会社員が働けなくなったとき、傷病手当金で額面の3分の2が支給されます。
ただし、社会保険料は引かれ続けます。
手取りで見ると、月10.4万円の不足です(額面40万円の場合)。
そして1年6ヶ月で、傷病手当金は終わります。
この記事では、公的保障の切れ目と、それをどう埋めるかをお伝えします。
- 傷病手当金があっても、手取りは月10.4万円不足します(額面40万円)
- 1年6ヶ月で傷病手当金は終わり、障害年金までに空白が生じ得ます
- 自営業・フリーランスは傷病手当金がなく、収入がそのまま不足額になります
- 選ぶときは精神疾患・免責期間・給付期間・在宅療養の4点を確認します
こんな方に読んでほしい記事です
- 就業不能保険に入るべきか迷っている
- 傷病手当金だけで足りるのか知りたい
- 自営業・フリーランスで、働けなくなったときが不安
- すすめられた商品が自分に合っているか確認したい
就業不能保険とは、どういう商品か
就業不能保険とは、病気やけがで長期間働けない状態になったとき、毎月一定額の給付金を受け取れる保険です。
死亡保険は「亡くなったあと」の保障ですが、就業不能保険は「生きているが働けない状態」の保障です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 給付の対象 | 病気・けがで、所定の就業不能状態が続いた場合 |
| 給付額 | 月10万円・15万円・20万円など、加入時に設定します |
| 免責期間(待機期間) | 就業不能になってから給付が始まるまでの期間(60日・90日・180日など) |
| 給付期間 | 2年・5年・60歳まで・65歳までなど |
| 就業不能状態の定義 | 商品によって大きく異なります(入院のみか、在宅療養を含むか) |
下の3つは、商品によって条件が大きく違います。
同じ「就業不能保険」でも、中身は別物と考えてください。
なお、似た商品に所得補償保険があります。
| 就業不能保険 | 所得補償保険 | |
|---|---|---|
| 扱う会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
| 給付の形 | 契約時に決めた定額 | 実際の収入に応じた金額 |
| 期間の傾向 | 長期(60歳までなど)の設定が中心 | 1〜2年など短期の設定が多い |
| 向いている方 | 長期の就業不能に備えたい方 | 収入が変動する自営業・フリーランス |
どちらが合うかは、働き方と備えたい期間で変わります。
【核心】公的保障の時間軸と、その切れ目
民間の保険を考える前に、公的保障がいつ・どこまで支えてくれるかを確認します。
会社員が働けなくなった場合の流れです。
1年6ヶ月を過ぎたあとが、最も不安定な時期です。
傷病手当金は終わり、障害年金はまだ決まっていない。この期間に収入が途切れる可能性があります。さらに、障害年金は等級に該当しなければ支給されません。「働けないが、障害年金の等級には当たらない」という状態もあり得ます。
就業不能保険を検討する意味は、ここにあります。
公的保障が薄くなる時期を、民間の保険で埋めるという考え方です。
FP伊藤ご相談では「傷病手当金があるから大丈夫」というお話をよく伺います。
確かに1年6ヶ月は支えてもらえます。
問題は、その先です。
18ヶ月で終わり、障害年金が決まるまでは数ヶ月かかることもあります。
しかも、障害年金は必ず受け取れるものではありません。
この「切れ目」をどう考えるかが、判断の分かれ目になります。
自営業・フリーランスは、前提が違います
傷病手当金は、健康保険(会社員・公務員)の制度です。
国民健康保険には、原則としてありません。
つまり、働けなくなった時点で収入が止まります。
会社員のような1年6ヶ月の猶予がありません。
【計算】いくらの保障が必要か
必要な金額は、公的保障との差額で決まります。
会社員の場合(額面40万円)
| 月額 | 備考 | |
|---|---|---|
| 通常時の手取り | 31.2万円 | 額面40万円 × 78% |
| 傷病手当金(額面の3分の2) | 26.7万円 | — |
| 社会保険料を引いた実質 | 20.8万円 | 健康保険料・厚生年金保険料は引き続き負担します |
| 不足額 | 10.4万円 | この分を埋めることを考えます |
※ 傷病手当金は非課税ですが、社会保険料は負担が続きます。社会保険料は前年の報酬をもとに決まるため、実際の控除額は異なります。残業代や賞与の扱いによっても支給額は変わります。
