住宅ローンは、多くの方にとって人生でいちばん大きな借入です。
ただ、迷う場面は決まっています。
予算・金利・審査・借り方・返済方法。
この記事では全体の流れを整理し、それぞれの場面で判断の基準になる数字をお伝えします。
詳しく知りたい部分は、各テーマの記事へご案内します。
- 住宅購入は6つの段階に分かれます。今どこにいるかを確認してください
- 各段階で判断の基準になる数字と、最も多い失敗を示します
- 詳しく知りたいテーマは、各記事へのリンクから進んでください
- 返済方法と返済期間の選び方は、この記事で解説します
こんな方に読んでほしい記事です
- 住宅ローンについて、何から調べればよいか分からない
- 全体の流れをつかんでから、個別のことを調べたい
- 今どの段階で、次に何をすべきか整理したい
- 元利均等返済と元金均等返済の違いを知りたい
✍️ この記事の監修者
代表・監修者
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス 代表
千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。
【全体像】住宅購入は6つの段階に分かれます
まず、全体の流れを確認してください。
ご自身が今どこにいるかが分かれば、次に何をすべきかも見えてきます。
※ 注文住宅の場合は、これに設計・建築の期間が加わります。実際の日数は物件・金融機関によって異なります。
最も多い失敗は、①を飛ばして②から始めることです。
予算を決めずに物件を見始めると、「この物件を買うにはどうすればよいか」という発想になります。借入が500万円増えると、35年の総返済額は593万円増えます。1つ上の価格帯を見てしまうと、元の予算には戻れません。
段階①②|予算を決めて、物件を探す
基準は1つです。
維持費を含めた住居費が、手取り収入の25〜30%に収まるかどうか。
| 内容 | |
|---|---|
| 住居費とは | ローンの返済額 + 維持費 |
| 維持費の目安 | マンション月36,257円/一戸建て月29,167円 (管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険) |
| 判断の基準 | 住居費が手取りの25%以内なら余裕、30%前後が標準、35%超は見直し |
| 見る収入 | 額面年収ではなく手取り(額面のおよそ78%) |
銀行の審査に通る金額とは、大きく違います。
年収600万円なら審査上限は4,234万円ですが、家計から見た適正額は2,862万円。
その差は約1,400万円です。
年収別の早見表は、こちらの記事にまとめています。

借りる前に家計の状態を確認したい方は、こちらをご覧ください。

物件価格のほかに、諸費用がかかります。
新築で物件価格の3〜7%、中古なら6〜10%程度が目安です。
そして、頭金にすべてを使わないでください。
生活費6ヶ月分(月30万円なら180万円)は生活防衛資金として手元に残します。
病気・失業・家電の故障など、購入後にも現金が必要になる場面があります。


段階③|金利と金融機関を選ぶ
「どちらが得か」ではなく「上がったときに耐えられるか」で判断してください。
判断の基準は1つです。
住居費が手取りの35%以内に収まるか
手取り40万円なら42.7%となり厳しく、50万円なら34.2%に収まります。

比べるのは金利ではありません。
「総返済額+事務手数料・保証料+団信の上乗せ」の合計です。
事務手数料には、借入額の2.2%という定率型と、3万〜5万円という定額型があります。
定率型2.2%は、金利に換算すると約0.12%分に相当します。
つまり、金利が0.12%以上低くないと、定率型のほうが高くつく計算になります。
事前審査は、2〜3行に出してください。
1行だけだと、その条件がよいのかどうか判断できません。また、1行が否決でも別の金融機関で通ることがあります。審査結果は金融機関によって変わります。
段階④|審査を通す
金融機関は、審査金利という高めの金利で返済額を計算します。
金利が上がっても返済を続けられるかを確認するためです。
そのうえで、次のような項目が見られます。
- 他の借入 — 車のローン・カードローン・奨学金・リボ払い
- 信用情報 — 過去の延滞や、直近の申込み履歴
- 勤続年数・雇用形態 — 転職直後は不利になることがあります
- 健康状態 — 団信に入れないと、ローンそのものが借りられません
- 物件の担保評価 — 再建築不可・借地権などは評価が下がります
最も効果が大きく、実行しやすいのは他の借入の完済です。
年収600万円の方が車のローン(月25,000円)を完済すると、借入可能額は605万円増える計算になります。

