老後資金の計画はどうやって行う?貯蓄と投資は必要?【FPが解説】

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老後資金はいくら必要か。

この問いに、ひとつの正解はありません。

必要額を決めるのは、生活費ではなく受け取れる年金額だからです。

会社員のご家庭と自営業のご家庭では、必要額が3,000万円近く変わります。

この記事の結論
  1. 「2,000万円問題」の数字は2017年のもの。いま計算すると約1,528万円です
  2. 必要額を決めるのは年金額。会社員と自営業で約2,892万円違います
  3. 2026年度の年金は夫婦モデルで月237,279円、国民年金は満額70,608円
  4. 住宅ローンが65歳以降に残ると、必要額は跳ね上がります
  5. まず確認するのは金額より、ねんきん定期便です

こんな方に読んでほしい記事です

  • 老後資金がいくら必要なのか知りたい
  • 「2,000万円必要」と聞いて不安になっている
  • 住宅ローンと老後資金を両立できるか心配
  • いつから、いくら積み立てればよいか決めたい

✍️ この記事の監修者

伊藤FPオフィス代表 伊藤貴徳

代表・監修者

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス 代表

CFP®認定者 1級FP技能士 宅地建物取引士 証券外務員1種

千葉・東京エリアを拠点に、住宅購入前の家計相談・生命保険の見直し・ライフプラン設計を専門とする独立系FP。
銀行・保険会社とは利害関係のない中立な立場で、30〜40代の子育て世帯を中心に相談をお受けしています。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から一緒に考えることを大切にしています。

🏢 伊藤FPオフィス(千葉県・オンライン対応) プロフィール詳細を見る →
目次

「2,000万円問題」の数字は、いまは変わっています

2019年に「老後2,000万円問題」が話題になりました。

この2,000万円という数字には、はっきりした根拠があります。

当時の家計調査で、高齢夫婦の無職世帯は毎月54,520円が不足していました。

これを30年続けると、約1,963万円になります。

これが「2,000万円」の中身です。

では、いまはどうでしょうか。

2017年の調査(2,000万円問題の根拠)
月54,520円
不足額
30年間で約1,963万円
2025年の調査
月42,435円
不足額
30年間で約1,528万円

※ 総務省「家計調査」による、夫婦とも65歳以上の無職世帯の数字です。2025年平均は可処分所得221,544円に対し、消費支出263,979円となっています。

不足額は月12,085円、約22%縮んでいます。

年金額が改定されてきたことや、世帯の状況が変わったことが背景にあります。

⚠️

ただし「1,528万円あれば安心」という意味ではありません。
この数字は、あくまで平均世帯の平均的な支出から出したものです。ご自身の年金額、住まいの状況、健康状態によって必要額は変わります。平均の数字を自分の目標にしないでください。この記事では、ご自身の金額を出す方法をお伝えします。

「2,000万円問題」の経緯は、こちらでも解説しています。

必要額を決めるのは、生活費ではなく年金額です

老後資金の計算は、引き算です。

毎月の支出毎月の年金 = 毎月の不足額
不足額 × 12ヶ月 × 老後の年数 = 準備すべき金額

支出はご家庭によって大きくは変わりません。

けれども年金額は、働き方によってまったく違います。

2026年度の年金額

受け取る年金月額(2026年度)
老齢基礎年金(国民年金・満額・1人分)70,608円
夫婦2人のモデル年金(会社員世帯)237,279円
夫婦2人分の老齢基礎年金のみ(自営業世帯)141,216円

※ 2026年度(令和8年度)の年金額です。前年度から国民年金は1.9%、厚生年金は2%引き上げられました。モデル年金は、平均的な収入(平均標準報酬額45.5万円)で40年間就業した夫の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を合計した、厚生労働省が示す標準的なケースです。実際の金額は加入期間と収入によって一人ひとり異なります。

この差が、必要額を大きく変えます。

消費支出を263,979円として、30年分を計算しました。

65歳から30年間に準備すべき金額
1,528万円
会社員夫婦
(モデル年金)
4,419万円
自営業夫婦
(国民年金のみ)

※ 消費支出を263,979円として計算した試算です。会社員世帯は可処分所得221,544円との差額42,435円、自営業世帯は年金141,216円との差額122,763円をもとにしています。自営業の方には国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済など上乗せの制度があり、加入していれば必要額は下がります。

