下 | 最頻金利 | 3,500万円・35年の月返済 |
|---|---|---|
| 融資率9割以下(頭金を1割以上入れた場合) | 年3.290% | 140,426円 |
| 融資率9割超(頭金ゼロを含む) | 年3.400% | 142,631円 |
※ 出典:住宅金融支援機構【フラット35】2026年8月の金利。
差は0.11%、月2,206円です。
35年では93万円の差になります。
民間の金融機関でも同様の扱いをするところがあるため、頭金を1割入れられるなら、その効果を確認する価値があります。
返済額だけでなく、住居費の総額で見てください
持ち家には、ローン返済のほかに維持費がかかります。
国土交通省「令和5年度マンション総合調査」をもとに計算すると、マンションの維持費は月36,200円です(管理費11,503円+修繕積立金13,054円+固定資産税約10,000円+火災保険約1,700円)。
3,500万円を頭金ゼロで借りると、住居費は98,800円+36,200円=月135,000円になります。
※ 住居費(返済98,800円+維持費36,200円)が手取り月収に占める割合です。手取りは額面の78%と仮定しています。目安は手取りの25〜30%以内です。
【最大のリスク】売りたくても売れない期間


頭金ゼロの本当のリスクは、毎月の返済額ではありません。
売却したくても、ローンを返しきれない期間が長く続くことです。
理由は、返済の初期には元本がほとんど減らないからです。
一方、住宅は購入した瞬間から中古になります。
残高の減り方より、価値の下がり方のほうが速い時期があるのです。
3,500万円の物件を売却する場合を計算しました。
売却価格から仲介手数料を引いた手取りと、ローン残高を比べています。
| 売却する時期 | 購入価格の何%で売れたか | 頭金ゼロで買った場合 | 頭金500万円で買った場合 |
|---|---|---|---|
| 3年後 | 85%(2,975万円) | ▲375万円 | +88万円 |
| 3年後 | 90%(3,150万円) | ▲206万円 | +257万円 |
| 5年後 | 85%(2,975万円) | ▲202万円 | +237万円 |
| 5年後 | 90%(3,150万円) | ▲32万円 | +407万円 |
| 10年後 | 80%(2,800万円) | +79万円 | +454万円 |
| 10年後 | 85%(2,975万円) | +249万円 | +623万円 |
※ 金利1.0%・35年での試算です。売却時の仲介手数料(売却価格の3%+6万円に消費税)を差し引いています。実際の売却価格は物件・立地・市況によって大きく異なります。
頭金ゼロで買うと、7〜10年ほどは「売っても返せない」状態が続きます。
この間に転勤・離婚・住み替えが必要になると、不足分を現金で用意しなければ売却できません。
転勤の可能性がある方は、この点を必ず確認してください。
3年後に転勤になり、85%でしか売れなかった場合、375万円の不足が出ます。この現金を用意できなければ、売却そのものができません。賃貸に出すという選択肢もありますが、住宅ローンのまま賃貸に出すことは原則として認められていないため、金融機関への相談が必要になります。
なお、この試算は「価値が下がった場合」の想定です。
近年の首都圏では、購入時より高く売れるケースもあります。
ただし、それを前提に計画を立てるのは危険です。
下がった場合にどうなるかを確認したうえで、上がったらありがたいと考えるのが安全な順番です。
今買うか、貯めてから買うか


「あと1年貯めてから買ったほうがいいのでは」
これもよくいただくご質問です。
月8万円を1年貯めて、頭金96万円を作る場合で計算しました。
待っている1年間の家賃は月12万円(年144万円)とします。
| 借入額 | 35年の総返済額 | 家賃を加えた実質負担 | 今買う場合との差 | |
|---|---|---|---|---|
| 今買う(金利1.0%) | 3,500万円 | 4,150万円 | 4,150万円 | — |
| 1年後・金利1.0%のまま | 3,404万円 | 4,036万円 | 4,180万円 | +30万円 |
| 1年後・金利1.3% | 3,404万円 | 4,239万円 | 4,383万円 | +233万円 |
| 1年後・金利1.5% | 3,404万円 | 4,377万円 | 4,521万円 | +372万円 |
※ 待っている1年分の家賃144万円を加えた比較です。物件価格が変動する可能性は考慮していません。
金利が変わらなくても、1年待つメリットはほとんどありませんでした。
家賃を払いながら貯めるため、頭金96万円の効果が相殺されるからです。
金利が上がれば、さらに不利になります。
ただし、これは「急いで買うべき」という意味ではありません。
貯めるべきなのは、頭金ではなく「必要な現金423万円」のほうだからです。
この423万円が用意できていないなら、まず家計を整えることが先です。
毎月8万円の黒字を作れれば、生活防衛資金180万円は2年ほどで貯まります。
後悔しないための3つの確認
この3つをクリアできるなら、頭金ゼロは十分に合理的な選択です。
実際、世帯年収1,000万円以上の3割近くがそうしています。
借入額ごとの返済額の目安は、こちらで試算しています。


