住宅ローン返済中にiDeCoを続けるべき?FPが解説

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「住宅ローンを組んだあとも、iDeCoは続けた方がいいの?」

住宅購入後にこうした疑問を持つ方は少なくありません。

毎月の返済が始まり、家計が変わる中で「iDeCoの掛金まで払い続けるのは苦しい」「でもやめると損をしそう」という状況に悩む方が多いのが現実です。

さらに、iDeCoと住宅ローン控除を両方使うと、かえって節税効果が薄れてしまうケースがあることをご存知でしょうか?

これを知らずに「ダブルで節税できている」と思い込んでいる方も多いのが実情です。

この記事では、住宅ローン返済中のiDeCoの賢い活用方法を、FPの視点から丁寧に解説します。

  • iDeCoと住宅ローン控除が「バッティング」する仕組み
  • バッティングが起きやすい条件と確認方法
  • iDeCoの掛金を調整・停止する場合のデメリット
  • 住宅ローン返済中のiDeCoとの上手な付き合い方
この記事を書いた人

伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス代表

【保有資格】

  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
  • CFP®︎ CERTIFIED FINANCIAL PLANNER
  • 宅地建物取引士
  • 証券外務員1種
目次

iDeCoと住宅ローン控除の仕組みをおさらい

iDeCoと住宅ローン控除の仕組みをおさらい

まず、それぞれの税制優遇の仕組みを整理しておきましょう。

iDeCoの節税効果:「所得控除」

iDeCo(個人型確定拠出年金)に掛金を拠出すると、その全額が所得控除の対象になります。所得控除とは、課税の対象となる所得(課税所得)を減らす仕組みです。課税所得が減ると、そこにかかる所得税・住民税が少なくなります。

たとえば年収600万円の会社員がiDeCo掛金を月2万円(年24万円)拠出した場合、課税所得が24万円分減り、所得税(税率20%なら)で約4万8,000円、住民税(税率10%)で約2万4,000円、合計約7万2,000円の節税になります(試算例、個人の状況により異なります)。

住宅ローン控除の節税効果:「税額控除」

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高の0.7%(2022年〜2025年入居の場合)が税額控除されます。税額控除とは、計算した所得税の金額から直接差し引く仕組みです。

住宅ローン控除は所得税で引き切れない場合、住民税からも一部差し引けます(住民税からの控除上限:課税所得の7%または13万6,500円のいずれか小さい方)。

なお、住宅ローン控除は実際に住んでいる家に適用されるという要件があります。賃貸に出している家や、購入後に住んでいない家には適用されません。

比較項目iDeCo(所得控除)住宅ローン控除(税額控除)
控除の種類所得控除税額控除
計算のタイミング課税所得を計算する段階(先)税額を計算した後(後)
節税の仕組み課税所得を減らす → 税額が下がる算出した税額から直接差し引く
使い切れない場合基本的に損しない所得税で引き切れなければ住民税から一部控除

知らないと損!iDeCoと住宅ローン控除が「バッティング」する仕組み

iDeCoと住宅ローン控除がバッティングする仕組み

ここが最も重要なポイントです。iDeCoと住宅ローン控除を両方使うと、場合によっては住宅ローン控除の恩恵が十分に受けられないことがあります。

なぜバッティングが起きるのか

計算の順番がポイントです。

  1. iDeCoの所得控除で課税所得が減る
  2. 課税所得が減った結果、所得税額が少なくなる
  3. 住宅ローン控除(税額控除)で差し引ける税額が減ってしまう
  4. 差し引き切れなかった住宅ローン控除は住民税から一部控除されるが、住民税からの控除には上限がある(課税所得の7%または13万6,500円の小さい方)
  5. 結果として、住宅ローン控除を「使い切れない」状態になることがある

