「団信に入ったから、生命保険はもう解約していいですよね」
住宅を購入されたご家庭から、必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
答えは「減らせます。ただしゼロにしてはいけません」です。
団信が守ってくれるのは、住宅ローンの残高だけだからです。
- 団信によって、必要保障額は約4,200万円減ります(試算)
- それでも2,500万円前後の保障は残す必要があります
- 遺族年金は世帯タイプで大きく違い、子がいないと月5万円台になります
- 2028年4月から遺族厚生年金が改正され、子のない配偶者は5年間の有期給付になります
この記事では、団信と生命保険の役割の違いを整理したうえで、必要保障額を実際に計算し、見直しの手順をお伝えします。
こんな方に読んでほしい記事です
- 住宅を購入して団信に加入した(する予定の)方
- 「団信があれば生命保険は不要」という話の真偽を知りたい
- 保険料の無駄をなくして、家計を軽くしたい
- 遺族年金も含めて、必要な保障額を正しく把握したい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
団信がカバーするもの・しないもの
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合に、保険金でローン残高が完済される保険です。
民間の金融機関では、加入がローン契約の条件になっているのが一般的で、保険料は金利に含まれている形が主流です。
では、団信は何を守り、何を守らないのか。
ここがこの記事の出発点です。
| 団信でカバーされるか | 内容 | |
|---|---|---|
| 住宅ローンの残高 | ○ | 死亡・所定の高度障害状態のとき、保険金で完済されます |
| がん・心筋梗塞・脳卒中のときの残高 | △ | がん団信・三大疾病団信などの特約を付けた場合のみ |
| 遺された家族の生活費 | × | 一切カバーされません |
| 子どもの教育費 | × | 一切カバーされません |
| 葬儀費用・当面の予備費 | × | 一切カバーされません |
| 家の維持費(固定資産税・修繕費) | × | 家は残りますが、維持費はかかり続けます |
整理すると、こういうことです。
団信は「住居費の保障」であって、「生活の保障」ではありません。
だからこそ、生命保険は「ゼロにする」のではなく「適正なサイズに縮める」のが正解になります。
住宅購入が「保険見直しの絶好機」と言われる理由
生命保険の必要保障額のうち、最も大きな割合を占めるのが住居費です。
賃貸なら家賃を、持ち家ならローン返済を、遺された家族が払い続ける前提で設計するためです。
団信に入ると、この住居費の部分がまるごとカバーされます。
数千万円規模の死亡保障が、不要になるということです。
【試算】団信で必要保障額はいくら減るか
実際の数字で確認します。
次のご家庭で、夫に万が一のことがあった場合を計算しました。
- 夫40歳(会社員・年収600万円)/妻38歳(パート・年収150万円)/子1人(8歳)
- 生活費 月30万円
- 持ち家(住宅ローンの残高3,000万円・団信あり)
必要保障額は「遺された家族の支出」から「収入」を引いて求めます。
※ ローンの返済は団信でカバーされるため、支出に含めていません。妻が65歳になるまでの37年間で計算しています。
この2つの差が、生命保険で備えるべき金額です。
(5,328万円)が上乗せ
6,738 万円
必要な死亡保障
団信で消える
2,520 万円
必要な死亡保障
団信によって、必要保障額は約4,200万円減ります
※ このご家庭の条件による試算です。生活費・教育費・配偶者の収入・貯蓄額によって必要保障額は大きく変わります。
4,200万円分の死亡保障は、削れます。
けれども2,520万円分は、まだ必要です。
これが「減らせるがゼロにはできない」の中身です。
FP伊藤この計算をお見せすると、多くの方が「思ったより残るんですね」とおっしゃいます。
ローンが消えても、生活費と教育費は消えないからです。
特に教育費は1,000万円規模。ここを保険で守れているかが分かれ目になります。
ご自身の数字で一度計算してみてください。
必要保障額は、年々減っていきます
もうひとつ、大事な性質があります。
必要保障額は時間とともに小さくなるということです。
お子さまが成長すれば残りの教育費は減り、遺族が生活する期間も短くなっていくためです。
※ 必要保障額の減り方をイメージした試算です。実際の推移はご家庭の状況によって異なります。
この性質が、保険選びに直結します。
| 定期保険 | 収入保障保険 | |
|---|---|---|
| 保険金の受け取り方 | 一括で受け取る | 毎月、給料のように受け取る |
| 保障額の推移 | 契約期間中は一定 | 時間とともに減っていく |
| 必要保障額との相性 | 後半は過剰になりやすい | 実態に近い |
| 保険料 | 収入保障保険より高め | 同じ保障なら安い |
必要保障額が減っていくのに、定期保険は保障額が一定です。
後半は、使わない保障に保険料を払い続けることになります。
収入保障保険は、この減り方に合った仕組みになっています。
遺族年金はいくらもらえるか——2026年度の金額
必要保障額を計算するうえで、収入側の柱になるのが遺族年金です。
2026年度の金額を確認しておきましょう。
※ 2026年度の額です。前年度から約1万5,600円の増額となりました。昭和31年4月1日以前生まれの方は基本額が84万4,900円になります。
