「一生賃貸でいいかな」と考えている方も、「やっぱり老後は持ち家が安心かな」と迷っている方も多いと思います。
結論からお伝えすると、賃貸のまま老後を迎えること自体は、リスクではありません。
リスクになるのは、「老後も家賃が続く」という前提を織り込まずに家計を組んでしまうことです。
では、いくら織り込んでおけばよいのか。実際に計算しました。
- 老後に必要な資金は、持ち家なら1,018万円(65歳から20年)です
- 家賃8万円の賃貸なら2,554万円。1,536万円多く必要になります
- この差額は、30歳から月2.07万円の積立で準備できます(年3%運用の場合)
- つまり「備えのない賃貸」がリスクであって、賃貸そのものではありません
この記事では、家計調査の実データをもとに老後の住居費を整理し、賃貸派・持ち家派それぞれの備え方をお伝えします。
こんな方に読んでほしい記事です
- 一生賃貸でいくか、いつか持ち家を持つか迷っている
- 老後に家賃を払い続けられるか不安がある
- 賃貸を選ぶなら、老後資金をいくら準備すればよいか知りたい
- 高齢になってからの住まいの選択肢を知っておきたい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
老後の家計は、実際どうなっているか

まず、老後の家計の実態から確認します。
総務省の家計調査(2025年平均)による、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の収支です。
※ 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均」より。平均消費性向は119.2%となっています。
毎月4万2,435円の不足。
これを65歳から20年間続けると、1,018万円になります。
けれども、この数字には重要な前提があります。
この統計に含まれる世帯の持ち家率は、95.5%です。
つまり、住居費がほとんどかからない前提の数字だということです。持ち家で完済済みなら、住居費は固定資産税・保険・修繕費が中心になります。賃貸で老後を迎えるなら、この不足額に家賃が上乗せされます。
よく「老後2,000万円」という数字が引き合いに出されます。
最新のデータで計算すると、持ち家なら1,018万円。
思っているより少ない数字です。
問題は、賃貸の場合にいくらになるかです。
賃貸なら、老後資金は1,536万円多く必要

持ち家世帯の消費支出に含まれる住居費は、月1.6万円程度です。
賃貸なら、家賃との差額がそのまま上乗せになります。
固定資産税・修繕費のみ
1,018 万円
65歳から20年に必要な資金
生涯続く
2,554 万円
65歳から20年に必要な資金
賃貸を選ぶなら、老後資金を1,536万円多く準備する必要があります
※ 家計調査の不足額(月42,435円)に、家賃と持ち家世帯の住居費(月1.6万円)の差額を上乗せして計算した試算です。
家賃の水準によって、必要な金額は変わります。
※ 65歳から85歳までの20年間に必要な老後資金の試算です。更新料・引っ越し費用は含んでいません。
老後にどこに住むかで、必要な資金は3倍以上変わります。
これが「老後の住まい」を早めに考えておくべき理由です。
FP伊藤ご相談で「老後2,000万円あれば大丈夫ですか」と聞かれることがあります。
答えは「持ち家か賃貸かで変わります」です。
持ち家なら1,000万円台で足りますが、家賃10万円の賃貸なら3,000万円必要になります。
まずご自身がどちらの前提で考えているかを、はっきりさせてください。
その差額を、現役時代に準備できるか


賃貸を選ぶなら、1,536万円を追加で準備することになります(家賃8万円の場合)。
これは、現役時代に積み立てられる金額でしょうか。
| 積立を始める年齢 | 65歳までの期間 | 運用しない場合 | 年3%で運用した場合 |
|---|---|---|---|
| 30歳から | 35年 | 月3.66万円 | 月2.07万円 |
| 35歳から | 30年 | 月4.27万円 | 月2.64万円 |
| 40歳から | 25年 | 月5.12万円 | 月3.44万円 |
| 45歳から | 20年 | 月6.40万円 | 月4.68万円 |
| 50歳から | 15年 | 月8.53万円 | 月6.77万円 |
※ 1,536万円を65歳までに準備する場合の毎月の積立額です。運用に関する数字は想定利回りによる試算であり、成果を保証するものではありません。
30歳から始めれば、月2.07万円。
十分に手の届く金額です。
けれども50歳から始めると、月6.77万円になります。
早く始めるほど、賃貸という選択は現実的になります。
「浮いたお金を運用する」は成立するか
賃貸派の強みとして、よくこう言われます。
「住宅ローンを組まない分、その資金を運用に回せる」
これは正しい考え方ですが、条件があります。
| 条件 | 現役時代の月々の住居費 | 老後に向けた積立の余力 |
|---|---|---|
| 持ち家(借入3,000万円) | 返済8.50万円+維持費2.5万円=11.00万円 | 住居費が高い分、余力は小さい |
| 賃貸(家賃10万円) | 10.00万円 | 月1.00万円の差しか生まれない |
| 賃貸(家賃8万円) | 8.00万円 | 月3.00万円の差が生まれる |
同じ水準の住まいを借りると、現役時代の住居費は持ち家とほとんど変わりません。
「浮いたお金」が生まれるのは、住まいのグレードを下げた場合だけです。
賃貸派の最大の落とし穴は、差額を「使ってしまう」ことです。
住宅ローンには、返済という形で強制的に資産を積み上げる働きがあります。賃貸を選ぶなら、この仕組みを自分で作らなければなりません。「そのうち貯めよう」ではなく、今月から自動積立を設定してください。
生涯コストで見ると、どうなるか
参考までに、35歳から85歳までの50年間の住居費の総額です。
| 条件 | 50年間の住居費の総額 |
|---|---|
| 持ち家(3,500万円・35年ローン) | 約6,140万円 |
| 賃貸(家賃が50年変わらない場合) | 約6,510万円 |
| 賃貸(家賃が年0.5%ずつ上がる場合) | 約7,230万円 |
| 賃貸(家賃が年1.0%ずつ上がる場合) | 約8,070万円 |
| 賃貸(家賃を月8万円に抑える場合) | 約4,875万円 |
※ 千葉・東京郊外を想定した試算です。物件価格・家賃・金利によって結果は大きく変わります。
「生涯コストに決定的な差はつかない」とよく言われます。
けれどもそれは、家賃が50年間まったく上がらない場合だけの話です。
年1%上がれば1,930万円多くなり、逆に家賃を抑えられれば1,270万円少なくなります。
高齢期の住まいの選択肢と費用