つまり、iDeCoが強力に税額を下げすぎると、住宅ローン控除の「控除枠」が余ってしまい、せっかくの節税効果が薄れてしまうのです。

FP伊藤

iDeCoは強力な控除の効果を持ちますが、その反面、解約にも強い制限があります。

バッティングが起きやすい条件

以下の条件が重なると、バッティングが起きやすくなります。

  • 年収が比較的低い(〜400万円台):もともとの所得税額が少ないため、iDeCoで税額が下がると住宅ローン控除が余りやすい
  • 住宅ローンの残高が多い(年末残高2,000万円以上):住宅ローン控除の金額が大きいほど、控除しきれないリスクが上がる
  • iDeCoの掛金が多い(月2万円以上):所得控除の金額が増えるほど、所得税額が下がる
  • 他の所得控除も多い(ふるさと納税・医療費控除など):複数の所得控除が重なると、所得税額がさらに少なくなる

バッティングの目安確認方法

確定申告書や源泉徴収票を確認し、「住宅ローン控除額(控除しきれない金額)がある」場合は要注意です。

源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除可能額」と「住宅借入金等特別控除の額」の数字を比べて、前者の方が大きければ控除し切れていないことを示します。この差額分が「もったいなかった住宅ローン控除」です。

住宅ローン返済中のiDeCoの3つの選択肢

住宅ローン返済中のiDeCoの3つの選択肢

バッティングの問題も踏まえ、住宅ローン返済中のiDeCoについて、主な選択肢を整理します。

選択肢①:掛金を減額して続ける(最もお勧め)

iDeCoの掛金は、年に1回変更できます。最低掛金は月5,000円です。

住宅ローン返済が始まった家計の負担を考えながら、「月2万円→月1万円に減額する」「月1万円→月5,000円に減額する」といった調整が可能です。

少額でも続けることのメリットは大きいです。iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに、積み立てた期間(加入年数)が退職所得控除の計算に使われます。加入年数が長いほど受け取り時の税負担が少なくなるため、掛金を減らしてでも続ける価値があります。

選択肢②:掛金を停止して運用指図者になる

家計がどうしても厳しい場合、掛金の拠出を停止して「運用指図者」として積み立て済みの資産だけを運用し続けることもできます。

ただし、掛金停止には以下のデメリットがあります。

デメリット内容
所得控除が受けられなくなる掛金拠出が止まるため、節税効果がゼロに
口座管理手数料がかかる運用指図者でも毎月数百円の手数料が発生(金融機関による)
退職所得控除の算定期間に含まれない停止期間は「加入年数」に算入されず、受け取り時の控除額が減る可能性がある
再開時に手続きが必要拠出を再開する際は改めて加入申し込み手続きが必要
FP伊藤

運用指図者になっても、これまで積み立てた分の運用は継続します。毎月の掛け金の支払いを止めながら、預けた積み立て分を運用する方法です。

選択肢③:そのまま続ける

年収が高く、住宅ローン控除との「バッティング」が起きていない場合は、現状の掛金をそのまま続けることが最善のケースもあります。

特に年収600万円以上で、iDeCoの掛金が少ない(月1万円程度以下)場合は、バッティングリスクが低く、iDeCoの節税効果を十分に享受できることが多いです。

掛金調整の目安:年収・ローン残高別の考え方

掛金調整の目安

自分の状況に当てはめた判断の目安をまとめました。実際には個人の状況により大きく異なりますので、あくまで参考として確認してください。

年収の目安ローン残高の目安iDeCoの考え方
〜400万円台2,000万円以上バッティングリスク高め。掛金を月5,000〜1万円程度に抑える検討を
500万円前後2,000万〜3,000万円状況次第。確定申告・源泉徴収票で控除残高を確認する
600万円以上3,500万円以上バッティングしにくいが、他の控除も含めてトータルで確認
700万円以上どの水準でも所得税率が高いためiDeCoの節税効果が大きく、続けるメリットが高い