会社員・公務員の場合は、これに遺族厚生年金が上乗せされます。
金額は亡くなった方の収入と加入期間で決まりますが、加入期間が25年未満でも25年とみなして計算される最低保証があります。
世帯タイプ別に、実際の年額を並べてみます。
※ 亡くなった方の年収を600万円として計算した試算です。遺族厚生年金の額は収入・加入期間によって異なります。正確な見込額は年金事務所またはねんきんネットでご確認ください。
子がいない世帯では、遺族基礎年金が支給されません。
遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に支給される年金です。お子さまがいない場合、会社員なら遺族厚生年金だけ(月5万円台)、自営業ならゼロになります。この差は、必要保障額に直結します。
また、お子さまが18歳になった年度末で遺族基礎年金は終了します。
その後は遺族厚生年金だけになるため、収入は大きく下がります。
先ほどの試算で「子の独立後 年61.7万円」としていたのは、この部分です。
2028年4月、遺族年金が変わります
ここは、まだあまり知られていない重要な変更です。
2025年に成立した年金制度改正により、2028年4月から遺族厚生年金の仕組みが変わります。
- 子のいない配偶者への給付が5年間の有期に — 20代〜50代で子のいない配偶者が受け取る遺族厚生年金は、原則5年間で終了します
- 中高齢寡婦加算が段階的に廃止 — 40歳以上65歳未満の子のない妻に支給されていた年約62万円が、2028年4月から25年かけて縮小されます
- 収入要件の撤廃 — これまでの収入要件がなくなり、同一生計であれば受給できるようになります
- 男女差の解消 — 夫が受給する場合の年齢要件が見直されます
※ 2025年の年金制度改正による内容で、施行は2028年4月です。経過措置が設けられるため、実際の影響は世代によって異なります。詳しい内容は日本年金機構または年金事務所でご確認ください。
この改正の影響を、金額で見てみます。
1,233万円の減少になります
※ 亡くなった方の年収を600万円として計算した試算です。経過措置により、実際の受給額は施行時期と年齢によって異なります。
さらに、中高齢寡婦加算(年約62万円)も段階的になくなります。
40歳から65歳までの25年間で1,550万円分にあたる保障です。
お子さまのいないご夫婦は、この改正を前提に保障を考えてください。
公的な保障が減る分、民間の生命保険で備える必要が高まります。特に住宅を購入して団信に入り、「これで保険は減らせる」と考えていた方は、遺族年金の減少分を織り込んで計算し直す必要があります。



お子さまのいないご夫婦の相談では、必ずこの話をします。
「団信があるから死亡保障はいらない」と考えていた方が、計算すると足りないのです。
ローンは消えても、遺された配偶者の生活費は残ります。
そして2028年からは、その支えになる遺族厚生年金が5年で終わります。
見直しの3ステップと、失敗しないための注意点
では、具体的にどう進めればよいのか。
3つのステップで整理します。
失敗しないための4つの注意点
見直しで、家計はどれだけ軽くなるか
生命保険文化センターの調査では、世帯の年間払込保険料の平均は約37万円(月3.1万円)とされています。
住宅購入を機に保障を適正化すると、どれくらい変わるでしょうか。
| 削減額 | 年間 | 20年間 | 30年間 |
|---|---|---|---|
| 月5,000円 | 6万円 | 120万円 | 180万円 |
| 月1万円 | 12万円 | 240万円 | 360万円 |
| 月1.5万円 | 18万円 | 360万円 | 540万円 |
月1万円の削減は、30年で360万円。
国立大学の学費(約243万円)を超える金額です。
保障を削るのではなく、重複をなくすだけでこの効果が生まれます。
2026年分は、生命保険料控除も拡充されています
23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の所得税の上限が4万円から6万円に引き上げられました。
年収600万円のご家庭なら、年8,800円ほどの軽減になります。
ただし、すでに他の保険で控除枠を使い切っている場合は効果がありません。
年末調整の書類で、一般の区分の合計が年8万円を超えているか確認してみてください。
まとめ|団信は「ローンの保障」、生命保険は「生活の保障」
住宅購入は、人生で最も大きな「保険の見直しの機会」です。
団信という強力な保障を得た今、重複を整理して家計を軽くできます。
そして浮いたお金は、教育費や老後資金の積立に回せます。
守りの整理が、攻めの原資に変わるということです。
いくら削れて、いくら残すべきか。数字で確認しませんか
伊藤FPオフィスでは、団信の保障内容と遺族年金の見込額をもとに、ご家庭の必要保障額を計算しています。
そのうえで、今加入している保険のどこが重複しているかを整理します。
保険商品を販売していないため、見直しを口実に別の保険をおすすめすることはありません。
- 団信・遺族年金を織り込んだ必要保障額の試算
- いま加入中の保険の重複チェックと整理プラン
- 2028年の遺族年金改正を踏まえた保障の設計
- 住宅ローン・教育費・老後資金まで含めた家計全体の確認
- 保険を販売しない独立系FPによる中立な整理
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 団信は、どんな場合に保険金が支払われますか?