まとめ|頭金ゼロは戦略、貯金ゼロは危険


頭金ゼロは、条件がそろえば合理的な戦略です。
低金利のうちに借りて、手元に現金を残しておく。
実際、共働きの高年収世帯ほどこの選択をしています。
一方、貯金ゼロでの購入は危険です。
手付金の壁があるうえ、不測の事態への備えがない状態になります。
この2つを混同しないことが、最も大切な判断基準になります。
わが家は頭金ゼロで買って大丈夫か、確認しませんか
頭金ゼロが「合理的な戦略」になるか「危険な賭け」になるかは、ご家庭の家計次第です。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、今買う場合と、貯めてから買う場合の両方を試算して比べます。
売却が必要になった場合にいくら不足するかも、あわせて確認します。
ご相談では、「買うべき」とも「やめるべき」とも一方的には申し上げません。
- 頭金ゼロで今買う場合と、貯めてから買う場合の比較試算
- 手付金・諸費用・生活防衛資金として必要な現金の算出
- 売却が必要になった場合の不足額のシミュレーション
- 維持費まで含めた住居費が家計に占める割合の確認
- 金利上昇・収入減など複数シナリオの確認
- 教育費・老後資金まで含めたキャッシュフロー表の作成
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
👨👩👧 ご相談事例・お客様の声
同じ悩みを持つ方が、どう解決したかをご覧いただけます
「妊娠を機に、これからの家計が気になる」
「教育費をどのような方法で準備したらいい?」
実際に伊藤FPオフィスへご相談いただいた方の、相談前のお悩みから相談後の変化までをご紹介しています。
掲載中のご相談事例
・30代ご夫婦(市川市・妊娠中)/これからの家計の見直し
・30代ご夫婦(市川市・お子様3歳)/教育資金の準備方法
・貯金がうまくできないというお悩み ほか
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 本当に貯金ゼロでも家は買えますか?
実質的には難しいと考えてください。諸費用まで借りられる金融機関を使えば頭金も諸費用もゼロにできますが、契約時の手付金(物件価格の5〜10%)は現金で立て替える必要があります。3,500万円の物件なら175万〜350万円です。さらに引っ越し費用と当面の生活費も必要になります。
Q. 頭金ゼロは無謀ではないのですか?
データを見る限り、無謀ではありません。首都圏の新築一戸建てでは32.8%、新築マンションでは20.6%が自己資金ゼロで購入しています。しかも世帯年収1,000万円以上のほうが、その割合は高くなっています(28.8%)。「入れられるけれど、あえて入れていない」という選択が広がっているためです。
Q. 頭金を入れるのと手元に残すの、どちらがいいですか?
一概には言えません。頭金500万円を入れると毎月14,114円軽くなり、35年の利息は93万円減ります。一方、手元に500万円を残しておけば、病気・失業・教育費のどれにでも使えます。住宅ローンは繰り上げ返済であとから減らせますが、一度払った頭金は戻せません。生活防衛資金を削ってまで頭金を入れるのは避けてください。
Q. 頭金なしだと金利が高くなりますか?
金融機関によっては高くなります。【フラット35】では、融資率9割以下なら年3.290%、9割超なら年3.400%です(2026年8月・借入期間21年以上35年以下の最頻金利)。差は0.11%ですが、3,500万円・35年では93万円の差になります。民間の金融機関でも同様の扱いをするところがあるため、事前に確認してください。
Q. 頭金ゼロだと住宅ローン審査に通りにくいですか?
借入額が大きくなる分、返済負担率が上がって審査は厳しくなる傾向があります。ただし国土交通省の調査では、融資率「100%以内」に対応する金融機関が380件で最多でした。フルローン自体は珍しくありません。一方、諸費用まで含めた110%以上に対応するのは合計74件にとどまります。
Q. 途中で売ることになったらどうなりますか?
頭金ゼロだと、7〜10年ほどは売却代金だけでローンを返しきれない可能性があります。3,500万円の物件を3年後に85%(2,975万円)で売った場合、仲介手数料を引いた手取りは2,870万円。残高3,246万円に対して375万円の不足が出ます。この分は現金で用意しなければ売却できません。転勤の可能性がある方は、特に注意が必要です。
Q. 家賃がもったいないので早く買いたいのですが
その感覚は間違っていません。月8万円を1年貯めて頭金96万円を作っても、その間の家賃144万円を考えると、今買う場合とほぼ差がありません(金利が変わらない場合で30万円の差)。ただし貯めるべきなのは頭金ではなく、手付金・諸費用・生活防衛資金として必要な423万円のほうです。これが用意できているかどうかで判断してください。
Q. 諸費用まで借りるのはやめたほうがいいですか?
250万円を借りるための追加の利息は35年で46万円なので、それ自体は大きくありません。問題は、借入額が増えるぶん売却時の不足額が大きくなることと、金融機関によっては金利が上乗せされることです。手元資金を残すためにあえて借りるという判断はあり得ますが、「現金がないから借りる」という状況なら、購入時期を見直すことをおすすめします。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。家計全体の視点から、住宅購入・住宅ローンの見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。頭金のご相談では、「いくら入れるか」より「手元にいくら残すか」から決めることをお伝えしています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応

