「学資保険は返戻率105%だから、5%増えます」
この5%は、18年かけての増加です。
年あたりに直すと、0.27%になります。
では、学資保険には意味がないのでしょうか。
そうではありません。この商品の価値は、利回りとは別のところにあります。
- 返戻率105%は、年利に直すと0.27%です
- 学資保険の本質は貯蓄ではなく、払込免除特約という保険機能にあります
- 3年目に契約者に万一のことがあれば、54万円の払込で340万円を受け取れます
- 弱点はインフレ・途中解約・柔軟性の3つです
こんな方に読んでほしい記事です
- 学資保険をすすめられているが、入るべきか迷っている
- 「学資保険はいらない」という意見の根拠を知りたい
- 返戻率の意味がよく分からない
- すでに加入していて、続けるか迷っている
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
家計全体の視点から、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
学資保険とは、どういう商品か

学資保険とは、お子さんの進学時期に合わせて教育資金を受け取れる、貯蓄型の保険です。
毎月一定額を積み立て、契約時に決めた時期(18歳など)に学資金として受け取ります。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 契約者 | 保険料を払う人。通常は親(父または母) |
| 被保険者 | お子さん |
| 保険期間 | お子さんが18歳・22歳になるまでなど |
| 払込免除特約 | 契約者が死亡・所定の高度障害状態になった場合、以後の保険料が免除され、学資金は予定どおり受け取れます |
| 返戻率 | 払い込んだ保険料の合計に対して、受け取れる金額の割合 |
注目していただきたいのは、4つ目です。
これが、預貯金や投資信託にはない機能になります。
この記事の後半で、その価値を金額で確認します。
返戻率は、以前より下がっています
かつては返戻率が120%を超える商品もありましたが、長く続いた低金利の影響で水準は下がりました。
現在は、100〜105%程度が中心です(保険会社・プラン・加入時のお子さんの年齢によって異なります)。
なお、受け取り方によって返戻率は変わります。
- 18歳で一括受取 — 大学入学時にまとめて受け取る形
- 大学4年間に分けて受取 — 受取が遅くなるぶん、返戻率は高くなる傾向
- 中学・高校の入学時にも受取 — 受取が早まるぶん、返戻率は下がる傾向
「いつ必要か」を先に決めてから、受け取り方を選んでください。
【換算】返戻率を年利に直すと
返戻率は、18年かけての増加率です。
年あたりに直すと、印象が変わります。
| 返戻率(18年) | 年利に換算すると | 月1.5万円×18年=324万円の場合 |
|---|---|---|
| 100% | 0.00% | 受取324.0万円(増加なし) |
| 102% | 0.11% | 受取330.5万円(+6.5万円) |
| 105% | 0.27% | 受取340.2万円(+16.2万円) |
| 110% | 0.53% | 受取356.4万円(+32.4万円) |
| 120% | 1.02% | 受取388.8万円(+64.8万円) |
※ 18年かけて払い込み、満期に一括で受け取る場合の単純な換算です。実際には払い込みのタイミングによって、実質的な利回りはこれより高くなります。返戻率は保険会社・プラン・加入時の年齢によって異なります。
返戻率105%は、年利0.27%にあたります。
これを高いと見るか低いと見るかは、比べる相手によって変わります。
- 普通預金と比べれば — 高くなります
- 物価上昇率と比べれば — 追いつかない可能性があります
- 長期の資産運用と比べれば — 低くなります
「返戻率が高い商品を選ぶ」という発想には限界があります。
返戻率110%でも、18年で年利0.53%です。商品を比べて0.2〜0.3%の差を追うより、そもそも学資保険で準備すべき部分がいくらかを決めるほうが、影響は大きくなります。
FP伊藤ご相談で「返戻率が高いプランを探しています」と伺うことがあります。
けれども返戻率105%と110%の差は、324万円の払込に対して16.2万円。
18年で16.2万円です。
この差を探すことに時間を使うより、「わが家はいくらを、いつまでに用意したいのか」を決めるほうが先だと思っています。
【核心】本当の価値は「払込免除特約」にある