会社員世帯と自営業世帯で、準備すべき金額の差は
約2,892万円
同じ生活をしても、働き方によってこれだけ違います。
だからこそ、自分の年金額を知ることが出発点になります。

最初にすることは、ねんきん定期便を見ることです

平均値ではなく、ご自身の金額を確認してください。

毎年お誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載があります。

  • 50歳未満の方 — これまでの加入実績に応じた金額が書かれています。今後も働き続ければ、金額はここから増えます
  • 50歳以上の方 — 60歳まで今の働き方を続けた場合の見込額が書かれています。より実際に近い数字です
  • いつでも確認したい方 — 日本年金機構の「ねんきんネット」で、働き方を変えた場合の試算もできます
FP伊藤

ご相談でいちばん多いのが「年金がいくらもらえるか分からない」という状態です。
金額が分からないまま不安だけが大きくなっているケースが本当に多くあります。
ねんきん定期便を見るだけで、必要額の見当がつきます。
共働きのご夫婦なら、お二人分を合計してみてください。
思っていたより多い、という方も少なくありません。

住宅ローンが老後に残ると、必要額は跳ね上がります

ここが、30代・40代の方に最もお伝えしたい部分です。

先ほどの1,528万円という数字には、住宅ローンの返済が含まれていません。

家計調査の対象世帯は、持ち家で完済済みの方が多いためです。

65歳を過ぎてもローンが残っていると、その分が上乗せされます。

3,500万円を金利年1.0%・35年で借りた場合(月返済9.88万円)で計算しました。

借入時の年齢完済年齢65歳以降に残る返済額老後資金の目標額
35歳70歳593万円約2,105万円
40歳75歳1,186万円約2,698万円
45歳80歳1,778万円約3,290万円

※ 3,500万円を金利年1.0%・35年・元利均等返済で借りた場合の試算です。老後資金の目標額は、先ほどの1,528万円に65歳以降の返済額を加えた金額です。繰り上げ返済をすれば完済年齢は早まります。

40歳で35年ローンを組むと、完済は75歳です。

65歳から10年間、年金から月9.88万円を返し続けることになります。

必要な老後資金は1,528万円ではなく、約2,698万円になります。

⚠️

退職金で一括返済すればよい、と考える前に確認してください。
退職金の見込額は、勤務先の制度によって大きく異なります。また退職金を返済に使うと、その分の老後資金がなくなります。「退職金で返す」という計画は、退職金の金額を確認し、返済後にいくら残るかを計算してから決めてください。

逆に言えば、完済年齢を65歳までにできれば、老後の必要額は大きく下がります。

借入額を抑える、返済期間を短くする、繰り上げ返済を計画に入れる。

住宅購入の段階で決まることが、老後資金を左右します。

【計算】いつから始めると、月いくらになるか

目標額が決まったら、逆算します。

65歳までに1,500万円を用意する場合の、毎月の積立額を計算しました。

始める年齢期間運用しない場合年3%で運用できた場合年5%で運用できた場合
30歳35年月3.6万円月2.0万円月1.3万円
35歳30年月4.2万円月2.6万円月1.8万円
40歳25年月5.0万円月3.4万円月2.5万円
45歳20年月6.2万円月4.6万円月3.6万円
50歳15年月8.3万円月6.6万円月5.6万円

※ 運用に関する数字は想定利回りによる試算であり、将来の成果を保証するものではありません。元本割れの可能性があります。実際には手数料や税金の影響も受けます。

30歳から始めれば月3.6万円ですが、50歳からだと月8.3万円です。

2.3倍の差になります。

ただし、30代・40代は教育費と住宅ローンが重なる時期でもあります。

無理に老後資金を優先すると、目の前の家計が回らなくなります。

順番としては、次のようになります。

  • まず生活防衛資金 — 生活費6ヶ月分。これがないうちは、投資より預金を優先します
  • 次に教育費の見通し — 使う時期が近いお金は、値下がりしても取り返す時間がありません
  • そのうえで老後資金 — 使うまでに20年以上あるため、少額でも早く始めるほど有利になります