賃貸で老後を迎える場合、どんな住まいの選択肢があるのかも知っておきましょう。
| 住まいの種類 | 月々の費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般の賃貸住宅(2DK程度) | 月6万〜10万円 | 高齢期は審査が慎重になることがあります |
| UR賃貸住宅 | 月6万〜12万円 | 保証人・礼金・更新料が不要 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 月10万〜20万円 | 安否確認・生活相談つき。入居一時金が必要な場合もあります |
| 特別養護老人ホーム | 月8万〜15万円 | 要介護3以上が原則。待機期間が長いことがあります |
| 持ち家(完済済み) | 月2.5万〜3.5万円 | 固定資産税・火災保険・修繕費のみ |
※ 地域・施設・部屋の広さによって費用は大きく異なります。サ高住や有料老人ホームは、入居一時金が必要な場合があります。
高齢者の賃貸の実態
「高齢になると借りられなくなる」という話を聞いたことがあると思います。
実際のデータを確認しておきましょう。
- 年齢を理由に入居を断られた経験がある高齢者は約3割(株式会社R65「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」2025年)
- 高齢者世帯の入居に拒否感を持つ大家は7割超(国土交通省の資料)
借りられないわけではありませんが、選択肢は狭くなります。
特に70代以降は、断られやすい傾向があります。
ただし、選択肢は広がっています
- UR賃貸住宅 — 保証人が不要で、礼金・更新料もかかりません
- 家賃債務保証会社 — 保証人の代わりになる仕組みが普及しています
- 住宅セーフティネット制度 — 高齢者などの入居を拒まない登録住宅があります
- 自治体の高齢者向け住宅 — 地域によって独自の制度があります
近年は制度の整備が進んでいますが、選択肢を知らないまま高齢期を迎えると、慌てることになります。
60代のうちに、お住まいの地域でどんな選択肢があるかを調べておくことをおすすめします。
高齢期の住み替えは、体力的にも負担が大きくなります。
建て替えや取り壊しで退去を求められる可能性もあります。「いざとなったら引っ越せばいい」という考え方は、70代・80代では想像以上に難しくなることを知っておいてください。
賃貸を続けるなら/持ち家を選ぶなら
どちらを選ぶにしても、備えは必要です。
それぞれの備え方を整理します。
賃貸を続けるなら——4つの備え
持ち家を選ぶなら——注意したいこと
「老後の安心のために持ち家を」と考える場合、無理な購入で現役時代を圧迫しては本末転倒です。
- 定年までに完済できる返済計画にする — 老後にローンを残さないことが最優先です
- 「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」で買う — 住居費は手取りの25%以内が目安
- 教育費・老後資金の積立と両立できる範囲にする — お子さまの大学入学の年の家計まで確認を
- 売りやすい・貸しやすい立地を選ぶ — 老後に住み替える選択肢を残せます
持ち家には、住居費が下がるだけでなく資産として活用できるという強みもあります。
| 活用の方法 | 内容 |
|---|---|
| 売却して住み替える | 広い家を売って、コンパクトな住まいやサ高住の入居資金にする |
| 賃貸に出す | お子さまの独立後、家を貸して家賃収入を得る |
| リバースモーゲージ | 自宅を担保に老後資金を借り、亡くなった後に自宅で精算する仕組み 対象となる物件・地域に条件があります |
| 相続する | 資産として次の世代に残す |
「持ち家は動けなくなる」と言われることもありますが、資産価値のある家なら売却・賃貸で柔軟に動けます。
そのためにも、購入時に「将来売りやすい立地か」という視点を持っておくことが大切です。