学資保険を貯蓄として見ると、利回りは高くありません。
けれども、この商品には保険としての機能があります。
契約者(親)に万一のことがあった場合、以後の保険料は免除され、学資金は予定どおり受け取れます。
月1.5万円・18年払込・返戻率105%(受取340.2万円)の契約で計算しました。
| 契約者に万一のことがあった時期 | それまでに払った額 | 免除される額 | 受け取れる学資金 |
|---|---|---|---|
| 3年目 | 54.0万円 | 270.0万円 | 340.2万円 |
| 5年目 | 90.0万円 | 234.0万円 | 340.2万円 |
| 10年目 | 180.0万円 | 144.0万円 | 340.2万円 |
| 15年目 | 270.0万円 | 54.0万円 | 340.2万円 |
| (何もなければ) | 324.0万円 | — | 340.2万円 |
340.2万円 を受け取れる
ここが、学資保険の本質です。
「増える」ことではなく、「親に何かあっても、教育資金が確保される」ことに価値があります。
同じ備えを、別の方法で用意することもできます
この機能は、収入保障保険でも代替できる場合があります。
必要な保障額は、残りの積立期間に応じて減っていくためです。
| 経過年数 | 残りの積立に必要な額 | 考え方 |
|---|---|---|
| 加入時 | 324.0万円(18年×月1.5万円) | 最も保障が必要な時期 |
| 5年後 | 234.0万円(13年分) | 残りが減っていく |
| 10年後 | 144.0万円(8年分) | 同上 |
| 15年後 | 54.0万円(3年分) | ほぼ積立が完了している |
必要額が年々減る形は、収入保障保険と重なります。
「教育資金の積立は預貯金や投資で行い、万一の備えは収入保障保険で持つ」という組み方もできます。
どちらが有利かは、保険料しだいです。
保険料は年齢・性別・保障内容によって変わるため、実際の見積もりで比べてください。
すでに生命保険に入っている場合は、重複を確認してください。
住宅を購入して団信に加入していれば、万一の場合に住居費の返済がなくなります。そのぶん、必要な保障額は下がっています。学資保険の払込免除と、生命保険の保障が二重になっていないか確認してください。
知っておきたい3つの弱点


弱点① 物価が上がると、実質的な価値が下がります
受け取る金額は、契約時に決まります。
18年の間に物価が上がっても、金額は変わりません。
| 物価上昇率 | 18年後の340万円は、今のいくらに相当するか |
|---|---|
| 年0%(変わらない) | 340.0万円 |
| 年1% | 284.2万円 |
| 年2% | 238.1万円 |
※ 物価上昇率が一定で推移した場合の計算です。実際の物価の動きを予測したものではありません。
年2%が18年続くと、340万円の価値は238.1万円相当になります。
返戻率105%(年利0.27%)では、この目減りに追いつきません。
ただし、これは「学資保険が悪い」という意味ではありません。
確実に受け取れることの代わりに、物価上昇への対応を手放している、という関係です。
弱点② 途中で解約すると、元本を下回ります
学資保険は、満期まで続けることを前提とした商品です。
| 解約の時期 | それまでの払込額 | 戻ってくる金額の目安 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 18.0万円 | 約5.4万円 | ▲12.6万円 |
| 3年 | 54.0万円 | 約32.4万円 | ▲21.6万円 |
| 5年 | 90.0万円 | 約67.5万円 | ▲22.5万円 |
| 10年 | 180.0万円 | 約162.0万円 | ▲18.0万円 |
| 15年 | 270.0万円 | 約261.9万円 | ▲8.1万円 |
※ 解約返戻金の水準は商品・経過年数によって大きく異なります。上記は一般的な傾向を示した目安です。必ず契約前に、解約返戻金の推移表をご確認ください。
18年は長い期間です。
その間に、収入が減る、住宅を購入する、お子さんの進路が変わるといったことが起こります。
「途中でやめられない前提で、月いくらまでなら続けられるか」を考えてください。
弱点③ 途中で金額を変えにくい
預貯金や積立投資なら、家計が苦しいときに積立額を減らしたり、一時停止したりできます。
学資保険では、それが難しくなります。
減額できる商品もありますが、手続きが必要で、返戻率にも影響します。
この「動かしにくさ」は、裏返せば強みでもあります。
引き出しにくいからこそ、確実に貯まるという面があります。
向いている家庭・向いていない家庭
学資保険は、必要とも不要とも一概には言えません。
ご家庭の状況によって、答えが変わります。
金額をどう決めるか
教育費のすべてを学資保険で準備する必要はありません。
大学入学時に必要な額の目安は、次のとおりです。
| 進学先 | 初年度に必要な額の目安 |
|---|---|
| 国公立大学 | 約81.8万円(入学金282,000円+初年度授業料535,800円) |
| 私立大学(文系) | 約120万円 |
| 私立大学(理系) | 約155万円 |
※ 学校・学部によって大きく異なります。受験費用、下宿する場合の住居費、教材費などは別途かかります。
「入学時にまとまって必要になる分」だけを学資保険で確保し、在学中の費用は別に準備する。
このように役割を分ける方法もあります。
ほかの方法との比較や、どう組み合わせるかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。