すでに審査に落ちてしまった方は、こちらをご覧ください。

働き方によって、審査の進め方が変わることがあります。


契約後は、家計の現状維持を徹底してください。
本審査から融資実行までの間に、車のローンを組む、転職する、クレジットカードの支払いを延滞する。これらは審査に影響し、契約が白紙になったり違約金の対象になったりします。月2.5万円の車のローンを組むだけで、借入可能額は605万円減る計算です。
段階⑤|誰の名義で、どう借りるか
共働きのご家庭では、借り方に選択肢があります。
| 借り方 | 特徴 | 団信の対象 |
|---|---|---|
| 単独ローン | 1人の収入で借りる。借入額は抑えられる | 借りた本人のみ |
| ペアローン | 夫婦が別々に契約する。借入額を増やせる | それぞれの分のみ |
| 収入合算(連帯債務) | 1本のローンを2人で借りる | 商品による(2人とも入れる商品もあります) |
| 収入合算(連帯保証) | 1本のローンを1人が借り、もう1人が保証 | 債務者のみ |
ペアローンでは、片方に万一のことがあっても相手の返済は残ります。
夫が2,000万円・妻が1,500万円を借りている場合、夫に万一のことがあっても消えるのは夫の2,000万円だけです。妻の1,500万円は、そのまま返済が続きます。借り方を決める前に、この点を確認してください。


団体信用生命保険(団信)とは、返済中に亡くなった場合などに、残りのローンがゼロになる保険です。
多くの金融機関では、借入の条件になっています。
がんや3大疾病の保障を付けると、金利が上乗せされます。
上乗せ0.2%は、借入4,000万円・35年で150万円(月3,574円相当)。
加入中の医療保険・がん保険と重複していないか、あわせて確認してください。

【基礎知識】返済方法と返済期間の選び方
ここからは、この記事で解説します。
元利均等返済と元金均等返済
返済方法には2つの方式があります。
98,800円(35年間ずっと)
家計の計画が立てやすい
多くの方がこちらを選びます
112,500円→ 83,403円
当初の負担が重い
取り扱いのない商品もあります
総返済額の差は 36万円。ただし初回は 13,700円 高くなります
※ 借入3,500万円・金利年1.0%・35年での試算です。金利が高いほど、両者の差は大きくなります。
「元金均等のほうが総額は少ない」とよく言われます。
確かにそのとおりですが、金利1.0%では差は36万円です。
一方、初回の返済額は13,700円高くなります。
当初の負担が重いぶん、審査では不利になることがあります。
金利が高い時期であれば、元金均等を検討する意味は増します。
低金利のうちは、元利均等で毎月を安定させ、余裕が出たら繰り上げ返済するという考え方が実用的です。
返済期間は何年にするか
借入3,500万円・金利年1.0%で計算しました。
| 返済期間 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息 | 35年との差 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 160,963円 | 3,863万円 | 363万円 | 利息が287万円少ない |
| 25年 | 131,905円 | 3,957万円 | 457万円 | 利息が193万円少ない |
| 30年 | 112,574円 | 4,053万円 | 553万円 | 利息が97万円少ない |
| 35年 | 98,800円 | 4,150万円 | 650万円 | — |
| 40年 | 88,500円 | 4,248万円 | 748万円 | 利息が98万円多い |
期間が短いほど利息は減りますが、毎月は重くなります。
20年にすると、35年より月62,163円多く払うことになります。
実務でおすすめしているのは、長めに借りて、繰り上げ返済で調整する方法です。
- 長く借りる — 毎月の返済額を抑えられ、家計に余裕が生まれます
- 余裕が出たら繰り上げ返済 — 結果的に期間を短くできます
- 逆はできません — 短く借りて苦しくなっても、あとから延ばすのは簡単ではありません
ただし、完済時の年齢は確認してください。
多くの金融機関で、完済時の年齢に上限(80歳など)があります。
40歳で35年ローンを組むと、完済は75歳。
退職後も返済が続く計画になっていないか、確認しておいてください。
FP伊藤ご相談では「少しでも利息を減らしたい」というお気持ちをよく伺います。
その気持ちは大切ですが、低金利のうちは利息の差が小さいのも事実です。
返済期間を35年から20年にしても、利息の差は287万円。
その代わり、毎月62,163円多く払うことになります。
毎月の余裕を確保するほうが、家計は安定します。
繰り上げ返済は、あとからでもできますから。
段階⑥|借りたあとに考えること
低金利のうちは、急ぐ必要はありません。
借入4,000万円・金利0.5%で10年目に300万円を繰り上げ返済しても、削減は37.7万円(期間短縮型)。
同じ条件で金利1.5%なら127.2万円です。
金利が上がるほど、繰り上げ返済の効果は大きくなります。
手元に資金を残しておき、金利が上がったときに使うという考え方ができます。