月10万円の保障があれば、傷病手当金の期間の不足はほぼ埋まる計算です。
ただし、これは1年6ヶ月までの話です。
傷病手当金が終わると、不足は月31.2万円に広がります。
自営業・フリーランスの場合
傷病手当金がないため、計算はもっと単純です。
| 月の収入 | 働けなくなったときの不足額 |
|---|---|
| 30万円 | 30万円 |
| 40万円 | 40万円 |
| 50万円 | 50万円 |
収入がそのまま不足額になります。
会社員より、必要な保障額も期間も大きくなります。
生活防衛資金があれば、保険料を下げられます
手元の資金が厚いほど、免責期間を長く設定できます。
免責期間が長いほど、保険料は下がります。
| 手元の資金(生活費30万円の場合) | 対応できる期間 | 選べる免責期間の目安 |
|---|---|---|
| 90万円 | 3ヶ月 | 60日〜90日 |
| 180万円 | 6ヶ月 | 180日 |
| 360万円 | 12ヶ月 | 180日以上も検討可 |
まず貯蓄、足りない分を保険で。
この順番で考えると、保険料を抑えられます。
選ぶときに確認する4つのこと
同じ「就業不能保険」でも、条件は大きく異なります。
次の4点は、必ず約款やパンフレットで確認してください。
「就業不能状態」の定義は、商品ごとに異なります。
「まったく働けない状態」を条件とする商品もあれば、「所定の障害状態」を条件とする商品もあります。軽い仕事ならできる状態では、給付されないことがあります。支払われる条件を、契約前に必ず確認してください。
ハーフタイプという設計もあります
就業不能になってから一定期間(1年6ヶ月など)は給付額を半額とし、その後に満額を給付する商品があります。
会社員の場合、傷病手当金がある期間は半額でも足りることが多く、保険料を抑えられます。
公的保障との重なりを考えた設計です。
必要な人・不要な人
団信の全疾病保障と重複していないか、あわせて確認してください。


専業主婦(主夫)の場合
給与収入がないため、「就業不能」の判定が難しい面があります。
ただし、働けなくなれば支出は増えます。
家事代行、保育料の増加、外食が増えることによる食費の上昇。
月7万円ほどの支出増になることもあります。
家事・育児ができない場合の費用を補う商品もあります。
小さなお子さんがいる、介護が必要なご家族がいるといった場合は、検討する価値があります。
パート・派遣の方の傷病手当金
勤務先の健康保険(社会保険)に加入していれば、パート・派遣の方も傷病手当金の対象になります。
加入の要件は、労働時間や雇用期間の見込みなどによって決まります。
扶養に入っている場合や国民健康保険の場合は、対象外です。
ご自身がどちらに加入しているか、保険証で確認してください。
まとめ|公的保障の切れ目を、どう埋めるか
就業不能保険は、全員に必要でも全員に不要でもありません。
大切なのは、公的保障でいくらカバーできるかを先に確認し、不足する部分だけを民間の保険で補うことです。
会社員なら、傷病手当金の期間は月10.4万円の不足。
その後は、月31.2万円の不足になります。
どの期間を、いくら埋めたいのか。
そこから金額と期間を決めてください。
必要な保障額を、一緒に計算しませんか
就業不能保険の金額を決めるには、公的保障といまの家計を把握している必要があります。
傷病手当金でいくら入るのか、その金額で住居費と生活費をまかなえるのか。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、収入が減った場合を含めて、90歳までの貯蓄残高の推移を作成します。
加入中の保険や団信の特約と重複していないかも、あわせて確認します。
保険の販売手数料を受け取っていないため、特定の保険をおすすめすることも、解約を勧めることもありません。
- 働けなくなった場合の収入と、不足額の計算
- 加入中の保険・団信の特約との重複チェック
- 生活防衛資金でまかなえる期間の確認
- 教育費のピーク時・完済時の貯蓄残高
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- ご夫婦で見返せる資料をお渡しします
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 傷病手当金があれば、就業不能保険は不要ですか?