40代からの準備については、こちらで詳しく解説しています。

貯蓄と投資は、使う時期で使い分けます

「貯蓄と投資、どちらがよいか」という質問をよくいただきます。

どちらが優れているという話ではありません。

使う時期によって、置き場所を分けます。

使う時期別・お金の置き場所
1〜3年以内に使うお金 預金
生活防衛資金、教育費、車の買い替え、住宅購入の頭金。値下がりしたときに取り返す時間がありません。利息はほとんどつきませんが、必要なときに必ず使えることが価値になります。
10年以上使わないお金 新NISA
老後資金の中心はここになります。運用で得た利益が非課税になる制度です。必要になれば売却できるため、60歳より前に使う可能性があるお金にも対応できます。
60歳まで使わないと決められるお金 iDeCo
掛金が全額所得控除になるため、税負担のある方には効果が大きくなります。ただし原則60歳まで引き出せません。住宅購入や教育費の予定が固まってから始めても遅くありません。

老後資金は、使うまでに20年以上あることがほとんどです。

そのため、預金だけで準備すると物価の上昇に負ける可能性があります。

一方で、すべてを投資に回すのも避けてください。

65歳の直前に相場が下がると、取り崩す金額が減ります。

使う時期が近づいたら、段階的に現金へ移すことを検討してください。

💡

「老後資金のための保険」を選ぶ前に、比較してください。
個人年金保険や貯蓄型の保険にも、老後資金を準備する機能はあります。ただし、iDeCoやNISAと比べたうえで選んでください。途中で解約すると元本割れすること、受け取り時の税金の扱いが異なることを確認しておく必要があります。

個人年金保険とiDeCoの比較は、こちらで詳しく解説しています。

人生全体のお金の流れを整理する方法は、こちらでまとめています。

まとめ|平均の数字ではなく、自分の数字で考えます

この記事の要点
1 「2,000万円問題」は2017年の数字。2025年の調査では約1,528万円
2 必要額を決めるのは支出ではなく年金額
3 会社員夫婦と自営業夫婦では、必要額が約2,892万円違う
4 2026年度の年金は夫婦モデルで月237,279円、国民年金は満額70,608円
5 住宅ローンが65歳以降に残ると必要額が跳ね上がる(40歳借入で約2,698万円)
6 65歳までに1,500万円なら、30歳から月3.6万円、50歳から月8.3万円
7 最初にすることは、ねんきん定期便で自分の年金額を確認すること

老後資金の話は、大きな数字が並ぶので不安になりがちです。

けれども、計算してみると意外と見通しが立つことが多くあります。

特に会社員のご家庭は、思っていたより年金を受け取れる場合があります。

反対に、住宅ローンの完済が遅いと、想定より多く必要になります。

どちらにしても、まずご自身の数字を知ることです。

ねんきん定期便を開くところから始めてみてください。

家計全体の見通しの立て方は、こちらで解説しています。

住宅ローンと老後資金の両立を、数字で確認しませんか

老後資金で最も影響が大きいのは、住宅ローンの完済年齢です。

40歳で35年ローンを組むと、完済は75歳になります。

この判断は、購入するときにしかできません。

伊藤FPオフィスのマイホーム購入診断では、90歳までの貯蓄残高の推移を1枚の表にしてお渡しします。

教育費のピーク、ローンの完済、退職後の取り崩し。

すべてつながった形で確認できます。

金融商品を販売していないため、特定の商品や金融機関をおすすめすることはありません。

16
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よくある質問

気になる質問をタップすると、回答が開きます。

Q. 結局、老後資金はいくら必要ですか?

受け取れる年金額によって変わります。会社員のご夫婦(モデル年金月237,279円)なら30年で約1,528万円、自営業のご夫婦(国民年金のみ月141,216円)なら約4,419万円が目安です。ただしこれは平均的な支出をもとにした試算です。まずはねんきん定期便でご自身の年金額を確認してください。

Q. 「2,000万円問題」は解決したのですか?

数字は変わりました。2,000万円の根拠は2017年の家計調査で、高齢夫婦無職世帯の不足額が月54,520円だったことによります。2025年平均では月42,435円まで縮み、30年分では約1,528万円になります。ただし平均の数字であり、ご家庭ごとの必要額は別に計算する必要があります。

Q. 自分の年金額はどこで確認できますか?

毎年お誕生月に届くねんきん定期便に記載されています。50歳未満の方はこれまでの加入実績に応じた金額、50歳以上の方は60歳まで今の働き方を続けた場合の見込額が書かれています。日本年金機構の「ねんきんネット」を使えば、いつでも確認でき、働き方を変えた場合の試算もできます。