30代で購入すると、10〜15年後はお子さんの高校・大学の費用がかかる時期にあたります。
お子さん2人が大学生になる年の教育費は、年間219万円ほどになることがあります。
この時期に赤字になること自体は、多くのご家庭で起こります。
大切なのは、そこまでに貯蓄を作れているかどうかです。


火災保険の見直しについては、こちらで詳しく解説しています


住宅購入の流れを最初から確認したい方は、こちらをご覧ください。


まとめ|順番に進めれば、迷いません
住宅ローンは、覚えることが多いように見えます。
けれども、判断が必要な場面は6つだけです。
そして、最初の1つが最も大切です。
物件を見る前に、家計から予算を決めること。
ここさえ押さえておけば、あとの判断はぶれにくくなります。
最初の段階を、一緒に進めませんか
6つの段階のうち、最も大切なのは①予算を決めるです。
ここが決まれば、物件探しも金融機関選びも進めやすくなります。
伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、実際の手取り・支出をもとに、90歳までの貯蓄残高の推移を作成します。
「借入いくらまでなら、教育費と老後資金を確保できるか」を数字で確認できます。
不動産会社からの紹介料も、金融機関からの手数料も受け取っていません。
そのため、特定の物件や金融機関をおすすめすることはありません。
- 家計から見た「無理なく返せる借入額」の計算
- 維持費・諸費用を含めた資金計画の整理
- 収入が減った場合・金利が上がった場合の試算
- 教育費のピーク時・完済時の貯蓄残高
- 90歳までの貯蓄残高の推移を1枚の表に
- ご夫婦で見返せる資料をお渡しします
千葉県市川市を拠点に、対面・オンラインでご相談をお受けしています。
宅地建物取引士として、契約書や重要事項説明書の見方もお伝えできます。
よくある質問
気になる質問をタップすると、回答が開きます。
Q. 何から始めればよいですか?
家計から予算を決めることです。物件を見る前に済ませてください。基準は、維持費を含めた住居費が手取りの25〜30%に収まるかどうか。素敵な物件を見てしまうと「この物件を買うにはどうすればよいか」という発想になり、予算のほうが動いてしまいます。
Q. 元利均等返済と元金均等返済は、どちらがよいですか?
低金利のうちは、元利均等で問題ありません。借入3,500万円・金利1.0%・35年で、総返済額の差は36万円です。一方、元金均等は初回の返済額が13,700円高くなり、審査では不利になることがあります。金利が高い時期であれば、元金均等を検討する意味は増します。
Q. 返済期間は何年にすべきですか?
長めに借りて、余裕が出たら繰り上げ返済する方法をおすすめしています。20年にすると利息は287万円減りますが、毎月62,163円多く払うことになります。短く借りて苦しくなっても、あとから延ばすのは簡単ではありません。ただし完済時の年齢(80歳などの上限)は確認してください。
Q. 事前審査は何行に出せばよいですか?
2〜3行が目安です。1行だけだと、その条件がよいのかどうか判断できません。また審査結果は金融機関によって変わるため、1行が否決でも別のところで通ることがあります。同じ条件で申し込み、「総返済額+手数料+保証料」で比べてください。
Q. 金利は変動と固定、どちらを選ぶべきですか?
「どちらが得か」ではなく「上がったときに耐えられるか」で判断してください。基準は、金利が3%になっても住居費が手取りの35%以内に収まるかどうか。借入3,500万円で金利3.0%なら住居費は月17.09万円。手取り40万円なら42.7%で厳しく、50万円なら34.2%に収まります。
Q. 夫婦で借りると、どうなりますか?
借入額は増やせますが、注意点があります。ペアローンでは、片方に万一のことがあっても相手の返済は残ります。夫が2,000万円・妻が1,500万円なら、夫に万一のことがあっても消えるのは夫の2,000万円だけです。また、片方の収入が減ったときの影響も大きくなります。
Q. 契約後にやってはいけないことはありますか?
家計の現状維持を徹底してください。車のローンを組む、転職する、クレジットカードの支払いを延滞する。これらは本審査に影響し、契約が白紙になったり違約金の対象になったりします。月2.5万円の車のローンを組むだけで、借入可能額は605万円減る計算です。
Q. 繰り上げ返済は、早いほうがよいですか?
低金利のうちは、急ぐ必要はありません。借入4,000万円・金利0.5%で10年目に300万円を繰り上げ返済しても、削減は37.7万円(期間短縮型)。同じ条件で金利1.5%なら127.2万円です。手元に資金を残しておき、金利が上がったときに使うという考え方ができます。
この記事の監修者


証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。不動産会社からも金融機関からも手数料を受け取らない中立な立場で、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。住宅ローンのご相談では、まず「物件を見る前に予算を決める」ことからお伝えしています。
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