※ 上記はあくまで目安です。ふるさと納税・医療費控除・扶養控除なども影響するため、個別の確認が必要です。

住宅ローン返済中のiDeCoとの上手な付き合い方

住宅ローン返済中のiDeCoとの上手な付き合い方

① 毎年の源泉徴収票・確定申告書をチェックする

バッティングが起きていないかを確認するには、毎年の源泉徴収票や確定申告書を見ることが一番確実です。「住宅借入金等特別控除可能額」と「住宅借入金等特別控除の額」の差を確認しましょう。差がある(=控除しきれていない)場合は、iDeCoの掛金を見直す余地があります。

② 住宅ローン返済初期はバッティングリスクが高い

住宅ローン控除は、残高の大きい返済初期(購入後1〜10年程度)に控除額が大きくなる傾向があります。一方で、ローン返済が進むと残高が減り、控除額も減っていきます。

そのため、返済初期ほどバッティングに注意し、残高が減ってきた後半はiDeCoの掛金を増やしていくという段階的な調整も有効な考え方です。

③ iDeCoをやめてしまうのは最終手段

iDeCoを完全に解約(脱退)できる条件は非常に限られており、通常は60歳になるまで解約できません。選択肢は「減額」「停止(運用指図者)」の2つです。

「掛金を払えなくなりそう」と感じた段階で、まず最低額(月5,000円)への減額を試みることをお勧めします。それでも苦しければ停止を検討しますが、停止中も手数料はかかる点に注意が必要です。

よくある質問

よくある質問

Q1. iDeCoと住宅ローン控除は同時に使えますか?

A. はい、制度上は両方同時に利用できます。ただし、iDeCoの所得控除が大きすぎると住宅ローン控除を使い切れない「バッティング」が起きる可能性があります。年収や住宅ローン残高に応じて、iDeCoの掛金額を調整することが大切です。

Q2. iDeCoの掛金を停止すると、積み立てたお金はどうなりますか?

A. 積み立て済みの資産は引き続き「運用指図者」として運用できます。60歳以降に受け取ることは変わりません。ただし、停止中は所得控除が受けられず、口座管理手数料がかかり、退職所得控除の算定期間にも含まれないというデメリットがあります。

Q3. 住宅ローン返済中にiDeCoを始めることはできますか?

A. はい、可能です。2022年の法改正で企業年金のない会社員は月2万3,000円まで拠出できます。住宅ローン返済中でも、家計に余裕があれば少額からiDeCoを始めることで老後資金の準備と節税を同時に進められます。まずは月5,000〜1万円程度でスタートし、状況を見ながら増やしていく方法が無理のない始め方です。

Q4. iDeCoと住宅ローン控除の最適な組み合わせを知りたい場合は?

A. 年収・住宅ローン残高・iDeCo掛金額・他の控除を組み合わせた計算が必要なため、FP(ファイナンシャルプランナー)や税理士への相談が最も確実です。FP相談では、住宅ローン返済プランとiDeCo・新NISAの活用をトータルで設計できます。

まとめ:住宅ローン返済中のiDeCoは「調整しながら続ける」が基本

まとめ 調整しながら続ける

住宅ローン返済中のiDeCoについて、整理しておきたいポイントを振り返ります。

  • iDeCoは「所得控除」、住宅ローン控除は「税額控除」で仕組みが異なる
  • iDeCoの掛金が多いと住宅ローン控除が使い切れない「バッティング」が起きる可能性がある
  • 年収が低い・住宅ローン残高が多い・iDeCo掛金が多いほどバッティングリスクが高まる
  • 停止するとデメリットが多いため、まずは「減額」を検討する
  • iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、住宅購入前から掛金設定を検討しておくことが大切

「止めるか・続けるか」の二択で悩む前に、自分の家計に合った掛金額を見つけることが最善策です。住宅ローンとiDeCoの最適な組み合わせは、家計全体をトータルで見てこそ判断できます。

住宅ローン返済中のiDeCo活用法や、住宅ローン控除との最適な組み合わせについて、「わが家の場合はどうすればよいか」を具体的に知りたい方は、伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断をご利用ください。

住宅ローンの返済プランと合わせて、老後資金・教育費の準備までトータルでプランニングします。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品・サービスの購入や契約を勧めるものではありません。税制は改正される場合があります。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

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