老後の相談で多いのが、広い家に夫婦2人で住み続けているケースです。
固定資産税も修繕費もかかり、掃除の負担も大きい。
けれども売却してコンパクトな住まいに移れば、資金も手間も軽くなります。
持ち家の強みは、こうした選択肢を持てることにあります。
老後にいくら必要かは、こちらで数字をもとにまとめています。


まとめ|リスクは「賃貸」ではなく「備えのない賃貸」
賃貸にも持ち家にも、それぞれの良さと備えるべき点があります。
「賃貸だから不安」「持ち家だから安心」と決めつけず、選んだ道に合った準備をしておくこと。
それが老後の安心につながります。
そして準備は、早く始めるほど楽になります。
老後まで見て、どちらが合うか確認しませんか
伊藤FPオフィスでは、「賃貸を続けた場合」と「購入した場合」の両方を、老後まで含めてシミュレーションしています。
ご家庭の収入と支出をもとに、老後資金がいくら必要になるかを具体的な金額でお見せします。
「購入ありき」ではありません。
賃貸を続けたほうがよい、という結論をお伝えすることもあります。
- 現状の家計・収支の整理
- 賃貸を続けた場合と購入した場合の生涯コスト比較
- 老後に必要な資金の試算(賃貸の場合の上乗せ分を含む)
- 定年までに無理なく完済できる借入額の試算
- 教育費・老後資金との両立確認(キャッシュフロー表の作成)
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 賃貸のままだと、老後は本当に不利ですか?
一概に不利とは言えません。必要な老後資金は持ち家で1,018万円、家賃8万円の賃貸で2,554万円。差の1,536万円を現役時代に準備できていれば、賃貸のままでも問題ありません。30歳から年3%で運用しながら積み立てるなら月2.07万円です。リスクになるのは、この上乗せ分を織り込まずに老後を迎えることです。
Q. 老後2,000万円あれば足りますか?
持ち家か賃貸かで変わります。家計調査2025年のデータで計算すると、持ち家(完済済み)なら65歳から20年で1,018万円、30年でも1,528万円です。一方、家賃10万円の賃貸なら20年で3,034万円必要になります。「2,000万円」という一般論より、ご自身の住まいの前提のほうが影響は大きいということです。
Q. 高齢になると、賃貸を借りられなくなりますか?
借りられないわけではありませんが、選択肢は狭くなります。年齢を理由に入居を断られた経験がある高齢者は約3割(株式会社R65の調査・2025年)、高齢者世帯の入居に拒否感を持つ大家は7割を超えるという国土交通省の資料もあります。ただしUR賃貸住宅(保証人不要)、家賃債務保証会社、住宅セーフティネット制度など、選択肢は広がっています。60代のうちに、お住まいの地域の制度を調べておくと安心です。
Q. 賃貸なら「浮いたお金を運用できる」と聞きましたが、本当ですか?
住まいのグレードを下げられるなら、その通りです。ただし同じ水準の住まいを借りると、現役時代の住居費は持ち家とほとんど変わりません。借入3,000万円の持ち家なら返済8.50万円+維持費2.5万円で月11.00万円。家賃10万円の賃貸なら月10.00万円で、差は月1万円しかありません。家賃8万円に抑えられれば月3万円の差が生まれます。
Q. 老後を考えると、何歳までに家を買うべきですか?
「定年までに完済できるか」がひとつの目安になります。35年ローンなら、60歳完済には25歳、65歳完済には30歳での購入になります。現実には難しいため、繰り上げ返済や返済期間の短縮で対応することが多くなります。大切なのは年齢そのものより、「老後にローンを残さない計画になっているか」を確認することです。
Q. 高齢者向け住宅は、いくらかかりますか?
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で月10万〜20万円が目安です。安否確認や生活相談のサービスが付いており、入居一時金が必要な場合もあります。特別養護老人ホームは月8万〜15万円ですが、要介護3以上が原則で、地域によっては待機期間が長くなります。持ち家を売却して、こうした住まいの入居資金に充てるという選択肢もあります。
Q. 賃貸と持ち家、どちらがよいか相談できますか?
はい。どちらか一方をおすすめするのではなく、ご家庭の収入・家族構成・希望に合わせて両方のシミュレーションをお見せします。老後に必要な資金がそれぞれいくらになるか、現役時代にその準備ができるかまで含めて確認します。そのうえで、ご自身が納得して選べるようサポートします。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。賃貸と持ち家のご相談では、どちらかを勧めるのではなく、それぞれで老後に必要な資金がいくらになるかを計算してお伝えしています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均」
・株式会社R65「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」(2025年)
・国土交通省「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等」
【注意事項】
本記事の金額はすべて試算・目安です。老後資金の試算は、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均値(持ち家率95.5%)をもとにしたものであり、実際の年金額・支出はご家庭によって大きく異なります。賃貸の場合の上乗せ額は、持ち家世帯の住居費を月1.6万円と見た概算です。運用に関する試算は想定利回りによるもので、将来の成果を保証するものではありません。高齢者向け住宅の費用は地域・施設によって大きく異なり、入居一時金が必要な場合もあります。リバースモーゲージは対象となる物件・地域に条件があり、すべての住宅で利用できるわけではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品・サービスの購入や契約を勧めるものではありません。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

