「今の家賃と同じくらいの返済額なら、買ったほうが得なのでは」
「でも、月々の返済が今の家賃より高くなりそうで不安」
住宅購入を考えるとき、多くの方が家賃と返済額を比べます。
けれどもこの2つを並べて比べると、判断を誤ります。
実際に計算すると、広告の数字と本当の住居費には月5万円以上の開きがあります。
- 「月8万円台で買える」の実際の住居費は月12.42万円。差は5.33万円です
- 住居費を今と同じに保つなら、「今の家賃−2.5万円」が返済額の上限です
- 家賃10万円なら、無理なく買えるのは借入2,646万円が目安になります
- それでも、完済後は月8.5万円が浮きます。老後20年で1,800万円の差です
この記事では「家賃並み」という言葉を数字で解体したうえで、無理のない購入額を逆算します。
こんな方に読んでほしい記事です
- 今の家賃と住宅ローンの返済額を比べて、購入を迷っている
- 「家賃並みのローンで買えます」という広告が気になっている
- 持ち家にかかる家賃以外のコストを知りたい
- 自分の家賃感覚で、無理なく買える物件価格を知りたい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【解体】「月8万円台で買える」の中身

不動産の広告でよく見かける表現があります。
「今の家賃並みの支払いで、マイホームが持てます」
嘘ではありません。
けれども載っているのは「毎月のローン返済額」だけです。
3,500万円の物件で、実際に計算してみます。
※ 借入3,500万円・変動金利年1.025%・35年・元利均等返済で計算した試算です。ボーナス払いは年2回×17.0万円としています。維持費は物件によって異なります。
広告に載る月7.09万円と、実際に払う月12.42万円。
その差は5.33万円です。
「毎月のローン返済額」と「毎月の住居費」は別物です。
広告の数字だけで家賃と比べると、購入後に家計が苦しくなります。比べるべきは、ボーナス払いを月割りし、維持費を加えた金額です。
「家賃並み」に見せる方法は、ほかにもあります。
- ボーナス払いを併用する — 毎月の返済は安く見えますが、月割りすると家賃を超えます
- 変動金利の最低水準で計算する — 金利が上がれば返済額も上がります
- 維持費を含めない — 固定資産税・修繕費・管理費は家賃にはないコストです
- 頭金を入れた前提の返済額を出す — 頭金なしなら返済額は上がります
FP伊藤モデルルームでもらった資料に「月8万円台」と書いてあった、というご相談をよく受けます。
その場で内訳を確認すると、ボーナス払いが組み込まれていることがほとんどです。
悪意があるわけではなく、そう提示するのが業界の慣習なのだと思います。
だからこそ、こちらから「維持費込み・ボーナス払いなしだといくらですか」と聞いてください。
今の家賃から、無理なく買える額を逆算する
では、住居費を今と変えずに買えるのはいくらまでなのか。
「今の家賃 − 維持費」を返済額の上限として逆算します。
維持費は月2.5万円(固定資産税・火災保険・修繕積立)と想定しました。
| 今の家賃 | ローン返済に回せる額 | 借入額の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 月8万円 | 5.50万円 | 約1,940万円 | |
| 月9万円 | 6.50万円 | 約2,290万円 | |
| 月10万円 | 7.50万円 | 約2,650万円 | 千葉郊外の建売が視野に |
| 月11万円 | 8.50万円 | 約3,000万円 | |
| 月12万円 | 9.50万円 | 約3,350万円 | |
| 月13万円 | 10.50万円 | 約3,700万円 | |
| 月15万円 | 12.50万円 | 約4,410万円 |
※ 変動金利年1.025%・35年・元利均等返済・ボーナス払いなしで計算した目安です。このほかに諸費用(物件価格の5〜10%)が必要になります。
家賃10万円の方なら、借入2,650万円前後が「住居費を変えない」水準です。
前提の置き方で、1,659万円も変わります
同じ「家賃10万円」でも、何を前提にするかで結果は大きく違います。
※ いずれも家賃10万円・35年返済で計算した借入額の目安です。フラット35の金利は2026年8月時点(返済21〜35年・融資率9割以下)の水準を用いています。
差は1,659万円。
どの前提で計算された数字を見ているのかによって、買える物件のイメージがまったく変わります。
どの前提を採るべきか
安全に考えるなら、「維持費を引き、金利3%で計算」した金額です。
変動金利は今後上がる可能性があり、3%まで上がっても払えるかどうかが判断の分かれ目になるためです。
ただし、これは「絶対にここまでしか買えない」という意味ではありません。
住居費が今より増えることを理解したうえで、家計に余裕があるかを確認するという順番で考えてください。
見落としがちな4つの盲点


家賃と返済額を比べるときに、抜け落ちやすいコストを整理します。
ボーナス払いをやめると、借入額はどう変わるか
ボーナス払いに頼らない計画にすると、借りられる額は下がります。
借入は1,000万円減ります
1,000万円の差は大きく感じます。
けれどもボーナスは景気や業績で変動する収入です。
毎月払いのみで無理のない金額に設定し、ボーナスは繰り上げ返済や貯蓄に回すほうが安全です。
家賃より高い返済でも検討できる3つの条件


ここまで慎重な話が続きましたが、住居費が今より増えること自体が悪いわけではありません。
次の3つを満たしていれば、前向きに検討できます。
35年ローンを組むと、完済は何歳になるかを確認してください。
35歳で借りれば70歳、40歳なら75歳です。定年後も返済が続く計画になっていないか、退職金で一括返済する前提になっていないかを見ておきましょう。
判断の軸は「今」ではなく「完済後まで」