基本の団信は「死亡」と「所定の高度障害状態」が対象です。がん・急性心筋梗塞・脳卒中などをカバーするには、がん団信や三大疾病団信といった特約が必要になります(金利の上乗せがある場合が一般的です)。「所定の状態」の定義は商品ごとに違いますので、まずはご自身の契約内容を「団信のしおり」で確認することから始めてください。
Q. 妻(配偶者)が亡くなった場合、団信は機能しますか?
団信が機能するのは、ローンの契約者に万が一があった場合だけです。夫の単独ローンなら、妻が亡くなってもローンはそのまま残ります。共働きで妻の収入が家計を支えている場合や、育児・家事を外部サービスに頼ることになる場合を考えると、契約者でない側の保障も必要になるケースが多くあります。
Q. 子どもがいない夫婦の場合、保障はどう考えればいいですか?
むしろ手厚めに考える必要があります。遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に支給される年金のため、お子さまがいない場合は支給されません。会社員なら遺族厚生年金だけで月5万円台、自営業ならゼロです。さらに2028年4月からは、子のいない配偶者への遺族厚生年金が原則5年間の有期給付になります。40歳の配偶者なら、受給総額が1,542万円から308万円に減る計算です。
Q. 住宅ローンを完済したら、生命保険は不要になりますか?
完済すると団信は終了します。その時点でお子さまが独立していれば必要保障額はかなり小さくなりますが、配偶者の生活費、葬儀費用、相続への備えなど、目的によっては保障が残ります。完済のタイミングでも「遺族の支出−収入」で必要額を計算し直すのが基本です。
Q. がん団信を付けたら、民間のがん保険は不要ですか?
役割が違います。がん団信がカバーするのは「ローンの残高」です。治療費、収入の減少、通院にかかる費用はカバーされません。がん団信を付けた分、民間のがん保険を軽くする調整はできますが、ゼロにするかどうかは治療への備え方次第です。特に自営業の方は傷病手当金がないため、収入減への備えを厚めに考える必要があります。
Q. 定期保険と収入保障保険、どちらを選ぶべきですか?
必要保障額が年々減っていく性質を考えると、収入保障保険のほうが実態に合っています。同じ保障内容でも保険料は安くなるのが一般的です。一方で、まとまった資金がすぐに必要になる可能性がある場合(住居の移転、事業の整理など)は、一括で受け取れる定期保険にも意味があります。両方を組み合わせる形も選択肢です。
Q. 保険の見直しは、いつやるのがいいですか?
住宅購入・団信への加入は、最も効果の大きいタイミングのひとつです。ほかにも、お子さまの誕生(教育費の保障を上乗せする時期)、お子さまの独立(教育費の保障が不要になり大幅に減らせる時期)、転職・独立(勤務先の保障が変わる時期)、更新型の保険の更新前(保険料が上がる前に構造から見直す)が挙げられます。ライフイベントのたびに確認する習慣をつけておくと、無駄が溜まりません。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。保険商品の販売を行わない中立な立場で、住宅購入・保険見直し・ライフプラン設計の相談を行っています。保険会社での実務経験を活かし、入りすぎた保険を適正化して家計を軽くする相談を得意としています。
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の出典・注意事項をみる
・日本年金機構「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」(2026年度の年金額)
・厚生労働省「年金制度改正法」(2025年成立・遺族年金の見直しは2028年4月施行)
・生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
・国税庁「生命保険料控除」
【注意事項】
本記事の必要保障額はすべて試算です。夫40歳(会社員・年収600万円)/妻38歳(パート・年収150万円)/子1人(8歳)/生活費月30万円という条件で計算しており、ご家庭の状況によって必要な保障額は大きく異なります。遺族年金の金額は2026年度の額をもとにした概算であり、実際の受給額は加入期間・収入・家族構成によって変わります。正確な見込額は年金事務所またはねんきんネットでご確認ください。2028年4月施行の遺族年金の見直しには経過措置が設けられるため、実際の影響は世代・施行時の年齢によって異なります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品の勧誘・推奨を行うものではありません。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