教育費と住宅ローンが重なる時期の家計については、こちらをご覧ください。


いくら準備すればよいのかを知りたい方は、こちらで進路別の総額を試算しています。


準備しておきたい金額は、公立か私立かで変わります。


まとめ|利回りではなく、機能で判断する


「学資保険はいらない」という意見には、根拠があります。
貯蓄の手段として見れば、利回りは高くありません。
けれども、この商品の価値は利回りではありません。
親に何かあっても教育資金が確保される、という機能です。
その機能が必要かどうか。
必要なら、学資保険と収入保障保険のどちらで持つか。
この順番で考えると、判断しやすくなります。
教育費の準備方法を、一緒に整理しませんか
教育費の準備で難しいのは、住宅ローンや老後資金とのバランスです。
学資保険に月1.5万円を回すと、その分だけ他に使えるお金が減ります。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、教育費のピーク時期を含めて、90歳までの貯蓄残高の推移を作成します。
「教育費にいくら回せるか」「いつまでにいくら必要か」を数字で確認できます。
商品の販売を前提としないご相談です。
ご相談のなかで特定の保険をおすすめすることも、解約を勧めることもありません。
- 教育費のピーク時期と、必要な金額の整理
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👨👩👧 ご相談事例・お客様の声
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よくある質問
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Q. 学資保険は、結局いらないのですか?
貯蓄の手段として見れば、利回りは高くありません。返戻率105%は年利に直すと0.27%です。ただし、この商品の価値は利回りではなく払込免除特約にあります。契約者に万一のことがあれば以後の保険料が免除され、学資金は予定どおり受け取れます。その機能が必要かどうかで判断してください。
Q. 返戻率105%なら、5%増えるということですか?
18年かけて5%増えるということです。年あたりに直すと0.27%になります。月1.5万円×18年=324万円の払込に対し、受取は340.2万円(+16.2万円)。返戻率110%の商品でも年0.53%で、105%との差は16.2万円です。
Q. 払込免除特約には、どのくらいの価値がありますか?
月1.5万円・18年払込・返戻率105%の契約で、3年目に契約者に万一のことがあった場合、払込済み54万円で、満期に340.2万円を受け取れます。10年目なら払込済み180万円で340.2万円。これは預貯金や投資信託では実現できない機能です。
Q. 収入保障保険でも代わりになりますか?
なる場合があります。必要な保障額は残りの積立期間に応じて減るため(加入時324万円→10年後144万円)、収入保障保険の形と重なります。「積立は預貯金や投資で行い、万一の備えは収入保障保険で持つ」という組み方もできます。どちらが有利かは保険料しだいなので、実際の見積もりで比べてください。
Q. 途中で解約したらどうなりますか?
元本を下回るのが一般的です。5年で解約した場合、払込90万円に対して戻りは約67.5万円(▲22.5万円)という水準になります。18年の間には収入の変化や住宅購入もあり得ます。「途中でやめられない前提で、月いくらまでなら続けられるか」で金額を決めてください。
Q. インフレに弱いというのは、どういう意味ですか?
受け取る金額は契約時に決まるため、物価が上がっても増えません。物価上昇率が年2%で18年続くと、340万円の実質的な価値は今の238.1万円相当になります。返戻率105%(年利0.27%)では、この目減りに追いつきません。確実に受け取れることの代わりに、物価上昇への対応を手放している関係です。
Q. いくらの契約にすればよいですか?
教育費のすべてを学資保険で準備する必要はありません。大学入学時に必要な額は、国公立で約81.8万円、私立大学の文系で約120万円が目安です。「入学時にまとまって必要になる分」だけを学資保険で確保し、在学中の費用は別に準備するという分け方もできます。
Q. すでに加入していますが、続けるべきですか?
途中解約は元本を下回るため、続けられる金額であれば継続を検討する価値があります。ただし家計が苦しいなら、減額できるか保険会社に確認してください(減額は返戻率に影響します)。また、住宅購入で団信に加入した場合、生命保険との重複が生じている可能性があります。保険全体を見直すよい機会です。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。家計全体の視点から、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。学資保険については、返戻率ではなく「払込免除特約が必要かどうか」からお話ししています。
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