Q. 住宅ローンが老後に残るとどうなりますか?

その分が老後資金に上乗せされます。3,500万円を金利1.0%・35年で借りた場合、40歳で借りると完済は75歳。65歳以降に1,186万円の返済が残ります。老後資金の目標は1,528万円ではなく、約2,698万円になる計算です。繰り上げ返済で完済年齢を早められないか検討してください。

Q. 退職金で住宅ローンを返済してもよいですか?

計算してから決めてください。退職金を返済に使うと、その分の老後資金がなくなります。退職金の見込額を勤務先に確認し、返済後にいくら残るか、残額で不足を埋められるかを確かめてください。退職金の金額は制度によって大きく異なります。

Q. いつから準備を始めるべきですか?

早いほど毎月の負担は軽くなります。65歳までに1,500万円を用意する場合、30歳からなら月3.6万円、50歳からは月8.3万円が必要です(運用しない場合)。ただし生活防衛資金(生活費6ヶ月分)と教育費の見通しを先に確保してください。その順番を守れば、少額からでも構いません。

Q. 貯蓄と投資、どちらで準備すべきですか?

使う時期で分けます。1〜3年以内に使うお金は預金、10年以上先に使うお金は新NISA、60歳まで使わないと決められるお金はiDeCoが基本です。老後資金は使うまで20年以上あることが多いため、預金だけだと物価の上昇に負ける可能性があります。一方で全額を投資に回すと、65歳の直前に相場が下がったときに困ります。

Q. 個人年金保険で準備してもよいですか?

選択肢のひとつですが、iDeCoやNISAと比較してから判断してください。途中で解約すると元本割れすること、受け取り時の税金の扱いが制度によって異なることを確認しておく必要があります。税制上の優遇の大きさは、iDeCoのほうが有利になる場合が多くあります。

この記事の監修者

伊藤貴徳(伊藤FPオフィス代表)
伊藤 貴徳(いとう たかのり)
伊藤FPオフィス代表/CFP®・1級FP技能士・宅地建物取引士

証券会社・不動産会社・保険会社での実務を経て、FP歴16年。2023年1月に独立し、千葉県市川市で独立系FP事務所を開設。金融商品を販売しない中立な立場で、住宅購入・ライフプラン設計・保険見直しの相談を行っています。老後資金のご相談では、平均の数字ではなく、ねんきん定期便をもとにご自身の金額から考えることをお伝えしています。

保有資格:CFP®(CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/宅地建物取引士/トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定)/証券外務員一種
対応エリア:千葉県・東京都は対面相談可、全国オンライン対応
本記事の試算条件・出所をみる
【家計収支】総務省「家計調査」による、夫婦とも65歳以上の無職世帯の数字です。2025年平均は可処分所得221,544円、消費支出263,979円で、月42,435円の不足となります。「老後2,000万円問題」の根拠となった2017年の不足額は月54,520円でした。いずれも平均値であり、ご家庭の状況によって大きく異なります。

【年金額】2026年度(令和8年度)の年金額です。老齢基礎年金の満額は1人あたり月70,608円、夫婦2人のモデル年金は月237,279円です。モデル年金は、平均的な収入(平均標準報酬額45.5万円・賞与を含む月額換算)で40年間就業した夫の老齢厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)を合計した、厚生労働省が示す標準的なケースです。実際の受給額は、加入期間・収入・受給開始年齢によって一人ひとり異なります。必ずねんきん定期便または「ねんきんネット」でご確認ください。

【住宅ローン】3,500万円を金利年1.0%・35年・元利均等返済で借り入れた場合の試算です(月返済9.88万円)。金利は借入時期・金融機関・審査結果によって異なります。

【積立の試算】65歳までに1,500万円を用意する場合の毎月の積立額を計算したものです。運用利回り(年3%・年5%)は想定によるもので、将来の運用成果を保証するものではありません。元本割れの可能性があります。手数料・税金は考慮していません。

【免責】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品・保険商品の購入や契約を勧めるものではありません。制度は改定されることがあります。最新の内容は日本年金機構、厚生労働省、総務省統計局の公表資料をご確認ください。個別のご相談については、伊藤FPオフィスまでお問い合わせください。

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