傷病手当金は額面の3分の2ですが、社会保険料は引き続き負担します。額面40万円の方なら、通常の手取り31.2万円に対して実質20.8万円。月10.4万円の不足です。さらに支給は最長1年6ヶ月で終わります。貯蓄でこの不足を埋められるかどうかで判断してください。
Q. 1年6ヶ月を過ぎたら、どうなりますか?
障害年金に該当すれば支給されますが、注意点が2つあります。1つは、障害認定日(原則、初診日から1年6ヶ月経過した日)以降に請求し、審査を経て支給が決まるまで数ヶ月かかることがある点。もう1つは、障害の程度が等級に該当しなければ支給されない点です。この時期が最も不安定になります。
Q. 自営業ですが、必要度は高いですか?
高くなります。傷病手当金は健康保険(会社員・公務員)の制度で、国民健康保険には原則としてありません。働けなくなった時点で収入が止まり、会社員のような1年6ヶ月の猶予もありません。免責期間は短め、給付期間は長めの設計が合います。所得補償保険(損害保険会社)も含めて比べてください。
Q. いくらの保障をつければよいですか?
公的保障との差額で決めます。会社員(額面40万円)なら、傷病手当金の期間は月10.4万円の不足。月10万円の保障があれば、この期間の不足はほぼ埋まります。1年6ヶ月を過ぎると不足は月31.2万円に広がるため、どの期間を埋めたいかで金額と給付期間を決めてください。
Q. 精神疾患は対象になりますか?
商品によって異なり、対象外としている商品もあります。対象に含む場合でも、給付期間が短く設定されている(18ヶ月までなど)ことがあります。精神疾患を原因とする休職は少なくないため、約款やパンフレットで必ず確認してください。
Q. 免責期間は何日にすればよいですか?
働き方と手元資金で決まります。会社員は傷病手当金が1年6ヶ月あるため、免責を長め(180日など)にして保険料を抑える設計ができます。自営業は収入がすぐ途切れるため、短め(60日など)が向きます。生活防衛資金が180万円(生活費30万円×6ヶ月)あれば、免責180日でも対応できる計算です。
Q. 在宅療養は対象になりますか?
「入院中のみ保障」という商品もあるため、確認が必要です。がんの在宅療養や精神疾患での自宅療養など、入院しないまま長期間働けないことは珍しくありません。在宅療養・通院での療養が対象に含まれるかを、契約前にご確認ください。
Q. 就業不能保険と所得補償保険は何が違いますか?
どちらも働けない期間の収入を補う保険ですが、就業不能保険は生命保険会社が扱う定額給付型、所得補償保険は損害保険会社が扱い、実際の収入に応じた給付になります。期間は、就業不能保険が長期(60歳までなど)、所得補償保険が1〜2年など短期の設定が多くなります。収入が変動する自営業・フリーランスには、所得補償保険が合う場合もあります。
Q. パートですが、傷病手当金はもらえますか?
勤務先の健康保険(社会保険)に加入していれば対象になります。加入の要件は、労働時間や雇用期間の見込みなどによって決まります。扶養に入っている場合や国民健康保険の場合は対象外です。ご自身がどちらに加入しているか、保険証でご確認ください。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。不動産会社からも金融機関からも手数料を受け取らない中立な立場で、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。就業不能への備えは、公的保障がいつ切れるかを確認してから金額を決めることをお伝えしています。
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