月々の返済が家賃より高いことは、確かに負担です。
けれども持ち家には、賃貸にはない決定的な違いがあります。
それは「終わりがある」ことです。
月8.50万円が浮きます
※ 返済8.50万円+維持費2.5万円で計算しています。完済後も固定資産税・保険・修繕費はかかり続けます。
一方、賃貸を続けた場合はどうでしょうか。
家賃は生涯にわたって払い続けることになります。
| 70歳から90歳までの20年間 | 住居費の合計 |
|---|---|
| 持ち家(完済済み・維持費のみ月2.5万円) | 600万円 |
| 賃貸(家賃月8万円) | 1,920万円 |
| 賃貸(家賃月10万円) | 2,400万円 |
家賃10万円の場合、老後20年の住居費の差は1,800万円です。
年金生活に入ってからの1,800万円は、極めて大きな差になります。
つまり判断すべきなのは、「今の家賃より高いかどうか」ではありません。
「30年後・40年後まで含めた家計で無理がないか」です。
ただし「持ち家が必ず得」という話ではありません
賃貸と持ち家の生涯コストは、前提の置き方で大きく変わります。
家賃が上がれば賃貸が不利になりますし、住まいのグレードを下げられるなら賃貸が有利になることもあります。
また、短期間で手放す場合は購入した分だけ損が出ます。
「どちらが得か」ではなく「ご家庭の条件だとどちらか」で考えてください。
住宅購入の流れとお金の全体像は、こちらでまとめています。


住宅購入にまつわる判断は、こちらでも取り上げています。


まとめ|比べるべきは「住居費の総額」です
住宅ローンの返済が今の家賃より高いからといって、必ずしも無理というわけではありません。
大切なのは、持ち家にかかる本当のコストを把握したうえで、家計全体で無理のない範囲かを確認することです。
広告の数字ではなく、ご自身で計算した数字で判断してください。
維持費込みの「本当の住居費」で、確認しませんか
伊藤FPオフィスでは、固定資産税や修繕費まで含めた住居費で、購入すべきかどうかを家計全体から判断しています。
金利が上がった場合、教育費が重なる年の家計まで並べて確認します。
不動産会社や金融機関と提携していないため、「今は買わないほうがよい」という結論をお伝えすることもあります。
- 現状の家計・収支の整理
- 維持費込みの「本当の住居費」での無理のない物件価格の試算
- 金利が上昇した場合の返済シミュレーション
- 賃貸を続けた場合と購入した場合の比較
- 教育費・老後資金との両立確認(キャッシュフロー表の作成)
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 家賃並みのローンなら、買ったほうが得ですか?
「家賃並み」がローン返済額だけを指しているなら、答えはノーです。持ち家には固定資産税・修繕費などの維持費(月2.5万円前後)が上乗せされます。広告の月7.09万円も、ボーナス払いを月割りし維持費を加えると月12.42万円になります。比べるべきは「月々のローン返済額」ではなく「住居費の総額」です。
Q. 維持費は、どのくらい見込んでおけばよいですか?
固定資産税・都市計画税が年10万〜15万円、戸建てなら修繕積立に月1万〜2万円、マンションなら管理費と修繕積立金で月2万〜3万円が目安です。合計すると年30万〜45万円、月換算で2.5万〜3.5万円になります。なおマンションの修繕積立金は、築年数とともに値上がりするのが一般的です。
Q. ボーナス払いは、使わないほうがよいですか?
使わない計画のほうが安全です。ボーナスは景気や業績で変動する収入だからです。3,500万円のうち1,000万円をボーナス払いにすると毎月の返済は7.09万円まで下がりますが、ボーナスが半減すれば年17万円を毎月の家計から捻出することになります。毎月払いのみで無理のない金額に設定し、ボーナスは繰り上げ返済や貯蓄に回すことをおすすめします。
Q. 家賃10万円だと、いくらまでの物件を買えますか?
住居費を今と変えない前提なら、借入2,650万円前後が目安です(変動金利1.025%・35年・維持費月2.5万円で計算)。ただし金利が3%まで上がることを想定するなら1,950万円、フラット35(3.29%)を選ぶなら1,870万円になります。これに諸費用(物件価格の5〜10%)が別途必要です。
Q. 返済が家賃より高くなっても大丈夫でしょうか?
3つの条件を満たしていれば検討できます。維持費込みの住居費が手取りの25〜30%以内に収まること、10年以上住む予定があること、完済後の生活設計まで見えていることです。特に大切なのが3つ目で、お子さまの大学入学の年や定年後の家計まで確認しておくと安心して判断できます。
Q. 賃貸と持ち家、結局どちらが得ですか?
前提の置き方で大きく変わるため、一概には言えません。同じ水準の住まいで家賃が変わらない前提なら、生涯コストはほぼ拮抗します。ただし家賃が上がれば賃貸が不利になり、住まいのグレードを下げられるなら賃貸が有利になります。一方で老後の住居費は、持ち家か賃貸かで20年間に1,800万円の差が出ます(家賃10万円の場合)。ご家庭の条件で判断してください。
Q. 完済後も、お金はかかり続けますか?
はい。固定資産税・火災保険・修繕費は、完済後もかかり続けます。月2.5万円前後が目安です。特に築年数が経った戸建ては、屋根や外壁の修繕で100万円以上かかることがあります。「完済したら住居費ゼロ」ではない点は、老後の資金計画に織り込んでおいてください。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。不動産会社・金融機関と提携せず、金融商品の販売も行わない中立な立場で相談を行っています。住宅購入のご相談では、広告の返済額ではなく維持費を含めた住居費で計算し、金利が上昇した場合まで確認したうえでお伝えしています。
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